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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・最終部 召喚魔法で異世界踏破
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未来を見る前に

「もう一回言ってくれる?」

「ベイがいまだにマッサージをしてあげている社員たちの誰一人にも手を出してないことなのよ」

「……」


 OK。聞き間違いではなさそうだ。確かに、俺は仕事という名目で会社のケアサービスの一環であくまで希望者にのみマッサージを提供している。ペース的には、一日に一人。一週間にこれが5回あるので、週に5人にケアサービスをしている。ちなみにだが、会社の務め時間であるところの定時。つまり最短での退社時間後に行うので、俺の仕事は少し遅めだ。でも、それぐらいしか俺の主な仕事はないので真面目にやっている。おかげで評判も高いのか、希望者が減らない。むしろお金を払わせてくれとか社員の中には言ってくる子も居たが、まぁ、それは遠慮しておいた。会社の福利厚生の一環だからな。俺の仕事でもあるし。給料は、会社から出てるはずだ。多分。あと補足だけど、うちの社員女性しか居ない。


「それの何が問題なんでしょうか?」


 俺は、こめかみを指で押しながらアリーに尋ねた。


「ベイ、求められないって辛いことなのよ」

「なるほど」

「でもね、貴方が私達に対して誠実であろうとしてくれてるからこの結果なのは分かるわけ」

「うん。当たり前じゃないか。俺は、皆を大切にしたいんだ」

「ありがとう。でもね、あなたに選ばれないと不幸を感じる子もいるってこと」


 そう言って、アリーは従業員名簿を開く。


「ここ。赤丸つけてあるから。これ見て」


 そう言われて、俺はアリーから従業員名簿を受け取った。


「何の赤丸?」

「今年の社員面談で、ベイに手を出されても逃げないし同意しますって言った社員の子の印」

「……嘘でしょ」

「で、こっちが予め書いてもらった誓約書」

「そんなアホな」

「正直、これはあってもなくてもどうでもいいんだけど、ま、一応ってやつね。負い目がないようにってことかしら」

「社員に?」

「ベイによ」

「……」


 えっ。何この展開。ちょっと絶句してる自分がいるんですけど。次なんて言ったら良いの。言葉が出ない。


「あ、勿論手を出していいってことは、結婚するってことだから、そこは安心して。要は、結婚してもいいですってこと」

「……いや、それはそれでどうなんだ。アリー達みたいに、長い付き合いをしてない子もいるぞ。勢いで言っちゃっただけってことはないのか?」

「ベイ、これは言うか迷ってたんだけど」

「うん」

「この星に、未来なんて無かったのよ」

「俺達が救うまでってこと?」

「そう。つまり、結婚せずに死んでしまっていた女性が多いわけ。勿論、してる子も居たでしょうけど、その子達はマッサージをまず受けないでしょうね。魔力が元の未来通りに運命をつなげようとするから、結婚していた相手とまた巡り会えるはず。多分、彼女たちが望むならでしょうけど」

「なるほど」

「じゃあ、それ以外の子はどうなると思う」

「どうって、また出会いを探すだけじゃないのか?」

「それも可能でしょうけど。ベイと知り合って他を選ぶ気になると思う?ってことよ」

「いや、分からないと思うけど」

「分かるのよ。普通、冗談でもこんな誓約書書かないわよ。そうでしょ」

「……た、確かに」

「貴方に選ばれるのを、待ってるのよ。皆」

「うぬぬぬぬ」


 なんだこれ。過去最大級に追い詰められてんだけど、俺。何だこれは。どういう状況だ。


「ベイ」

「……うん」

「貴方なら、皆を幸せにできる。私達にしてくれたように」

「……うん」

「だから」

「はい」

「幸せにしてあげて」

「……」

「未来を見る前に誰かが幸せになる選択をしておく。大事なことでしょ」

「そういうことなのか。問題って」

「そういうこと」

「あ、ぶっちゃけると妻を増やしてベイを満足させてあげたいってとこも大いにあるわ。そこは否定しない」

「……」

「……確かに、明らかに普通とは言えない状況でしょうけど、ベイはどんな未来が見たい。私はね、皆を救いたかった。そして、幸せな未来を過ごしてほしかった。その中には、私が今まで知り合っていなかった彼女たちは当初含まれてなかったかもしれない。その他大勢の一部だったかもしれない。でもね、私達は知り合って、貴方をともに支えたいと思い会える人たちだったのよ。そんな彼女たちを、不幸にするのはちょっとね」

「うん」

「あ、でも誰もを救うってわけじゃないから。それは、普通通り人間だもの。私達は、ベイを支え会えるってだけ。だから、お互いに幸せでありたいってこと」

「なんというか」

「うん」

「皆と結婚したのもそうだけど。誰か一人じゃなく全員を選ぶって凄い重いことなんだなぁって、改めて実感してる」

「そうでしょうね。でも、貴方にはそれが可能で、全員を幸せにできる。だから、ごめんなさいベイ。こう私が言うと、貴方は選ぶしか無いわよね」

「……ああ」

「悪い妻かしら」

「いや、大好きだ。君が大好きなんだアリー。俺も、皆を幸せにしたいし。誰かにそれを任せたくない。ああ、そうだな。俺にしか出来ないなら。俺にしか未来で誰かを幸せに出来ないなら」

「うん」

「俺は、戦うよ」

「王様って、興味ない職業だけど、ベイには相応しい気がするわ」

「アルティが言うには、俺は召喚王らしいからな」

「なら、妻が多くても不思議じゃないわね」

「かもな」


 その後、マジックアイテムの使用試験も進む中、また新しい家族が増えた。


「ベイ・アルフェルト」

「うん、どうしたローリィ?」

「子供とは、凄いものだな。以前は言葉すら話せなかったのに、もうあんなに大きくなって」

「ああ、そうだな」

「……私と君は、以前は、命をかけて戦った仲だ」

「そうだな」

「だが、その後にお互いに命を預けあって共に戦いもした」

「そうだな」

「そんな私達の間に命が育まれたとしても、あんな風に真っ直ぐにそだってくれるだろうか」


 俺は、そのローリィの言葉に右手を差し出す。


「俺達が、お互いを思い合って手を差し出せあえるのなら、大丈夫だ」

「君は、私を許せるのか?命を懸けて戦ったこともある私を」

「一緒にこの星の未来を作ったろ。この手に嘘はない」

「私は、この手をとってもいいのだろうか?」

「ローリィ。いや、クローリ。お前だって救われていいんだ。そして、もしそれが俺に出来るのなら」

「……」

「この手を取れ」

「ベイ・アルフェルト。ありがとう。そして」


 ローリィは、俺の手を力強く握って言う。


「私と、結婚して欲しい」

「ああ」


 俺は、全知全能じゃない。でも、魔法でやろうと思えば大半のことは出来るようになった。でも、これでも一応元人間だ。やりたくないこと。出来ないこともある。そんな中で、未来を見ようとしているんだ。なら、幸せに出来る人を幸せにするのが人として正しいのではないか。俺はそう思う。俺に許容できる、俺に出来ることのみだけど、それでいいよな。俺は、誰も答えを出してくれない自分の中の問題に、そう答えを出した。





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