表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第ニ章・一部 仲間を探して
61/632

思惑

「ああ~。昨日はつい、はしゃぎ過ぎちゃったっすねぇ」


 シスラは、大きく伸びをした。あの後、ミエルが魔法を使えるようになったという話を仲間の皆にしたら、そのまま雪崩れ込むように宴会ムードとなった。なんだかんだ言っても、ミエルは皆に好かれている。やはり、次の世代を指揮するとすれば、ミエルしかいないだろう。シスラはそう考えていた。


「あっ、昨日は、結局シゼルさんにあの話しそこなったっすねぇ。今からでも、話に行かないと……」


 部屋から出ようとしたシスラだったが。その瞬間、ドアをものすごい力で叩く音が響いた!!


「ひぃいいいい!!なんっすか!!いますっすよ!!」

「シスラ!!!早く、開けて!!!緊急事態よ!!!!」

「うん、シゼルさんっすか?分かったっす、今開けるっすよ!!」


 シスラが部屋の鍵を開けると、急いでシゼルは部屋に入り、外を見回すと鍵をかけ直した。


「どうしたっすか、シゼルさん?そんなに慌てて……」

「いい、シスラ。昨日、ミエル様が魔法を使えるようになった話が広がったでしょう。そのせいで、上の連中に動きがあったわ……」

「な!?ど、どういうことっすか!!!」

「よくわからないけど、こんな朝早くからミエル様が呼び出されたらしいのよ。怪しいと思わない?」

「むむむ、その通りっすね……」

「いい。あなたはすぐにでもサエラを呼んで、ミエル様を迎えに行くのよ!!私は、もしものために人を集めておくわ」

「分かったっす!!恩に着ます、シゼルさん!!」

「いいのよ。私も、ミエル様の魔法訓練教官を長く務めてきて、彼女が魔法を使えてとても嬉しいわ。そんな頑張ってきたミエル様にひどいことをするような奴は、何があっても許せません!!さぁ、早く行って!!」

「はいっす!!!」


 シスラは、急いでサエラの部屋へと走っていった。



「では、この先はミエル様だけでお進みください」

「は、はい!!」


 案内の兵士に通されて、ミエルは会議室に足を踏み入れる。この会議室は、階位・上位10位までの聖属性魔物の天使しか利用できず。今後の政策などを決める重要な場となっている。朝早く、ミエルは案内の兵士に呼び出され、この場に来ていた。


「し、失礼します!!」

「うむ……」


 そこには、10人の聖属性魔物がいた。白いひげを蓄えた老人・バシュルを筆頭に、体格のいい者もいれば、女性もいる。だが彼らに1つ共通していることを言えば、全員が年を取っている姿をしているということだ。魔物の寿命はとても長く、老いるのも人間よりはるかに遅い。それだけ長い期間、彼らは生きているということになる。老いることによって、魔物であろうと身体機能の低下が起こるが。長い年月を経て得た経験と力は、そう簡単に超えられるものではない。それが、未だに彼らをこの位置に居させる実力となっていた。その力をこの場で超えているという意味では、ミエルは特別な存在であると言えるだろう。だがそれは、彼女がめげずに魔法練習を行い続けたおかげでもある。


「ミエルです。何かご用でしょうか?」

「うむ、ミエルよ。どうやら、魔法が使えるようになったということだが、間違いないか?」

「は、はい!!」

「そうか。それで、原因は分かったのか?」

「いえ、それはまだ……。何かの、異物のせいだったようですが」

「ふむ、そうか。異物のせいか。……だが、今まで魔法が使えなかったのに、急に使えたというのは身体にどんな影響が出ているかわからない。良ければ、少し調べさせてもらいたいのだが……」

「はぁ……」

「なに、魔法を撃ってもらって、本当に正常に魔力が扱えているかを確かめたいだけだ。身体に、負担がかかっていてはいけないからな」

「なるほど……」


 そう言うと、バシュルは立ち上がった。


「場所は、オルヴィアの石の間で行おうと思うが」

「え?でもあそこは、普段は立入禁止のはずでは……」

「お前の魔力量は、大きいからな。思う存分、魔力を使える場所はあそこぐらいしか無いだろう。それに、オルヴィアの石のお陰で、魔法による被害も出んだろうしな」

「それは、そうですが……」

「では、そうしよう」

(もっとも、お前にはその場で死んでもらうがな……)

 

 バシュルが、会議室から続く後ろの扉を開けようとしたその時……。


「ちょっと待ったああああああああああああああああああっす!!!!」


 ドバァン!! と扉を開けて、シスラとサエラが入ってきた。


「ふええ!!シスラ、サエラ!!」

「おっとミエル様、話は後っす。悪いっすけど、ミエル様をオルヴィアの石に近づけるわけには行かないっすね!!」

「なんのつもりだ……」

「なんのつもりですって。白々しい……。これを知らないとは、言わせないわよ!!」


 サエラは、ミエルから取り出した異物をかざした。


「……何だそれは」

「とぼけても無駄っすよ!!これは、オルヴィアの石の欠片。そうっすよね、バシュルさん!!」

「本来なら、近づくことも、壊すことさえもできない石の欠片が、どうしてここにあるのか。その調べは、もうついています。記録では、オルヴィアの石ができた時、その瞬間にのみ複数の欠片が飛び散ったとありました。しかも、それは階位・上位の者達が保管していると書いてあります!!つまり、ミエル様にこの石を埋め込めるのは、他ならぬあなた達のみということです!!!!」


 サエラは、昨日の宴会がおわってからも1人、この石の詳細を調べていた。それは、ミエルに何かの影響がないかを調べるためでもあり、自分とシスラの考えた通り、これがオルヴィアの石であると証明したかったからでもある。もし本当にそうなら、これを持っていた者は最初からミエルを狙って、子供の時に欠片を埋め込んでいたことになる。ミエルの今後を考えると、どうしても調べずにはいられなかった。


「……儂らではない。飛んだ言いがかりだ……」

「まぁ、別にいいっすよ。保管してあった欠片の数まで、きちんと書いてあったっすからね。もし、あなた達が持っている欠片が減っていれば、すぐにでも分かるっすから」

「だからと言って。仮に減っていたとしても、儂らがミエルに対してそれを使ったという証拠にはならん」

「でも保管しているのは、あなた達っすよねぇ。これは、責任問題になるっすよ。全員、階位が下がるのは、覚悟してもらわないと……」

「むぅ!?」

「さぁ、ミエル様行きましょう……」


 二人がミエルを連れて、会議室から出ようとする。が……。


「待て!!お前たち二人は、無断でこの会議室に入ったことになる!!これは、我々の政策に違反する行為だ!!」

「だからどうしたっすか!!」

「つまり、お前たち二人は、我々に対し明確な反逆行為を行ったといえる。ならば、その仲間であるミエル共々、処分せねばなるまい!!」

「とんだ屁理屈っすね。まぁ、その言葉を信じる奴がどれだけいるか……」

「あなた達の圧政に、我々はひどく苦しんできました。そんなあなた達と、ミエル様の言葉。どっちが多くの味方を得られるでしょうか。もう、あなた達の時代はおわったのですよ!!」


 その言葉に、会議室にいるものは皆、苦い顔をする。


「……そうか。ならば、喋らせなければいいだけのこと!!」

「へぇ~、この期に及んで悪あがきっすか。いったい、何が出来るって言うんすかねぇ?」

「お前は知らないようだな……。階位・1位にのみ与えられる特権を!!」

「特権?」

「そう、オルヴィア様が過去に持たれていた迷宮管理の力。つまり……。エリアボスを操る力だ!!」


 バシュルが腕を振り上げると、天井を突き破って巨大な龍が姿を現した。皮膚は白く、背中には4枚の羽が生えており。その口は、ミエル達をまるごと飲み込めそうなほど圧倒的に巨大。


「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 エリアボスの咆哮が、会議室に轟く。


「嘘~!!こんなの、いたんすか!!」

「長い間、オルヴィア様がいなくなって出てこないと思っていたけど。まさか、階位・1位に受け継がれる力だったなんて!!」

「あ、あわわわわわわわわ!!!!」

「な、なんでもいいっすけど!!とりあえず、逃げるっす!!!!」

「賛成!!!!」


 二人は、ミエルを抱えて一目散に逃げ出した。その後を白い龍が、天井を顔で突き崩しながら、追っていく。


「バシュル様、ご無事ですか!!」


 この騒ぎで、会議室に警備の兵士が駆けつけた。


「おい!!ミエルとその仲間が、我々に武器を向け反逆を宣言した!!すぐに討伐隊を送り込み、始末しろ!!」

「!?なにかの、間違いでは……」

「我らの言うことが、信じられないのか!!!!」

「……分かりました。討伐隊を向かわせます!!」

「……それでいい」


 兵士が下がると、バシュル達は口を歪ませ、笑みをこぼした。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ