子育てする召喚王
「ママ~!!」
「どうしたのベリア?」
アリーにベリアが駆け寄る。俺は、濃い緑髪の少年、イラを抱っこしながらその後について行った。両方共俺の子供だ。ベリアは、アリーとの。イラは、ヒイラとの子供だ。ついでに、俺の足にしがみついている水色っぽい髪の子は、ミズキと俺の子でキイだ。キイは、一緒に生まれた兄弟が多いので見分けがつかなくなって困る時がある。だが、魔力の形質がそれぞれ違うのでなんとか見分けられている。父親なので、なんとかしてそれ抜きでも見分けたいところだが、いかんせん皆似ていて難しい。許して欲しい。
「ヒイラさんが、お父さんとイスごっこしてた!!」
「……そう」
「僕も、やりたい。パパの椅子になる」
「……イラ、貴方にはまだ力がないから無理よ。もうちょっと大人になってからにしましょうね」
「う~ん、分かりましたアリーさん。我慢します」
「そう、いい子ね。……ヒイラの魂を受け継いだのかしら」
「……」
あの日から、ヒイラに結構押し気味に迫られることが多くなった気がする。遠慮がなくなったと言うか、積極的になった。でも子供が歩き回っている昼日中でというのは無理があるので、何故か取り敢えずヒイラに座ることになった。本人は、筋トレの一環であると子供たちに言っている。
「なんというか、我が親友ながら我慢できてないわね。これは、二人目もすぐね」
「俺もそう思う」
「ま、私もだけど」
そう言って、俺の肩を突っつくアリー。やばいです。今すぐベッドに連れていきたいです、アリーさん。
「パパ~、ご本読んで」
「あの本、読んでない」
「あれですか?」
そう言って、キイが水の糸を飛ばして一冊の本を手繰り寄せる。その本を見て、イラは頷いた。
「キイ、また魔法操作精度が上がったな」
「鍛錬していますから」
「偉いぞ~」
「ありがとうございます、父上」
いや、鍛錬していますとか、そういう領域じゃないだろ。ミズキの子供は、全員こんな感じだ。というか、生まれながらに水魔法と転移魔法が使える。何も教えてないのにだ。それも、最初から扱いが上手かった。これがミズキの遺伝子なのだろうか? 凄い。
「あ、キイが照れてる」
「顔、赤い」
「父上に褒められると照れますね」
凄いのだが、まだまだ外見上は子供だ。しかも、俺の子だ。とてつもなく可愛い。目に入れても痛くないとか言うけど、そんな気がするくらい可愛い。いや、絶対入れたら痛いけどな。まぁ、例えだよな、例え。
「パパ見つけた!!」
「登れ!!」
白と黒の髪をした女の子と、赤いボサボサの髪の子が俺の足を登り始める。ルイとカイだ。ミルクとカヤが産んでくれた俺の子供だな。
「頭頂!!」
「頭の上譲って」
「やだ!!」
「ぶ~」
二人共、子供なのに身体能力が凄い。特にルイは、腕力が凄い。というか、なんでうちの子達は俺を見ると登り始めるんだ。何か本能的な理由があるのだろうか。
「あ~~、ルイ。ご主人様に迷惑かけちゃ駄目ですって」
「ママ、違う。パパは、迷惑に思ってない」
「大丈夫だ、ミルク。むしろ微笑ましいくらいだ」
「とか言って、そのままにしてたら以前は、全身に子供たちが群がってたじゃないですか。ちょっとした鎧状態でしたよ。またほっとくと他の子も」
「肩が一番落ち着く」
「ほら、増えた!!」
いつの間にやら、肩にカザネとの子供のネイが座っていた。我が子ながら、神出鬼没なんだよな、この子。
「パパが居るのか!!」
「肩は空いてる?」
「空いてないぞ」
「じゃあ、腕だ!!」
「片足が開いてる!!」
「こらちょっと、皆止まりなさい!!」
「ふむ。我が子にもモテるわね、ベイ」
「あはは。好かれるのは嬉しいよ」
その言葉を最後に、俺の顔前にベリアが抱きついてきた。風魔法を使ってジャンプしたな。良いコントロールだ。だがな、そこだと父さん息苦しいぞ。風魔法を使って呼吸するしかない。せめて口を塞がないで欲しい。
「こら、そこはベイが息苦しいでしょ」
「じゃあ、背中行く!!」
アリーに抱きかかえられて引き離されたベリアは、また風魔法で俺の背中へと飛んだ。そして、見事なコントロールで空中を蹴って反転し、俺の背中へと着地する。やばい。俺とアリーの息子、マジ魔法の天才。
「……威力の制御がいまいちね」
アリーお母さんの採点は厳しいようだ。
「パパ、大丈夫?強化魔法かける?」
「ああ、大丈夫だよイラ。お父さん、鍛えてるから大丈夫だ」
「良かった。パパ凄い」
「そうです。パパの筋力にかかれば私達なんて、一般人の感じる鳥の羽を持ち上げる感覚のようなもの。体重すら無いに等しい。それが私達のパパなのです。見て、この金属を超越したような独特な筋肉。他の筋肉とは訳が違って」
「……」
ロザリオとの子のイリオだけど、筋肉のことになると早口になるよな。ママの高等教育の賜物だろうか。娘にも容赦なく早口で喋るからな。ロザリオ。
「……パパに登る権利を売るとしたらいくらに?いや、でもこれは売れない。宝物だ。価値がつけられないというやつでは?」
登らずにいるのは、ロデとの子のロイか。ロイは、大人しいな。小声でなにか言っているが、考えごとかな?
「はいはい。もうすぐお昼ですから、パパから降りて行きましょうね~」
「嫌だ!!」
「パパ発進!!」
「ゴー!!」
「はいはい」
俺は、子供たちを抱えて移動する。一人一人落とさないように、俺はゆっくりと移動することにした。
「やれやれ、甘え坊ばかりで困りますね。私が、ご主人様に抱かれたいというのに」
「そうね。子供たちが羨ましいわ」
「あの子達も、いつかはここを巣立っていくんですかね」
「どうかしら。今は有り得そうにないけど」
「ご主人様の背中を見て育つんです。きっと、大きなことを成し遂げると思いますよ。皆」
「……そうかもね」
ベイの後ろを、アリーとミルクはついて行く。子供たちに囲まれているベイを、2人は微笑ましく見ていた。
「パパ、僕ね、大きくなったらママのお仕事手伝う」
「お、そうなのか?」
「うん。僕ね、頑張るよ」
イラは、拳を握って答える。
「パパの椅子になる仕事を!!」
「……ヒイラに、今度から椅子プレイ禁止って言わないと駄目ね」
「そうですね」




