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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第一章・一部 召喚魔法使い ベイ・アルフェルト
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召喚魔法・中級

 さて、アリーと魔法の練習を始めてから三ヶ月が経過した。研究する日をはさみながらだが、確実に実力がついてきている。高速移動は、習った次の練習日には出来るように練習をした。しかし、ここからが大変だった。


 高速移動を続けながら、お互いに水魔法で相手を狙う実践的な練習。相手の放つ魔力量を感じ取り、それに合わせて同等の魔力をぶつけ相殺する練習。同時に3種類の魔法を扱う練習。などなど、だんだん日を重ねるごとに細かく実戦的になっていく練習は、まるで修行のようだった。もちろん、お互いに放つ魔法は水鉄砲とかふわっと風を感じる程度の威力に絞ってはいるものの。間違って威力の高いものを出してしまわないか内心いつもひやひやもので、精神がすり減る思いだった。しかもアリーは……。


「よし、もうちょい速くしましょう」


 とか。


「魔力量は、一瞬で感じ取れるくらいにならないといけないから。魔力を込めた突きを、お互いが手で受け止める感じでやりましょう。戦いの練習も出来て、一石二鳥ね」


 とか、どんどんどんどん少しずつハードルを上げてくる。ちなみに相殺の練習は、水魔法の魔力で失敗すると腕が濡れる仕組みで判定している。最初のうちは失敗もしたが、それが少なくなると速度をあげられ。実戦形式にされ。……うん、俺だいぶ鍛えられてると思う。フィーも俺たちの訓練に混ざって魔法の練習をしているし、少なからず強くなっているんじゃないだろうか? というか、アリーの格闘術のレベルが上がっていってる気がする。最初の頃より突きの鋭さがましているし、防御の流れもスムーズだ。アリーさん、恐ろしいぞい。


 で、その間も勿論召喚魔法をより良く使えるものにするべく研究をしていた。カエラに買ってもらった召喚魔法の本と、家にある他の魔法の専門書とにらめっこしたりして研究は順調に進んでいった。というのも、具体的にこう研究を進めようというアイデアがあったからだ。


 簡単にまとめて言うと魔法の強化方法は3つだ。1.威力・効果範囲をあげる。2.違う魔力を混ぜ、別の効果をだす。3.全く別なものを創りだす。この内、俺がやろうとしたことはそのうちの2。これは、召喚魔法がどのように発動しているかということを考えた結果思い付いたものだ。


 召喚魔法は、召喚する魔物と契約して呼び出す。というのが簡単な説明だ。細かく言うと、契約してお互いを魔力でつながっている状態にする。召喚魔法を唱える。つながった魔力を伝って相手に召喚魔法がかかり、魔物の位置を記憶。魔物を魔力で圧縮、転送する。魔力を伝って召喚者のもとに転送される。この時、転送された魔物が死ぬようなダメージを受けた場合、即座に魔力で圧縮必要最低限の部分を結合、再転送で召喚時に記憶された元の位置に戻される。ということになる。


 この流れには問題がある。召喚前に魔物が死んでいた場合、使えなくなってしまうということだ。更に、魔物が致命的ダメージを受けた場合、安全な位置に戻るようにしなければならない。戻った瞬間に別の魔物に殺されるような事があってはいけないからだ。特に家族に隠れて魔物と契約している俺は、安全地帯の確保などが難しい。この先、フィーのような小さな魔物だけと契約するとは限らないし、変なとこに隠れ住ませていたら何も知らない住民に討伐されかねない。よって、この問題を解決する必要がある。そう俺は思った。その日、362回の試作のすえについにそれは完成した。


「で、ベイ。今日は、練習の前に見せたいものがあるって、なんなの?」


 いつものようにアリーと練習場に来ている。今回は、俺の研究成果発表をしよう。そう思って、アリーに話を切り出した。


「召喚魔法の研究が進んでね。見せようと思って」

「むっ!!それは、ある程度形になる成果が出たってことよね?是非見せて!!早く!!!!」

「う、うん、今見せるから。まぁ、そこに座ってよ」


 ものすごい勢いで迫ってきたアリーに、土魔法で作った椅子をすすめる。そして、土魔法で見やすい位置にホワイトボードに似た物を作った。


「これが、今回の研究成果だよアリー」


 俺は、六角形の宝石のような緑の石を手のひらから取り出してアリーに見せた。


「…それ、もしかして魔石?しかも、ベイの手の中から出てきた?」

「そう、魔石。正確には、召喚魔法の魔力を、土魔法で鉱物化して作った魔石だね」

「むむむ!!面白そうね……。召喚魔法の魔石。それは、何に使う物なのかしら?他の魔石だと、魔力を貯めておいて威力を上げたり。魔法を付加したりに使うけど。召喚魔法に威力とか関係あるの?それとも何か別の使い方かしら?」

「うん、これなんだけど。分かりにくいと思うけど、この魔石の中にフィーが入っているんだ」

「????え、どういうこと?フィーが、それに入ってる?魔物を、収納出来る魔石ってこと?」

「そう、簡単に言うと契約した魔物を収納出来る魔石なんだ。しかも、自分の魔力の一部として取り込むことが出来るから、持ち運ぶ必要もない」

「……う~ん、なんでそんなことが出来るのかしら?」

「召喚魔法って、魔物を召喚する時に瞬時に移動させるために魔力で魔物を圧縮するんだけど。その状態を、この魔石の中で維持してるんだ。これならどんな大きい魔物でも入るし、常に自分の手元で管理出来るようになる。というわけなんだ」

「なるほど。確かにそれなら管理する場所取りで慌てることもなさそうね」

「それとこれには、もう一つ機能があってね。契約のたびに召喚陣を描くのも面倒だから、この魔石自体に召喚契約が出来るように陣を書いてあるんだ。内側に魔力で書いてあるから、表面上は見えないけどね」


 あと本来は、無色透明でフィーを収納した時に色が変わったこと。内部にいるフィーは、やたら元気で快適らしいことを話した。


「快適、……なのね」

「魔力で満たされてる空間になってるから、居心地がいいみたいだね」

「なるほど、魔物だからってことかしらね?」

「うん。それとね、副産物的な効果があるんだけど……」

「うん?」

「……フィーの魔力を、俺の魔力として使えるみたいなんだよね」

「……えっ?」

「契約した魔物を入れた魔石を自分の中に取り込むと。その魔物の魔力を、自分の魔力として使えるみたいなんだ」

「……ベイ、やばいわよそれ。魔力量を上げる方法なんて、魔術師としては喉から手が出るほど欲しい魔法だわ」

「そうだよね……」

「その研究成果だけで、王国魔術師として雇われるレベルね。むしろ、国の外に出させてもらえなくなるでしょうけど。ベイ、これはもう秘術のレベルよ!!他の人には、一切漏らさないほうがいいわ」

「分かった。で、もう1つ副産物があるんだけど」

「……まだあるのね」

「うん。フィーの魔力を俺が使えるのと同様に、フィーも俺の魔力で風魔法を使えるんだ。つまり、この状態だと契約した魔物の数だけ俺は仲間を召喚していなくても魔法の支援と攻撃を自分の操作がなくても出来るようになる」

「……なんていうか、強いわね。というか、フィーに外は見えてるの?」

「魔力で俺の周りを把握してるみたいなんだ。だから、全方位見えてるんじゃないかなぁ?」

「……ベイ、これは誰にも見せないほうがいいわ。両親にも言っちゃダメよ」

「分かった」

「こんな重要なこと、むしろ私にも言わないほうが良かったわね。……でも、私に教えてくれる約束をしたから、わざわざ教えてくれたんでしょ?私が、この魔法に関することを誰にも言わないって信じて」

「アリーは、そういう所ちゃんとしてるからね。アリーになら、普通に話してもいいと思ったんだ。約束したしね!!」

「……ありがとう、ベイ」


 そういうアリーの顔は、赤く嬉しそうにしていた。


「うん。でも、やっぱり少し気になるわね。その魔石、よく見せて!!」


 といいながら、アリーは椅子から立ち上がる。すると、俺の腕に指を絡めて抱きついてきた。


「ちょっ!!……い、いや、でもさっき、誰にも見せないほうがいいって……」

「私はいいの!!ほら、さっさと見せなさい!!」


 ぐいぐいとアリーに押し込まれて俺はバランスを崩した。 フィーが、風魔法で風を起こして地面との衝突を防いでくれる。


「あの、アリーさん……」


 アリーは、俺のマウントポジションにいた。可愛い女の子に押し倒されるなんて、まさに夢の様なシチュエーションだ。だが、最近のアリーの格闘術レベルは上がっている。なので、微妙に恐怖を覚えてしまう俺だった。


「……ベイのそういう優しい所、好きよ、私」

「……」


 アリーの顔は、真っ赤だった。たぶん、俺の顔も赤くなっていただろう。恥ずかしそうな顔をしながら潤んだ瞳でアリーは俺を見つめてくる。俺の胸の上に置いた手でぎゅっと俺の服を握ると、恥ずかしそうに視線をそらした。


「な、なんてね!!ほ、ほら、早く魔石を見せて!!」

「あ、う、うん……」


 その日は、お互いに照れながら一日を過ごした。アリーを送る帰り道、いつもよりゆっくり歩いて帰り、2人して幸せを感じていた。



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