4つの鎧
一瞬だけ大きく膨らんでいた光が小さくなっていく。ああ、そっちになるのね。その光は、フィーほどにも小さくなるとその輝きを消していった。光の中には、透き通った輝くような黄金の髪をした少女がいた。ただ、その胸は豊満であった。ミルクやレーチェ程はないが、なかなかに大きな胸だ。鳥の胸肉というか、元の状態でも突き出ていて強そうな胸筋だったからな。それがこうなったということか。髪はロングのストレートだな。だが、少しクセ毛っぽくハネている部分もある。あの頭の上のアホ毛っぽいのは、トサカっぽいやつの名残だろうか。
「……やった!!小さくなれてますね!!これなら、今までみたいに目立つことはなさそうです!!」
いやいやいや、すっげ~美少女だぞ。何、その髪色。今まで見たことがない。絶対に特別な何かを持っている髪だって見ただけで分かる。魅了される。しかも、その髪に合うその顔がやばい。しかも少女だぞ。こんな子が親戚に居たらお年玉多くあげてしまう自信がある。ご近所にもいっぱい貰えそう。それほど謎の価値をクオンから感じる。いや、実際にはそれぐらいの価値がある子なんだけど。むしろお年玉とかいらないぐらい稼げるんだろうけど。
「……綺麗」
「ああ、そうだな」
うっかりフィーが呟くレベルでクオンの髪は綺麗だ。あの金色が風にわずかに靡いているだけでも光っていて神々しい。お外に連れ歩く時は、帽子必須かもしれない。そして髪に目を奪われていて忘れていたが服装は白いドレスチックな服を着ていた。羽織っているウインドブレーカー的なやつが薄い白い布で作られていて可愛い。袖口がフリルみたいにひらひらしてるのも良いな。
「ちょっとその髪貰える?」
「あ、はい、アリーさん」
途中から来てたのか、アリーがクオンのちぎった髪を貰っていた。それを、そっとハンカチに包んでアリーは家に戻っていく。寿命延長効果はパワーアップしてるんだろうか? アリーの評価待ちだな。
「さて、四人全員が進化し終えたわけだが」
「試しに行きましょう、殿」
「マスター」
「こん」
「ああ、行こうか」
俺達は、その場から転移する。そして、土属性神魔級迷宮に転移した。俺が転移すると、辺りから魔物の気配が消えていく。逃げてくれるから楽でいいな。
「さて、鎧を出してみてくれ」
「おう!!」
「……仕方ないですね」
「うむ」
「はい!!」
四人それぞれが魔力を纏っていく。その中で、ナギだけ鎧の出現させ方が違った。ナギが左手を持ち上げると、その手首にブレスレットが出現する。そのブレスレットについている四角い箱を、ナギが掴んで回した。すると、箱が開いて中央に緑の宝玉が現れた。それをナギは、手先側に向けて指を添えてスライドさせる。すると、ガキンと音がなりその宝玉から大量の魔力が溢れ出し始めた。
「アーマーオン!!」
風の魔力が、ナギを包んでいく。そして、その魔力の中から大きな2メートルくらいの龍人の鎧が姿を現した。
「……顔が、龍だ」
身体は人間っぽいのだが、鎧の顔がモロに龍だった。そして、ナギに続いて他の皆も鎧を纏い終える。それぞれを見ると、シルドは亀顔の巨大な鎧を着ていた。大きさ的には3メートルくらいか。でかいし、とてもズングリムックリしている。体系的には太腕マッチョな印象を受けるが、顔は亀だ。ライカは、馬顔の鎧だった。顔が馬以外は一見普通そうに見えるが、何か装甲が多い気がする。俺はこういうのに詳しいんだ。あの装甲、何か別のものになるぞ。多分、今は二足歩行の馬人って感じだけどあれが後列の足になってケンタウロス的なやつになるやつだな。当たってる気がする。
「それで、ここまで来ると」
予想通りクオンの鎧も鳥顔だった。羽が生えている鳥人の鎧だな。黄金だから神々しい。仏壇にあっても違和感なさそう。
「全員動物顔じゃないか」
「格好いいだろ?」
「ああ、それは間違いない」
「だよな!!」
ナギは、俺の発言に喜んでいる。しかし、これは今までになかったパターンだな。いや、ジャルクは単体だとこんな感じだったしそうでもないのかな。でも身体が人の形なのに顔が別種というのはなかったな。ふむ。まぁ、格好いいからいいか。
「で、何が出来るんだ?」
「風に溶け込める!!」
「硬い板を出せる」
「早く走れる」
「再生させたり、腐敗させたり出来ます」
「……」
ふむ、ざっくりだ。今の説明でヤバさがにじみ出てるのはナギとクオンだな。明らかにヤバイ。ナギは、会った時みたいなやつってことか。それでいてクオン。こっちは確実にヤバイ。強者の匂いがプンプンする。その能力、ここで試していいやつか不安になるな。
「取り敢えず、順番にやってみて」
「おう!!私からだ!!」
そう言うと、ナギの鎧が消えた。だが、魔力を観察するように見るとどうやらまだそこにいるらしい。これが溶け込んでいる常態か。ナギのいる周辺を、カザネが蹴ってみたり触ってみたりするがナギには触れられない。でも、魔力を纏わせると蹴れるんだよな。そうそう、カザネが今しようとしているみたいにって、あれ、蹴れてない?
「風に魔法攻撃が効くわけ無いだろ」
「えっ、やばくね?」
「無敵、と言って良いのでしょうか?」
「どうだろう。レーチェなら消せるかもな」
「では、ある程度無敵といったところでしょうか」
「風って凄いだろ?」
「ああ、凄いな」
おそらく、ナギ自体が風である以上ナギ自体からは攻撃ができるはずだ。姿も魔力を追わなければ見えない。こちらからの攻撃も通らないのであればかなりお手上げな相手だ。強いな。
「じゃあ、次はシルド」
「うん」
そうシルドが言うと、空中に黒い六角形の板が出現した。それが一枚。それだけだった。
「……もっと出せるよな?」
「出せるよ」
「何枚出せる?」
「いっぱい。でも、めんどいから一枚」
「……分かった」
俺は、アルティを出現させて構えた。アルティに魔力を乗せて、シルドの板目掛けて斬撃を放つ。
「シッ!!!!」
魔力が空気を切り裂いてシルドの板に激突したが、シルドの板には傷一つ入っていなかった。
「……硬いな」
「ありがとう」
そう俺が言うと、お礼を言ってシルドは鎧を解除した。そして、六角形の板を地面に敷いて、その上に寝転んで寝始めた。自由だな、シルド。
「次は、ライカだな」
「うん」
ライカが答えると、鎧の装甲が展開して俺の予想通り後列の足に変化した。ケンタウロスモードだな。さて、どれぐらい早いんだろうか?




