表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・最終部 召喚魔法で異世界踏破
593/632

穏やかな寿命を求める者

「……」


 取り敢えず、アルティを鞘に戻して俺は鳳凰に語りかけた。


「あの、別に命を取りに来たわけではないので」

「ほ、本当ですか?」

「はい。勘違いさせてすみません。お顔をお上げ下さい」

「……ありがとうございます」


 そう言うと、鳳凰は顔を上げた。ただ、若干うつむき気味だ。遠慮がちな上げ方だな。


「ほ、本日はどういったご用件でしょうか?この近辺に、人が来るのは実に数十年ぶりのこと。はっ!!もしや人ではあられませんか!?でしたらすみません!!無知な私をお許しください!!」

「いや、人であってますから。土下座しなくても結構ですよ。あのですね」

「私の羽をお求めですか!!どうぞ!!全身差し上げますから!!どうか、命だけは!!!!」

「いや、そう言うわけではなく」

「もしかして肉ですか!!確かに、私はすぐに再生いたしますが、それでも痛いものは痛いんです!!どうかご勘弁を!!羽で!!羽で勘弁してください!!これでも煎じて飲めば幾ばくかの寿命を延ばせるはずですので!!」

「えっ、マジで?」

「はい!!私を研究していた研究員がそう言っていました。羽一枚で好調。二枚飲めば一日寿命が伸びると」

「羽を、飲む?」

「はい。食べるでもよろしいですが、確か、魔力で肉体の細胞が整えられて限界が伸びるとかなんとか。ともかく、死の間際の人間でも寿命を伸ばすことが出来るのは確かです」

「お~~、それは凄い」

「はい。既に意識を失った死を待つ人間ですら私の羽で翌日には意識を取り戻し、歩け、話せるようになります。続けて飲まれれば延命はさらに可能なはずです。ですのでどうか、どうか羽でご勘弁を!!!!」

「いや、ですから実は羽を取りに来たわけではなくてですね」

「では、何をしにこのようなところへ?」


 俺は、鳳凰に仲間を探している理由を説明した。産休を皆に取ってもらうためだとか、未来の危機に備えるためだとか取り敢えず説明しておいた。


「なるほど。魔物を仲間に。そして、進化ですか」

「ええ。あなたさえよろしければ仲間になっていただきたいのですが」

「……実は、私には夢があります」

「はい?」

「図々しいこととは思いますが、その夢が叶えられるのならば私は喜んで貴方様の仲間となりましょう。私の夢を、聞いてはいただけませんか?」

「え、ええ。叶えられるかはともかくとして、聞くだけなら」

「私、寿命が欲しいんです」

「は?」


 そう言って、鳳凰は顔を赤らめた。いや、今の発言に顔を赤らめる要素なかっただろ。


「私、こう見えて年をいくつも重ねておりまして。最初は小鳥のような姿だったのですが、長い年月でこのような大きさに。お恥ずかしいのですが」

「な、なるほど。失礼ですが、どの程度とか聞いてもよろしいですか?」

「そうですね。まだこの近辺が多くの属性ごとに別れた巨大都市群で構成された国家のあった時代。その時から私は居ました。その中で、私は実験的な意味も含めて生み出されたのです。回復魔法の魔力で、魔物は誕生させることが出来るのかと」

「か、回復魔法の魔力?」

「ええ。それは治癒の力。その濃縮した魔力を一点に長期間放置することで魔物が生まれるのかをかつての人々は試されたのです。そして、一体だけ魔物が生まれました。それが私です」

「あなたは、人が意図的に作った魔物だと言うんですか?」

「ええ、そうです。それも遥か遠い昔のこと。今では、かつての文明は創世級の被害で滅び、このような平和な時代になりましたが。……未だに私は死を迎えられずにいます。むしろ毎日絶好調でして。無理矢理に目を閉じて睡眠時間を増やし体の動きを抑制してまで肉体不調を起こそうとしているのですが、それすら叶わず」

「無限に寝れるんですか。凄い」

「いえ、むしろ肉体が好調なのですから寝づらいですよ。だからそれが不調につながるかと思ったのですが。無駄な試みのようですね。ですので、まだまだ死ぬ気がしないのです。というよりも、私は死ねるのでしょうか?」

「肉体が消滅すれば、流石に死ぬのでは?」

「……以前、消されかけたことがあったのですが。それでも、私の肉体は塵に近しいレベルになっても再生を行いました。あれ以上になってまで死を欲するのは、ちょっとやめたいですね。でも、寿命は欲しいのです。いつか私の人生にも、幕切れがあると思いたいのです」

「そうですか」

「ですので、寿命をいただけるのでしたら、皆様のお仲間に加えていただきたく」

「出来ますよ」


 そう言って、アルティが鳳凰に語りかけた。


「本当ですか、剣様!!」

「はい。ただし、条件付きです。我らのマスターと完全なる魔力契約を結んでいただければ、死すらマスターと共に迎えることになります。マスターは現時点で魔力体です。とても長生きされるでしょう。どこまでかは分かりません。それでも、寿命はあるはずです。あなたがマスターと完全に契約するのであれば、その寿命をあなたは得ることが出来るでしょう」

「まぁ、本当ですか!!良いですね!!すぐに死なないというのもかなりいいです!!一人で死なないというのも、私的にはかなり好感触ですね!!」

「どうでしょう。うちに来ていただくというのは?」

「よ、よろしいですか?このような私で」

「ええ。大丈夫ですよ」

「私、このようななりですが、攻撃能力は皆無ですよ。癒やしの力のみですから」

「それは訓練していただきますので、大丈夫です。うちにくれば、進化も出来ますから」

「なるほど!!そうですね。今まで反抗する力がなかった。いえ、行おうと思えば肉体細胞を活性化させて回復限界まで持っていき細胞死滅させることも出来たのですが、エグくて使えませんでした。それ以外の力を得られるのは、嬉しいですね」

「……結構やばいお力ですね」

「一度回復魔法をかけ続けさせられたことがあったんです。そしたら、急に相手の魔物の身体がドロっと溶け出して。……この話はやめておきましょう。昔の話です。今では力も上がっているので、もしかしたら一瞬でその症状を起こすことが可能かも知れません。ですが、極力控えたいです」

「分かりました。では、契約していただいてよろしいですか?」

「えっと、どうすれば良いのですか?」

「はい。この石に魔力を流して下さい。それだけで大丈夫です」

「完全なる契約は、その後にしましょう。まずは、通常契約です」

「分かりました。よろしくお願いします」


 そう言うと、鳳凰はくちばしで魔石に触れて魔力を流し、鳳凰と俺は契約した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ