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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・最終部 召喚魔法で異世界踏破
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最後の迷宮

「「……」」


 あれから何個の迷宮を回っただろう。数えるのも面倒だし、アルティに聞けば正確に答えてくれるから今は殆ど無心で作業的に近場の迷宮へと転移しては、攻略して転移するを繰り返している。雷属性の迷宮が多い方面へと最初は進路を決めて転移していたのだが、どこに行っても仲間になってくれそうな魔物が居なかったので、結局は周辺全部の迷宮を回っていくことになってしまった。まぁ、もとより今の俺の仲間になってくれる魔物が居るという少ない可能性を探して回ってるんだ。多くの迷宮を回ることになるとは思っていたが……。


「最後の迷宮ってマジか」

「本当です。ここが、この星で攻略していない最後の迷宮です」

「雷属性神魔級迷宮」


 俺の目の前には、明らかにヤバそうな音を放つ迷宮が存在していた。まだ、迷宮の中にすら入っていない。しかし、既に迷宮の外側にありえない量の落雷の音が聞こえてくる。これ、常人が入ったら即死するのではないか?


「どうします?」

「……行こう」


 正直、強くなったとはいえ一応人間なので、雷が落ちてくるという状況に些かの恐怖がある。でも、よく考えればシデンに訓練で雷魔法とか撃たれてたし、それと同じだと思えば造作も無いはずだが。如何せん、既に落雷の音がうるさくて、若干の面倒くささを覚えてしまう。これで、既に雷属性の新しい仲間候補でもいれば攻略を後回しにするのだが、今は居ない。行くしか無いんだろうな。新たな仲間がいるという可能性を求めて。俺は、そう考えながら若干重くなった足取りで迷宮内へと一歩を踏み出した。


「おっと」


 ディレイウインド。その魔法の発動と同時に、土魔法を使って周辺に避雷針を作る。それによって、入った瞬間に俺に向かって降り注いできていた落雷の群れを回避した。


「……何だここは。こんなところに、生物がいるのか?」

「居ると思いますよ。迷宮ですから」


 目の前の光景が信じられない。草花すら無い一面の大地に、数えるのも面倒なほどの雷が秒ごとに何本も降り注いでいる。まるでこの世に地獄が現れたかのような光景だ。そんな中でも、生きている魔物がいるという。魔物って凄いよなぁと、関心せざるおえない。


「で、肝心の仲間候補はいるのかな」


 ディレイウインドで加速して進みながら、迷宮内を散策する。風魔法で音もいじって、落雷の音で耳が痛くならないようにもした。その分、周囲の音を聞いての状況把握が出来ないが、この音の中では聞かないようにするほうが無難だろう。むしろ、聞こえても落雷の音で耳に届かない気がする。音には頼れない迷宮だな。


「……う~ん、じっくり魔物を観察したい気もするが。自動追尾で攻撃魔法でも撃たれてるかのように、雷が振ってくる。逃げるのに忙しい迷宮だ」

「魔法で雷を逃がすドームを、作られてはいかがですか?」

「いや、なんというか、そこまでして観察しようとは思わないんだ。仲間探しが優先だからな。それを考えると、逃げるついでに散策も進むから、このペースで良いかと思ってしまうんだ。あの雷で出来たモヒカンを付けたモグラっぽい魔物とか、かなり気になるんだが、俺から逃げてるし今はまぁ見なくても良しとしよう。なんでモヒカンなんだ?世の中には、まだまだ不思議が溢れている」

「どうやら、あそこには雷を帯電させる角が生えているようですね。それが放電されていることで、モヒカンに見えているようです」

「なるほど。アルティに構造解析してもらえばある程度の謎は解明できそうだな。それじゃあ、探索に戻るか」

「はい」


 俺は、迷宮の外をぐるっと回って内側へと渦を巻くように迷宮内を探索していく。この迷宮の中央には、唯一の起伏である山が存在していた。あそこがこの迷宮のボスの住処だろうな。分かりやすいのは良いことだと思う。


「……さて、一通り回ったが」

「いませんでしたね」


 残るは、この山頂にある洞穴のみ。つまり、ここにも仲間にできる魔物は居なかったということになる。残るは、ボス戦をするだけ。ボスを仲間にすることが出来るかは分からないが、最初だし普通に倒すからな。多分仲間にはしないと思う。実質、雷属性と全属性の魔物の仲間は見つけられなかったのと同じだ。どうしよう。 ……まぁ、ボスを攻略してから考えるか。そうしよう。


「さて、行くぞアルティ、サリス」

「「はい」」


 2人の柄に、俺は両手を添えてボス部屋へと入っていった。山の中の洞窟は、少し進むと天井のない一面を山の絶壁で囲まれた大きな丸いフィールドになっていた。空にはカミナリ雲。だが、その地域だけは落雷が降り注がず、穏やかな気配に包まれていた。その中央に、何かが身を横たえて寝そべっている。それは、俺に気づいた様子もなく、目を閉じたままだった。


「馬か」

「馬、でしょうか?やや顔の形が違うような。毛むくじゃらな部分もありますし」

「でも、あの形で四足っぽいからな。馬じゃないか?」


 取り敢えず、謎の馬らしき魔物に俺は近づいていく。アルティの言ったとおり、馬にしては体毛が多い。まぁ、生えてないところと生えているところがあるが。地肌的な部分もそれなりにあるし、馬って感じが結構俺的にはするな。顔は、馬っぽいけど、なんて言ったらいいんだ。竜かな? 竜っぽい気も、するのか? 多分、そんな感じだと思う。魔物だけど、イケメンな顔の馬だ。格好いい。


「……起きないのかよ」

「起きないですね」


 結構近づいたが、馬が起きる気配がない。なんだこの迷宮ボスは。やる気が無いのか? 今までの迷宮のボスは、弱いけど皆俺とちゃんと戦ってくれたぞ。こんなのは初めてだ。


「……調子狂うな。うん?」


 馬が、ゆっくりと顔を持ち上げる。起きたか。俺は、馬と見つめ合う。すると、馬は俺に構わず空を見つめた。それにつられて、俺も空を見上げる。


「う~ん?」


 すると、俺と馬目掛けて空から落雷が振ってきた。


「おっと!!」


 俺と馬が、飛び退いて落雷を躱す。すると、馬が俺の近くに走ってきて一瞬立ち止まった。


「なんだ?」

「ブルッ」


 身を低くして、俺の股に顔を突っ込もうと馬は進む。その動きから察して、俺は馬の首に手を置いて背中に飛び乗った。すると、馬は急に速度を上げて洞窟内を駆け回っていく。降り注ぐ落雷を避けながら。


「どういうことだ?」

「マスター、空を見て下さい」


 アルティの言葉に、俺は空を見上げる。そこには、黒い雲で出来た物体に目のような2つの光がついた生物が存在していた。


「もしかして、あっちがボスなのか?」


 俺は、落雷の中を閃光のような速さで駆け抜ける馬の上で、ゆっくりとアルティとサリスを抜いた。




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