表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・最終部 召喚魔法で異世界踏破
588/632

水壁のシルド

「一旦ただいま」

「お、流石ご主人様。お早いお帰りですね。で、それが戦利品ですか?」

「うん。多分、水属性の神魔級の亀だ。新しい後輩候補だぞ」

「お、私の属性の後輩ですね」

「そうだな。よし。この亀はミズキに預けよう。後輩として相応しいか、見定めてみてくれ」

「む、承知しました」


 そう言って、ミズキは俺から亀を受け取る。そして、庭先へと出ていった。


「「……」」


 ミズキは、庭に亀を置く。すると、力なさげに亀が頭を地面に垂れたが、その目線の先にわざわざ顔を持っていってミズキは亀と目を合わせた。


「お前は、まだ名前を貰っていない。つまり、我が殿は、お前をうちで雇うか決めかねているのだ。まだな」

「……」

「うちで雇うからには、それなりの保証を受けることになる。美味しい食事に、快適な住まい。そして、新しい力と身体さえも手に入れることが出来る」

「……」


 その言葉に、亀は反応してめんどくさそうに顔をそらした。


「嘘だと思っただろう。事実だ」

「……」

「あれを見ろ」


 ミズキが、亀の顔を掴んで向きを変える。


「あの野菜が見えるか。亀であるお前には、未知の食べ物かもな。これを、お前の口に放り込む。すると、どうなるかな」


 そう言って、ミズキは水の糸を出して野菜を一つ引っ張り手に取ると、亀の口に押し込んだ。すると、さっきまで眠そうだった亀の目が、一瞬だが完全に開ききる。


「……分かったな。嘘をついてはいない。そして、力も、身体も手に入る。我が殿の力でな」

「……」


 亀が、細かく舌を動かして口の周りのものを舐め取っている。余程、野菜が気に入ったようだ。


「ただし、勿論そのためには仕事をしてもらうことになる。その仕事は、殿を守る力となることだ。お前に、それが出来るか?」

「……」


 舐め取り終えると、亀は面倒くさそうにまた頭から力を抜いた。


「今から、お前に私が攻撃を仕掛ける。それで判断するとしよう。なに、放つのはただの水だ。少し早いが、死にはしない」

「……」

「では、やるぞ」


 そういうと、ミズキは亀から離れて、空中に20個の水の玉を生成した。


「さて、まずはこの程度からだが、どうかな?」


 ミズキが手を亀に向けると、水の玉が亀目掛けて飛んでいく。早い。水とはいえ、それなりに体を鍛えた人が放つ豪速球ぐらい早い。それを、見もせずに亀は伏せていた。しかし。


「む」


 ミズキの放った水の玉が、空中で何かに当たって消える。水の玉は、亀に当たることなく、その何かによって防がれた。それは、空中に浮かぶ六角形の水の壁であった。


「……」

「ベリーイージーは、クリアですね」

「次だな」


 ミズキが、十人に分身する。そして、先程よりも速度を早め10倍になった数の水の玉を亀目掛けて撃ち出した。しかし、これもまた水の壁によって阻まれる。


「こいつ、見えているのか?」

「ええ、見えているでしょうね」


 この亀、ミズキが攻撃したところにしか六角形の水の壁を作っていない。しかも、見もせずに全ての包囲からの水の玉を最小限の水の壁を出すことで防いでいた。どうやらミルクの言ったとおり、見えているみたいだな。どの方向から玉が飛んできているのか。


「イージークリアですね」

「次だな」


 更に、球数と速度が上がる。今度は、亀に飛んでいく玉の放たれる時間がランダムになって時間差で飛んでくるようになった。しかし、亀はそれらを完璧に見きって壁を出現させたり、消したりする。完璧に見えている。これだけ早いミズキの魔法攻撃を、全て見切っている。


「ノーマルクリア」

「次だ」


 水玉の、速度が上がって威力が上がる。しかし、亀の壁は穿けない。その上、またしても完璧に攻撃をミズキは防がれた。


「ハードクリア」

「次」


 最早、激流とも言える数の水の玉が、亀目掛けて連射される。しかし、亀はそれが止むと、先程までと変わらない力を抜いた姿勢でそこに寝そべっていた。しかも、全く濡れていない。


「ベリーハードクリア」

「……ふっ、良いですね」


 ミズキは、そう言って鎧を身に纏う。


「では、これならどうですか?」


 そう言って、一発だけミズキは水の玉を撃ち出した。それは、亀の水の壁に捉えられたが、その壁をあまりの速さ故に突き破っていく。


「……」


 その瞬間、亀が少し頭を上げた。すると、何枚もの水の壁が重なって出現し、一発の水の玉を阻んでいく。3枚、壁が新たに破壊された時点で、水の玉は消えた。


「これを、さっきまでと同じ数撃ちます。さて、耐えられますか?」

「……」


 亀が、目線をミズキに向けていた。そして、ミズキを睨んでいる。ミズキは、宣言通り水の玉を出現させると、それらを亀目掛けて発射した。


「ミズキ地獄、ヘルモードはどうですかね?」

「……」


 生物が簡単に死ぬ水の激流が亀を飲み込んでいる。その水の激流が止むと、激流の中から水の壁で出来た甲羅状の球体が出てきた。


「ほぅ」

「ヘルモードもクリアですか。良いじゃないですか、この子」


 亀は、ミズキを睨みつけた状態で水のバリアを解除する。そして、次が飛んでこないのが分かると、体の力を抜いて地面に伏せた。


「どうだ、ミズキ?」

「……合格です。この子を、私達の後輩にしましょう」

「流石、ご主人様。いい子拾ってきますねぇ。……ところで、メスですよね?」

「メスです。お気になさらず」

「なら完璧ですね。採用!!」

「まぁ、その前に契約してくれるかどうか、分からないけどな」


 そう言って、俺は亀に歩み寄る。


「さて、念話で意思も伝えつつ話すか。この魔石に、君の魔力を流す。するとだな、俺と召喚の契約で結ばれるんだ。どうかな、受けてもらえるかい?」


 そう言って、俺が魔石を作って差し出すと、亀は重そうに頭を上げて魔石に頭をくっつけた。そして、亀は魔石に魔力を流す。


「お~~、良いのか。よし、名前をつけてあげないとな。それじゃあ……」


 俺は、頭の中で適当に名前を考えた。呼びやすく、かつ嫌われない程度の名前がいい。で、これにした。


「君は、今日からシルドだ。よろしくな」

「……」


 俺がそう言うと、亀は一旦頷いて、また伏せた。


「さて、進化させて……」

「ちょっと待ったあああああああああああ!!!!」


 俺が亀に手を向けると、ミルクが俺の手を掴んで止める。どうしたんだいったい?


「どうした、ミルク?なにか駄目だったか?」

「ご主人様。既に、ご主人様は進化を操る力をお持ちです。しかし、シルドがその進化を休むために使わないとは言えません」

「まぁ、シルドのなりたい方向にはある程度なるからな。そうなるだろう。人化はするだろうけど」

「なので、一応事前にミズキがある程度訓練してからに進化はしませんか。講習を終えたあとで、ということで」

「そのほうが、シルドもより強くなれるでしょう。私も、そうしたほうが良いと思います」

「そ、そうか。ミズキもミルクもそう言うなら、そうするかな」

「シルドは、お任せ下さい」

「うん。ミズキに任せた」

「承知。さて」


 そう言うと、ミズキはシルドに向き直った。


「ベリーヘルモードのスタートだ」

「!?」


 シルドの頭が、一気に跳ね起きる。すると、前置きもなしにミズキは、水の玉を連射し始めた。


「耐えろ耐えろ!!今度は、耐えるだけでは終わらんぞ!!私にも反撃して、攻撃を止めさせてみろ!!!!」

「……シルド。可哀想に」

「まぁ、優秀な子ですからね。ミズキ先生も、教育に気合が入ってるようです。では、こちらはお任せ下さいご主人様」

「……分かった。じゃあ、また行ってくる」

「ええ、行ってらっしゃいませ」


 ミルクに言って、俺はまた別の迷宮に転移した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ