力をつなげて
「あれは……」
『行け』
幻想級が、そのキューブを飛ばしてくる。それに向かって再びカヤが魔法を発動させたが、一個しか小さなキューブを消すことが出来なかった。
「あれ?」
「お前の魔法は、私が使う!!」
そう言って、ミルクが魔法の制御権を奪おうとする。しかし、キューブが進行方向を変えることはなかった。
「な、なんでですか!?」
『我が、創世級より学んだ魔法しか使えないとでも思ったか。このキューブはな、魔法も衝撃さえも吸収して己の内に収めることができる。そして、収めたものを消滅させるのだ』
「げぇっ!?」
『貴様の魔法の制御を奪う魔法とて、例外ではない。その魔法は、箱に収められて無に帰った。故に、まだ箱は残っている』
「なんでですか!?せめて消えるべきでしょ!!カヤの魔法みたいに!!」
「……許容量かな?」
「つまり、あの箱が消滅させられる量の魔力を、あの箱に流さないと消えないのか!!」
『察しが良いな。では、あとはどうなるか分かるだろう』
俺達の目の前一面に、小さなキューブがまるで壁のように量産されていく。それはやがて、スピードを増して俺達へと降り注ぎ始めた。
『我の切り札だ。消えろ』
「ええい!!通常魔法も使えないのに、特殊魔法を使って魔力を送り続けることでしか消せないなんて、面倒くさすぎますよ!!!!」
「私の斬撃も、250断ちは吸収されるようだ」
「意外と多いですね!?」
「だが、あの量なら問題ない!!」
レムが、斬撃を放って次々とキューブを破壊していく。しかし、量産されるキューブが多すぎて幻想級にすら斬撃が届かなくなっていた。
「うおおおおおおおおお!!!!押されてますよ!!!!」
「光を超えろ、極聖のハルバード!!!!」
ミエル達のハルバードから、大量の白い光が放たれる。それでかなりの数のキューブが減ったものの、量産される量がそれよりも多く、徐々に俺達の周りの空間はキューブに囲まれ始めた。
「どうしたらいいんですか!?」
「焦るな、ミルク」
「ふぇ、ご主人様?」
「手が足りないなら、呼べばいい。だろ?」
そう言って、俺は腕を前に突き出した。
「ロロ、ジャルク!!」
「……呼ばれた」
「行こう、ロロ!!」
地上から、ロロとジャルクが姿を消した。
「……ほぉ」
それを、ローリィは嬉しそうに見ていた。
「ロロ、ジャルク。進化しろ!!」
「おお~~!!」
「これは、すごいわね」
ロロ達の身体が、光り輝く。ロロの容姿は変わっていない。しかし。
「……誰?」
「……ロロ、笑えない冗談よ」
「いや、誰?」
「……」
ロロの隣には、背丈のやや高いお姉さんが居た。そのお姉さんは、ロロの言葉に背中の翼竜の羽を広げる。
「……ジャルク!!」
「行くわよ、ロロ。どうも、皆ピンチみたいだし」
「あわわ、ジャルクが大人に!?」
「当たり前でしょ。私、あなたよりお姉さんなんだから」
「嘘だ!!」
「ホント。それよりも、行くわよ!!」
「……うん」
2人が、一体となって鎧を身に纏う。その背中には、巨大な2つの大砲がついていた。
「この話は、後でする!!今は、全部ぶっ飛ばす!!」
「ええ、行くわよ、ロロ!!」
「シャイニングブレスキャノン!!!!」
光のレーザーが、大砲から放射されて、多くのキューブを薙ぎ払っていった。
「ま、まだそれでも追いついてませんよ!!!!」
「ローリィ!!」
「……ライオル」
「おう」
地上からは、森のようだった新たな迷宮が消えていた。しかし、その地から力は弱くなったものの、少しだけだが魔物が新たに溢れ出てくる。それを、ライオル達は片付けていた。
「すまないな。私は救ってくるぞ、この星を。勇者よ」
そう言って、ローリィはその場から消えた。
「……ああ、ここは任せて救ってこい。頼んだぜ、魔王」
そう言って、ライオルは空を見上げた。
「ローリィ、進化だ!!」
「ああ、任せろ、ベイ・アルフェルト!!!!」
そう言うと同時に、ローリィの鎧が変化した。一回り鎧が大きくなって、その体には無数の砲身がついている。
「全て、薙ぎ払わせてもらう!!!!」
ローリィの鎧のいたるところから、闇の魔力で出来た弾丸が撃ち出された。幻想級に相殺されていないところからして、特殊な弾丸なのかもしれない。それらが命中していくと、見る間に辺りを囲んでいたキューブの数が減少していった。
『ほぉ~。まさか、ここまでとは。やはり、人は生かしておけん』
「このまま押し返すぞ!!!!」
『だが、そこまでだ』
「何!?」
幻想級の、キューブの生成速度が更に上がった。今まで俺達が押し返していたキューブが、今度は怒涛の勢いで俺達へと迫ってきている。
「なんでここまで上げられるんですか!!さっきので、手一杯だったんじゃ!!」
『簡単な話だ。魔力を支配している地域を狭めた。お前たちを警戒して、かなりの広範囲を相殺できるように魔力の支配地域にしていたのだが、それを減少させて生成に回した。これで最後だ。消えろ』
「ちょ、流石に、これはやば!!」
「いや、まだだ!!!!」
そう言って、俺は腕を突き出す。
「えっ、もう私達の仲間は、居ないですよ!?」
「来い、シリル!!」
「えええええええええ!!!!」
すると、地上から青い炎の髪をした女性型の魔物が消えた。
「マスターは、今までに絆を結んだ相手を、召喚することが出来ます!!」
「ここは、宇宙か?」
「シリル!!」
「えっ、ベイ・アルフェルト?」
「俺達に、力を貸してくれ!!」
少し考える素振りを見せると、シリルは頷いた。
「……ああ、分かった!!」
「よし。進化しろ、シリル!!」
「えっ?」
その瞬間、八本腕の彼女を、青い鎧が包み込んでいった。
「こ、これは何だ!!」
「それが進化。君の新しい力だ!!さぁ、頼む!!」
「……ええい!!よし、任せろ!!」
そう言って、八本腕の鎧を纏った彼女は、腕に青い炎を出現させると、連続してキューブへとそれを投げつけていく。すると、それを受けたキューブが、次々に消滅していった。
「すごい!!一撃で多くのキューブが破壊されてますよ!!」
「あの子の炎は、魔法を壊すからね!!キューブも例外じゃないのかも!!」
「頼もしいですね!!」
「でも、まだ数が!!」
「ご主人様!!」
俺は、ミルクの声に目を向ける。すると、ミルクは頷いた。ああ、分かってるよ。
「……来てくれ、レーチェ!!」
「……出番か」
地上で、ゆっくりとレーチェが立ち上がった。




