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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・二部 決戦・創世級迷宮
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この世最強の召喚王

 大地が揺らぐ。


「うわっ!!」

「なになに!?」

「……」

 

 ヒイラ達が慌てふためく。その目の前で、魔物達が生まれてきていた森が枯れ始めていた。


「魔力が、吸われている」


 アリーは、空を見上げた。そこには、巨大な何かが居るのが見えた。


「創世級迷宮よ。あれは」


 アリーの隣に、もう一人のアリーが転移して現れる。その言葉に、アリーは鎧を解除した。


「だとすると、人類が作り出した怪物ってところね」

「そうね。しかも、この星と繋がってるらしいわよ。ご丁寧に言ってたけど、倒すならこの星を破壊しないと倒しきれないみたい。あれ」

「……そんなの、どうするのよ」

「どうするのかしらね」


 2人のアリーは、宇宙を睨みつけながらそう言い合った。敵は、巨大な魔力の塊で、多くの魔法を使いこなし、この星と繋がっている。


「……」

「……ベイ」


 無理かもしれない。そう、2人は思った。だが、それを二人は口にしない。何故なら、まだ彼らが戦っているはずだからだ。だから、弱音だけは口に出来ないとアリーは思っていた。


*****


「どうすればいい!?」

「転移魔法で、全員を一旦転移させればいいんですよ!!そして、あの星を壊して、新たな星を魔法で作り上げれば!!」

『無駄だ』

 

 再び、ベイ達目掛けて魔法の雨が降り注ぐ。それを、魔法を放ってベイは相殺しようとした。しかし、腕から魔法が出ない。


「なっ!?」

『お前たちと我には、圧倒的な魔力量の差がある。この一帯にある魔力は、全て我の物だ。圧倒的な量の魔力が、この場にはある。お前たちの魔法を発動前に相殺するなど、我には造作もない』

「つまり、転移も属性魔法も使えないということですか!!」

「だが、ミルクの持っているような特殊な魔法なら使えるようだな!!」

『肯定。それは、相殺するすべを持っていない。しかし、言っただろう。この一帯の魔力は、すべて我が支配している。その全てを制御して防いだまま、転移魔法を使って新たに惑星を作ることが出来ると思うのか?』

「クッ!?」


 無理、ではないかもしれない。ただ、かなりの無理をすることになる。もし、少しでも魔法操作を誤れば、俺は自らの手で皆を殺してしまうかもしれない。そんな賭けを、今、この場で俺はしないといけないのか。


「……」

『それでも、諦めずあがくのだろう。お前は人であるからな。知っている。故に、手を抜かない。全てを賭けて、我はお前たちを殺す』

「この、させるかああああああああああ!!!!」


 一心不乱にアルティを振るい、魔法の操作権を奪い、俺は星に流れていく魔法を消していった。やがて、創世級をも切る斬撃が幻想級に命中する。しかし、その体を斬撃が断ち切ることはなかった。大きすぎる。あまりにも対象が大きすぎるせいだ。絶大な威力を誇るレムの剣技での斬撃を持ってしても、幻想級にはかすり傷程度しかつけられない。その光景を見た時、僅かに心が諦めを訴えたのを感じた。しかし、それを俺は一気に拭い去る。負けられないんだ。アリー達が、俺達を待っているんだから。


「……やはり、我々の切り札は」


 アルティが、何かをつぶやいている。しかし、俺にはそれを聞いている暇がない。魔力の波を打ち消し、何度も斬撃を送り込んで幻想級を削っていく。だが、このままではいつまでも勝つことが出来ない。だとしても、立ち止まることは出来なかった。アリー達を、死なせないためにも。


「皆さん、幻想級は人類を殺す上で、出来ないことがあるようです」

「出来ないことだと」

「ええ。一つは、星そのものからの魔力の発動。それが出来れば、我々は魔力の波を止められません。人類は死にます。しかし、それを幻想級はしない。魔力を吸えはするが、あいつが言っていたとおり完全な制御下には無いのでしょう。繋がってはいるが、独立しても居るようです。あいつが限定的にしか操れないあいつの一部といったところでしょうか」

「なるほど」

「2つ目は、魔法の発動です。奴は利用したと言いましたが、どうも自分では発動を制御できないのではないかと思います。そう、時を戻す魔法です」

「それがどうしたんだ?」

「奴は、一度創世級に破壊されたと言いました。つまり、破壊されても何も出来なかったということです。アリーさんが魔法を発動させるまでは。つまり、その魔法が特殊であったために扱えず、完全には制御できていないのではないでしょうか。つまり、時を巻き戻す魔法なら、使うことが出来るのではないかと思います」

「まさか」

「そう、そのまさかです。どうやら、創世級迷宮は再生して再誕したときに記憶を受け継いでいたためにこの姿になったようですが、その前に戻ってこいつが完成する前に破壊してしまえば関係がありません」

「アルティ、お前」

「時を巻き戻しましょう。そして、創世級迷宮が出来る前に、創世級を倒して創世級迷宮の完成を阻止する。それしか、方法がないと思います」

『させる訳がなかろう』

「ガッ!?」


 幻想級の攻撃が、更に強くなった。押し寄せる魔力の波も、巨大になっている。それを防ぎながら、俺は魔法を破壊していった。


「アリーさんに念話を送って、準備していただきましょう。これなら、確実です」

『やはり、人は生かしておけない。特に、あの魔道士わな。殺す。あの魔道士を』

「……あっ?」


 その瞬間、俺達の鎧から純粋な魔力が溢れ出して、周囲の幻想級の魔法をすべて吹き飛ばした。


『……』

「お前、今、なんて言った」

『愚かな。自身の怒りで、破滅を早めたか』

「お前、アリーを殺すって言ったのか!!俺の、俺のアリーをおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」


 空間が揺らぐ。魔力が鼓動する。周囲の敵の魔力すら吸い上げて、俺達の鎧は輝き始めた。


「今、全てが実った」

『何?』

「私達は、進化することで強敵と渡り合ってきた。どんな時も、進化することで成長を一瞬の内に終わらせて、すべての敵を乗り越えてきた。それを、その進化するための魔力を私は、マスターの中にも流れるように仕向けた。全ての属性の魔力でな!!」

『!?』

「今、マスターは全ての属性の進化する魔力を知っている!!そして、マスターの身体は、魔力で出来ている!!そう。全ての要素が揃っていたはずだった。だが、マスターは進化しなかった。人であったからだ!!人であったことが、進化を無意識に妨げる概念になっていた!!」

『……』

「だが今、怒りでそれが消えたぞ!!迷いを超越し、力を求め、身体が魔力を用いて理想の己を作ることが出来た時、今、それは進化としてこの場に奇跡を起こす!!!!」

「うああああああああああああああああ!!!!」


 鎧が消えて、俺の体のみが残る。身体の内が魔力で光、焼け焦げそうなほど熱く身体の中を跳ね回って俺の身体を作り変えていった。姿をそのままに、俺は変わろうとしている。これが、進化なのか。


「今、ここに奇跡が降臨する!!人を超えて、種族の垣根すら超えて、魔物を束ねし我らがマスター!!この世最強の召喚王!!今、ここに顕現する!!創世を超えた幻想だと?いいだろう!!ならば、私達のマスターも創世を超えている!!敗北を受け入れろ!!今、ここに居るのは!!」


 光がやんで、身体が落ち着いてきた。何故だろう。身体に、力が漲ってきている。新しい魔法の使い方が分かる。


「召王想人、ベイ・アルフェルトだぁぁあああああああああ!!!!」


 人を超えて、幻想へと至る。旅の果に、今、本当の召喚王が降臨した。



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