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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・二部 決戦・創世級迷宮
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創世級迷宮

 目に前には、宇宙が広がっている。その果てしない闇の向こうから、幾重もの魔法が雨のように降り注いでいた。全てを破壊する魔法、熱を奪う炎、氷、蒸発し液体に変化して飛んでくる水、対象を破壊するまで攻撃し続ける自動追尾魔法、幻覚を見せてくる雷光、熱を放って周囲を巻き込んで攻撃してくる光。その全てを、ミルクとフィーはいなし続けていた。そして、相手の正体が分からぬまま時間が過ぎていく。やがて、全ての創世級を倒し、仲間がベイのうちに戻ってきた。


「戻りました。戦況はどうですか?」

「レム、あなたが最後ですよ!!今は、正体不明の敵と交戦中!!全ての創世級を倒したはずなのに、私達は、どうやらそれら全ての攻撃を受けているようです!!しかも、レーチェの魔法も込みです!!」

「負傷者は?」

「カザネが重傷!!他の皆は気を失っていませんが、魔力の大量使用により疲労。それは、すでにご主人様の魔法で回復済みです。ですが、カザネのみがまだ、目を覚ましません!!」

「……カザネが、一番強いやつと当たったか」

「ともあれ、これで下に残してきたロロ達以外は、全員揃いました。ご主人様!!」

「……ああ。シゼルさん、カザネに回復魔法をお願いします」

「はい!!」


 鎧の動きが変わる。鎧の制御権が、ベイへと移った。


「……なるほど」

「見えないはずですね」


 レムとベイのみが理解した。見えない敵の正体を。それは、魔法すら斬撃で断つことを可能にした見切りを可能にする目の良さゆえだ。そして理解する。断つべきものは、視界いっぱいに広がっているのだと。


「アルティ」

「はい!!」


 アルティを構えて、魔法の雨を薙ぐ。避けもせず、俺は魔法を切り続けた。斬撃が、魔法の雨を切り裂いていく。そして、なにもないはずのその空間に届いた。


「まさか、大きすぎて見えなかったとわな」


 斬撃が、何かに衝突する。すると、宇宙空間が揺らいだ。いや、違う。俺たちには見えている。その魔力で出来た、化物の身体が。


「……」


 何かが蠢いている。そして、目の前で収縮している。大きさを小さくしているその何かは、魔力を集めて実態を凝縮して作り始めていた。広がっていた目の前に居た宇宙が、迷宮という外壁を破壊してその姿を形作っていく。そして、俺達はその姿の前に、何もすることが出来ずに佇んでいた。


「なんだよ、こいつは」


 それは、目を開けた。その腕には、まるで生ける星のような外角がついている。身体も、頭も、まるで何かの星がその一部を使って姿を形作ったとしか思えない容姿で、そいつは存在していた。オレンジに光る一つの目らしきものを輝かせ、そいつはこちらを見ている。そいつの背中からは、俺達の星の周りに伸びる4つの光の線に繋がった光が漏れていた。その光は、周囲から魔力を吸い上げて目の前の化物に魔力を回し続けている。だとすると、こいつは……。


「創世級迷宮そのものか……」

『人よ。その認識は正しい。だが、誤りでもある』

「しゃ、喋った……」


 重苦しい声が、目の前から流れ込んでくる。言葉ではあるが、空気の振動でこれは俺達に伝わっている言葉ではないと俺達は感じた。これは、魔力を動かして伝えられている。こいつの意思を、俺達が勝ってに言語化して解釈しているといえばいいのだろうか。もし万能の言語があるとすればこれなのだろうと、俺は思った。


『我は、二度に渡る歴史の繰り返しの果に、この姿を確立した。一度は、うちに閉じ込めし創世級によって果までこの体を広げるに至ったが、それ故に我は成長し、形を成したのだ』

「……アリーの魔法を受けて、巻き戻らなかったって言うのか?」

『魔道士のことか。その魔道士が利用した魔力は、我がものだ。我が流される道理はない。都合良く使用した。形を戻し、周囲の魔力をかき集め、内にいる獣共を研究した』

「……」

『そして、成し得たのだ。創世を超える幻想を』

「幻想……」

「幻想級。創世を超えていると言いたいのですか……」


 そいつを、俺達は見上げた。奴の先には、いまだ大きな宇宙が続いている。しかし、それでも奴自身が俺達の視界を埋めている量は多かった。どれだけこいつがでかいのか、想像もつかない。ただ、一つだけ言えるのは、俺達の住んでいた星は、こいつの指先ほども無いだろうってことだけだ。


『まずは礼を述べたい。内に居た獣を破壊してくれたことを』

「……」

『そして、言おう。その星に存在する魔力は、全て我のものであると』

「……」

『もはや内にいた獣も一柱を除いて居ない。それも、我があり方を成す鎖を断ち切った。であるあらば』

「何だって言うんだ?」

『我を縛る制約はすでにない。檻の役目は終わった。そして、支配を始める』

「クッ!!」


 幻想級。目の前の敵から魔力が溢れ出した。それは、俺達の背後の星を飲み込もうと波のように迫る。それは、目に見える動きではないが、俺達には分かった。こんな魔力の波を直接受けてしまえば、人間はすべて死に絶える。それを防ぐために、俺達はあえて避けず、その場に自分たちの放出した魔力で結界を張ってその魔力の波の中に星が飲まれるのを防いだ。


『人とは不思議なものだ。我を作りもした。時を巻き戻しもした。故に、生かしておけぬ。今の我が波を防げるお前も、紛れもなく人であった。しかし、今我の前に立っているのは創世の力を持つものではなく、神魔を束ねしお前だ。やはり、人は生かしておけぬ』

「何故、こんなことを。お前は、人に作られたはずじゃあ」

『であるからだ。故に、その恐ろしさを理解している。創世を呼び寄せ、一時ではあるがそれを支配した。そして、我を作りそれらを長い間閉じ込める迷宮を作り上げた。故に、人の作りし物である我が封印されないとも限らない。故に殺す。人という種族を』

「自身の生きる保険のために、人類を殺すと言うのか!!」

『肯定。不穏分子は、排除するに十分たる理由となる。そして、我が核を魔力で完全なる支配下におき、この地に安寧をもたらすのだ』

「核、だと?」

『肯定。お前が守りし星。その者から流れいでる魔力こそが、我を形作っている。そう、その星をお前たちが守る限り、我を殺すことは出来ない。お前たちは無駄なことをしているのだ。その星を守り続ける限り、我を殺せない。故に、いずれ人は死ぬ。人を生かしている星そのものが、我であるからだ』

「嘘を言うな!!星から流れている魔力を、お前は吸っているだけだろう!!星そのものハズが!!」

『では、これでどうかな?』


 その瞬間、俺達の背後から、幻想級目掛けて魔力が流れ込んでいく。それは、俺達の生きてきた星から送られてきていた。その莫大な魔力を放出し続けるに連れて、星は、その色を変えていく。青かった海は色を変えてにごり、大地には亀裂が走り始めていた。


「ご主人様、星が!!」

「どうなってるんだ!!!!」

『魔力を回収している。核からな。深く、我々は繋がりすぎた。もはや、この身はアレの一部だ。あれに無理をさせることも出来るが、崩壊はさせられない。あれを核として流れる魔力で、我は作られたからだ。故に、こうして強制的に魔力を吸うことが出来る。だが、それも核を破壊することは出来ない。繋がっているからだ。星と我が』

「……」

『お前たちに我を殺すことは出来ない。我を殺すことは、星の崩壊を意味する。人類の死だ。それを、お前たちは選べまい。故に死ぬだろう。どんなにあがこうとも、どんなに強い力を持っていようともな』


 創世級を倒した仲間たちの力が、この鎧には宿っている。しかし、それでも今、俺達には今の状況が絶望的な状況のように感じられた。



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