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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・二部 決戦・創世級迷宮
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荒れ狂う津波

 創生級迷宮・風の階層崩壊から数分が過ぎていた。最初からまるで津波のように押し寄せる魔物の軍団を天使たちが魔法で処理していたのだが、時間が経つに連れて次々に他の階層も消滅していく。それに伴って周囲に蔓延していく魔力の量はどんどんと濃くなっていき、やがて、天使たちのみでは完全に抑えられないほどの魔物が出現し始めていた。


「あれは何だ!?」

「巨人だ!!」

「我々の魔法じゃ、びくともしないぞ!!神魔級か!!」


 魔物の津波をかき分けて、紫の肌をした巨人が天使たちに迫る。その巨人の触れた部分は、電撃で焼け焦げて、その周囲に居た魔物たちは発生している電気により身動きを止められていた。


「止めろ~~!!!!包囲を破られるぞ~~!!!!」

「無理だ!!あいつに魔法を集中させれば、戦線が崩れる!!」

「……そろそろ、出番ってところか」


 その瞬間、天使たちの背後から大きな剣が投げられた。それは一直線に紫の巨人の頭目掛けて飛んでいき、その眉間に突き刺さる。それを、剣を追って駆け出していたガンドロスが、驚異的な跳躍によって握り、力を込めた。


「意外に柔らかい巨人じゃないか。なあ」


 巨人の顔面が、ガンドロスの斬撃によって切断される。そして、その巨体を地面に向かって崩れさせた。


「ちょっとしびれたが、まぁ、準備運動としてはこのぐらいは刺激がないとな」


 ガンドロスは、崩れる巨人の巨体を蹴って、地面へと着地する。そして、そう言いながら周囲の魔物を片手間になで斬りにし始めた。


「前を見ろ。まだ居るぞ」

「お、増えるのかよ。あまり切りがいがないが。少しは満足できそうだな」


 魔物を観察しているガンドロスを追い抜き、ジーンは魔物の津波の上を駆けていく。腰に装備していた双剣をその手に握ると、気を使ってジーンは一気に加速した。空気を切り裂いて、ジーンは新たな巨人へと肉薄する。そして、その勢いのままジーンは、巨人の肉体を駆け上がっていた。


「はぁぁあああああああああ!!!!」


 自身の移動速度を更に上げながら、ジーンは巨人の肉体を切り刻んでいく。巨人の手首や、肩のような関節の継ぎ目を狙ってジーンは断ち切ると、あっという間に一体の巨人をバラバラにして仕留めた。その勢いのまま、ジーンは新たに周囲に現れた巨人目掛けてジャンプする。


「すごい」

「あれが、人間なのか……」

「南側の包囲が崩れそうだぞ!!」

「……」


 その瞬間、南側に光の斬撃が走った。その一撃で、魔物の津波が一瞬止まる。その場にいた敵の魔物たちが、たったの一撃で全て切り裂かれていた。


「交代といこう。少し、休むと良い」


 ライオルは、そう言って天使たちの前に立つ。その後ろ姿を、天使たちは驚愕の表情で眺めていた。


「ふむ。腕を上げたな、ライオル」

「お前は、どうなんだよ。こっちは俺が見ててやるから、お前はあっちを手伝ってこい」

「良いだろう。私の新しい力、君に見せてあげよう」


 そう言うと、ローリィは鎧を展開して空中へとゆっくり浮き上がる。そして、両腕と肩の大砲を敵の魔物たち向かって構えた。


「悪く思わないでくれよ。生まれてすぐで悪いが、君たちの存在を周囲に撒き散らすのは都合が悪くてね。君たちは悪くない。だが、今は魔力に還ってくれ」


 その瞬間、ローリィの体に備え付けられているありとあらゆる砲撃用の武器から追尾ミサイルやレーザー、連続して放たれる魔力の弾丸の雨が発射された。その攻撃の着弾地点には、魔物の死体すら残らず、見えていなかった地面が顕になっていく。ローリィの砲撃が通り過ぎた後には地面しかなく、その攻撃の威力の強さを、目視でわかるほどの強さでローリィは振るい続けた。


「あはははは!!ベイ・アルフェルトはすごいやつだ!!未だ私達にまで魔力供給を回している!!無限に撃ち続けられるぞ!!天使諸君は休んでいたまえ。ここは、我々が引き受けた!!」

「ジャルク、行く」

「クァ~~!!」


 ローリィに続いて、ロロとジャルクが鎧を纏う。2人の鎧が一つになって、黄金の竜騎士となった。

 

「飛ぶぞ、ジャルク!!」

「ああ、行こう、ロロ!!」


 進化したことでジャルクの姿は、少しであるが成長し、ロロを乗せて飛んでもおかしくないほどの大きさの飛竜となっていた。その為、今のロロ達は長時間飛行をすることが可能になっていた。魔物の津波の上を飛び抜け、ロロ達は薙刀を振るう。黄金の竜騎士が駆け抜けた場所には、魔物の死体が積み重なっていった。


「……まだ、順調ね」

「そうだね」

「……」

「あんたらは、何もしないの?」

「……あんな戦場で、私達に何をしろというんですか」

「あれ、それをするためにあんた達も来たんじゃないの。シアにシュアさん」

「あはは、見てろって言われてね。今は待機だよ」

「ライオルさんも、過保護ね」

「アリーちゃん達も、見てるだけだよね?」

「ヒイラは、今でも少し手助けしてるわよ」

「アリーさんは、何もしないのですか?」

「するわよ。これ以上になったらね」

「これ以上?」


 シアの言葉に、アリーは戦場を見つめる。


「まだ、2つ階層が崩れただけよ。これから、周囲の魔力量はさらに濃くなる。そしたら、あれ以上が出てくるってわけ。その時には、動くわよ。ガンドロス達が支えきれなくなり始めたらね」

「アリーさん、あなたは今、どれほどの……」


 そのシアの言葉に、アリーは答えず空を見つめた。


「ベイ……」


 迷宮の中に居て、姿の見えない彼の名前をアリーは呼ぶ。その時ベイ達は、未だに姿の見えない敵相手に、防戦を続けて魔法を撃ち合っていた。


「シデンも戻ってきました!!」

「シデン、敵の位置は分かるか!!」

「えっと、思考が読めるのですが、目の前に居ます。ずっと、目の前にいるそうです」

「眼の前だと!!どういうことだ!!」

「当たってる気がしないんですけど~~~~!!!!」


 シデンの力も借りて、ミルクは相手の魔法を流していく。敵の魔法攻撃は、その数を時間の経過と共に増して、ベイ達を苦しめ始めていた。



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