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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・二部 決戦・創世級迷宮
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白光の中の極光

「「「「ぐああああああああああああ~~~~!!!!」」」」


 ミエル達が飛ばされた先の迷宮の階層で一番最初に感じたのは、有り得ない程の熱量であった。到着した瞬間、ミエル達はその熱波の攻撃にさらされる。だが、その中で痛みを感じながらも、ミエル達は鎧に魔力の壁を張ることで、そのダメージを軽減することに成功した。


「うああああああああああ!!!!」


 雄叫びを上げながら、眩いほどの熱波の中を視認する。そして、ミエル達の眼の前にそれは居た。蛍光灯のように眩い白い光を放つ球体。まるで太陽のようなそれは、ミエル達にかまうことすらせず、その場に浮いている。


「あれは、生物なんですか?」

「創世級には、違いないと思うっす」

「どちらにしても、これ程の熱量を放つ存在が地上に居ては……」

「星など、すぐに溶けてしまいますね」


 四人は、すでに合体してグレートミエルモードになっている。巨大ロボのように大きなその鎧ではあるが、それよりも光を放っている創世級の本体らしき球体部分は巨大。光っている球体らしき部分に、時折蠢く黒い人間の子供のようにも見える影を見ることが出来る。まるで、球体から生まれるのを待っているかのようなそれは、時折球体内でグルっと回転していた。


「どちらにしろ、倒すしかなさそうですね。極光のハルバード!!!!」


 武器を構え、ミエル達は球体へと近づく。だが、球体に近づくほど熱量は大きくなり、ミエル達は次第に近づくことが難しくなっていった。


「グッ!?」

「これは、思ったよりもきついっすね。これって攻撃なんっすか?」

「……敵意は感じませんね。いや、どちらかというと、我々に注意を払う必要がないと言ったところでしょうか」

「魔力の流れを見ましたが、どうやら攻撃としても成立する魔力の流れを作っているようですね。この空間内を、直接熱量という形で魔力を循環させて自身の肉体に戻るようにしています。攻撃であり、防御であり、自身が生きるための魔力制御の流れとしてこの光による熱波を放ち続けているみたいですね」

「つまり、この光が止むことはないってことっすか」

「ええ。あいつを、倒さない限り」

「……行きましょう。皆」


 近づくたび、熱量の壁が厚くなるためか、ミエル達の動きが鈍る。それでも、ミエル達は近づくのをやめない。鎧の一部が僅かに砕け、熱量の上昇がバリアを上回り始めているのが分かる。だが、それでもミエル達は球体に近づき、その巨大な球体から一定距離近づいたところでミエル達は立ち止まった。


「ここなら、外しません」


 そう言って、ミエルはハルバードを構える。肩に背負い、ハルバードに向かってミエル達は魔力を流し始めた。


「……」


 その瞬間、ぐるっと球体内にいる大きな影が蠢く。すると、周囲の熱量がいきなり上がり始めた。


「ぐあああああああああ!!!!」


 その熱量は、易易とミエル達の張ったバリアを貫通し、鎧の装甲を破壊していく。強固であるはずの魔力で出来た鎧が、そのあまりの魔力量に溶けて消え始めた。


「私が、魔力をぶつけてある程度相殺します!!3人は、魔力を!!」

「「「はい!!」」」


 シゼルが相殺を受け持つことで、ミエル達はその場から吹き飛ばされるのを耐えた。だが、時間が経つにつれて更に熱量が上がっていく。


「これは、完璧に敵として認識されたみたいっすね」

「恐ろしい熱量です。先程までならば、まだ楽だったのですが」

「今は、周囲を周回していた熱量が私達に向かってなだれ込んで来ています。恐らく、そんなに鎧も持たないでしょう」

「じゃあ、決着を早めにつけるとしましょうか!!」


 ハルバードが、ミエル達の魔力を受けて輝きを放つ。その黄色に近い白の光は、辺りの光を吹き飛ばし驚異的な熱量の魔力の中でも色褪せることなく輝いていた。


「受けてみろ、創世級!!!!」


 ミエルが、極光のハルバードを創世級目掛けて振り下ろす。すると、周りの空間が揺らめき創世級の周りに白い空間を作り上げた。だが、その空間の中で創世級は更に自身が放つ熱量を強める。ミエル達は、極光のハルバードを自分たちの目の前にかざし、ハルバードを盾として使ってその熱量を防いだ。


「「「「うああああああああああ~~~~!!!!」」」」


 ハルバードが、創世級の魔力を両断して直接ミエル達に魔力が飛んでいくのを防いでいる。しかし、あまりの熱量に極光のハルバード自体にヒビが入り始めた。


「きょ、極光のハルバードが!!!!」

「ここで武器を失えば、私達に勝つ可能性は……」

「なくなると思うっす」

「保たせないと!!」


 ミエル達は、再びハルバードへと魔力を込める。しかし、極光のハルバードが治ることはない。創世級の操る魔力量はミエル達よりも莫大である。いくらミエル達が四人で魔力を込めたとしても、創世級の与えるダメージ量を上回る回復をすることは出来ない。拡散された攻撃ならば、シデンと同じようにミエル達も防ぐことが出来ただろう。しかし、今創世級の攻撃は、ミエル達に集中してしまっている。いくら全員の中で並外れたパワーを持つミエル達の合体した鎧でも、ハルバードの崩壊を完全に食い止めることは出来なかった。徐々に、ハルバード自体に亀裂が入っていく。


「あっ、ああああ!!!!」

「なんとか、しないと!!」

「ミエル様、落ち着いて!!」

「私達は、ここで終われないんっす!!ベイさんが、待ってるんっすよ!!!!」

「……」


 シスラのその言葉に、ミエルは喋るのをやめた。鎧の中で目を閉じて集中し、自身の手の中にある武器を見据える。そして、力強く握り直した。


「輝け、極光のハルバード!!!!」


 ミエルの両腕から、多くの魔力がハルバード目掛けて流れ込んでいく。だが、本来であるならばこの状況から持ち直すことなど出来るはずもない。しかし、ミエル達は違った。


「……」


 極光のハルバードは、先程も行ったとおり次元を歪めて空間を作る力がある。故に、多くの魔力があれば空間ごと敵を断ち、破壊することが可能な武器だ。だが、その強大な威力故に、ハルバード自体に負荷がかかるため何度もこの技は使えない。そのために、特殊な空間を作って技が外れるのを最初に防ぐ必要がある。そして、この技を使うためには、極光のハルバードに多くの魔力を流す必要があるのだが、今までミエル達は鎧の防御にも魔力を回していてその魔力を貯めるのに時間がかかっていた。だが、今は防御を捨て、ミエル達はハルバードのみに魔力を注ぎ込んでいる。故に、ハルバードはその場で輝きを増し、周囲の空間を切り裂いて創世級の攻撃がミエル達の鎧に届くのを防ぎ始めた。だが、そのせいでハルバードにも負荷がかかり、更に崩壊が加速する。同時に、ミエル達の鎧もダメージが薄くなったとはいえバリアをやめたために崩壊を始めた。


「ミエル様!!」

「決めます!!!!」


 ハルバードを構え、ミエル達は球体へと突進する。空間を切り裂いて前進し、ミエル達は球体へとハルバードを振り下ろした。


「いっけええええええええええええええ!!!!」


 球体に、ハルバードが僅かにめり込んで創世級の存在を破壊し始める。周囲の球体がゆっくりと溶けていく中で、創世級はミエル達に、集中させる魔力を更に高めた。それにより、鎧の崩壊が加速する。だが、それでもミエル達はハルバードに魔力を込めるのを緩めない。


「「「「うああああああああああああああああ!!!!」」」」


 ミエル達四人の魔力が、大きな魔力となって極光のハルバードへと流れ込んだ。すると、極光のハルバードが変形する。ハルバードの先端部分にあった槍が伸びた。斧部分の刃が展開し、その中に更に光の刃を形成する。そして、つけられていた宝玉が輝きを増してハルバードの輝きを青白く変えた。


「切り裂け、極光のハルバード!!!!」


 再び持ち上げて、ミエルはハルバードを構え直す。すると、伸びていた槍部分が引っ込み、衝撃をハルバードの背面に放って極光のハルバードを創世級へと激突させた。その瞬間、創世級が青白い光に包まれて消えていく。暫くすると、周囲から光は消えて、ミエル達は何もない空間に力なく漂っていた。


「……勝った、んっすか」

「そう、みたいですね」

「この鎧も考えものですね。大きな切り札はあるものの。燃費が悪いのですぐに戦いを決めに行かなければならないのですから。長期戦に不向きというのが、これほどダメージの残る結果を導き出したのでしょうね」

「あはは。その分威力ある攻撃が出せるんだから、良いじゃないですか」

「そうですね。お蔭で生き延びられたようです」


 ベイによって魔力は無限に送られてくる。しかし、その一定時間の供給量すら上回る魔力を消費することで極光のハルバードはあの技が出せるようになっていた。それほどにあの技は魔力を使う。鎧自体も巨大であるために、カザネ達の鎧よりも維持に魔力が必要であった。故に、ミエル達は長期戦を得意としていなかった。


「さて、ベイさん達を手伝いに行きますか!!」

「そうっすね」

「行きましょう」

「はい」


 ミエル達は、その場で召喚を解除する。そして、崩壊を始める迷宮の空間から脱出した。



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