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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・二部 決戦・創世級迷宮
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雷の中に映るあやかし

 シデンが目を覚ますと、そこは家の中であった。辺りには、シデンがいないのにもかかわらず幸せそうに笑うベイ達の姿がある。そうだ。自分はあの時死んだのだ。そう、シデンは思い出したように感じた。たしかあれは、創世級迷宮内に入った瞬間、大きな紫色の蛇に食われ……。


「なるほど。そういうことですか」


 その瞬間、シデンは自身の周囲に展開している魔力の結界に流す魔力を強めた。


「……」


 シデンは、目を開ける。すると、シデンを巨大な雷の塊が見ていた。それはまるで蛇のように長く、その形をなしている。しかし、実際にはただの魔力の集合体であり、純粋な魔物ではないことがシデンには分かった。


「随分と回りくどい攻撃をするんですね。雷の創世級」


 記憶、知覚。雷はそれらを制御する。シデンは、事前に迷宮突入前にその体に結界を張って突入したが、それすら突き抜けてその攻撃はシデンを蝕んでいた。だが、シデンはすぐにその違和感に気づいた。食われた程度で結界を張っていた自身が死ぬわけがないと思ったからだ。そして案の定、結界はシデンの周りにまだあった。


「結界をすり抜けるほどの微弱な魔力を使ったのですか。なかなかに芸達者なことをしますね。でも、タネは割れましたよ。さて、次はどうします?」


 シデンの目の前に、それは現れた。それは映像だ。短く、断続的な脈絡のない映像。それが、連続した写真のように切り替わっては、写って消えていく。


「更に小さな魔力の塊を連続した電気信号として送り出し、私の頭を破壊しようということですか。それも無駄です」


 シデンが、手で払うような動作をする。すると、蛇の映像を写していた空間部分が、シデンの結界へと閉じ込められた。そして、その映像が消える。


「さて、次はなんですかね?」


 答えは力押しであった。圧倒的な質量で、結界ごとシデンを創世級は押しつぶしにかかる。あっさりと、シデンの作った結界は破壊されるが。


「フフッ」


 その瞬間、その場からシデンの姿が消えた。


「今度は、こちらの番ですね」


 迷宮内に微弱な電気信号を流し、即座にシデンの居場所を創世級は特定する。その空間目掛けて創世級がしっぽを振るうと、振るった尻尾の先がシデンの肉体があると思わしき場所に当たった瞬間、結界にその肉体の一部が閉じ込められた。


「あら、外れですね」


 創世級は、それを確認すると即座に周りの空間全てへと攻撃対象を移した。肉体に宿る魔力を使って、周囲という周囲をその魔力で紫へと染める。しかし、シデンはその中で笑っていた。


「では、続きと行きましょう」


 創世級の身体が、ゆっくりと細切れにされてシデンの作った結界へと閉じ込められていく。徐々に結界は創世級の全体を覆い、その間にも創世級は周りの空間を攻撃し尽くしたが、何も出来ないまま全ての肉体をシデンの作った結界内に閉じ込めらた。


「さて、魔力勝負と参りましょう」


 シデンの作った結界全てに、雷の魔力が流れていく。それによって、創世級の身体は相殺され、見る間に消え始めた。しかし、その中で消えていない物がある。最初に結界に閉じ込められた尾の部分の魔力である。そこに張ってあった幻影が消えると、シデンが立っていた。


「純粋な生物ではないとはいえ、思考能力を持っていたのがあなたの敗因ですね。私には、あなたの思考が読める。こん、そういうことですので」


 シデンは、ベイによってもたらされる無限の魔力をフルに使って創世級を相殺していった。細切れにされて結界に閉じ込められた創世級に為す術はない。しかし、シデンはそんな中でも歯を食いしばって魔法を作り出していた。


「さすが、創世級です。上手くいったから良いものの、相殺するだけでこの肉体的負担は……。早めに決着が付けれて、ほんとに良かったですよ。まったく」


 全ての結界が、創世級を相殺して消えていく。そして、その空間から創世級が消えた。


「さて、終わりはしましたが、本当に倒せたのでしょうか?」


 自分のように、周囲の電磁波を操って身を隠すことも出来るかもしれない。もしくは、見分けのつかない微弱な電波程度でも残っていれば復活するのかもしれない。シデンの頭の中には、そんな思考が渦巻いていた。


「……ふぅ」


 自身の鎖を周囲に振り乱し、魔力で出来た攻撃を結界内全てへと放つ。それが終わると、シデンは鎧を解いて深呼吸した。


「……うん、大丈夫ですね。では、戻りましょう」


 シデンは、そう言うとベイの元へと召喚を解除して戻っていった。


****


 創世級迷宮の外部。外では、アリー達が遠目に創世級迷宮を見ていた。


「ほぅ」


 レーチェが、すぐにそう声を漏らす。すると、創世級迷宮の風を司る結界部分が消滅した。その衝撃で、周囲に巨大な密度の魔力が流れ出す。すると、風の魔力の中から、今までいなかったはずの何かが現れた。


「……魔物が出たわね」

「うん」

「よし。総員、射程に入り次第、攻撃開始!!」

「「「「おお~~~~~~~!!!!」」」」


 アリーの合図で、創世級迷宮を囲んでいた天使たちが身構える。そして、創世級迷宮崩壊の魔力で生まれた魔物たちは、まるで創世級迷宮から逃げるようにその場から駆け出した。それ故に、周囲を取り囲んでいるアリー達に魔物たちは接近することになる。その瞬間、外部でも戦いが始まった。


「撃て~~!!」


 生み出された強大な力を持つ魔物たち目掛けて、天使たちの魔法が放たれる。しかし、中にはそれすらもものともせずに突っ込んでくる魔物さえ居た。


「おっと、駄目だよ」


 その魔物たちの足元に、赤い血が渦を巻く。その瞬間、その魔物たちの足が消し飛んだ。


「さすがね、ヒイラ」

「まぁ、このくらいはね」

「これから長くなるわよ」

「レーチェさんは、手伝ってくれないのかな?」

「わしは、もしも創世級が残っていて出てきた時に相手をしてやる。それまで休ませてもらうぞ。無駄に力を使うと、どうなるか分からんからな」

「なら仕方ないわね」

「了解」


 生まれいでる魔物たちを消しながら、アリー達は創世級迷宮を見つめる。その目の前で、創世級迷宮の結界全てにゆっくりと亀裂が入っていくのを、アリー達は見ていた。



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