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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・二部 決戦・創世級迷宮
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創世級迷宮・風

 その後も、俺達は迷宮を回った。はっきり言うと、神魔級以外はデコピンで大丈夫だった。神魔級も、一応アルティを使ったが、デコピンで大きくのけぞったりしていた。アルティを使ってからは、神魔級でも殆ど一撃で対処することが出来た。


「……なんだこれ」


 俺は、その状況に愕然とする。手加減できない。というか、手加減が手加減の領域にいない。


「これが、創世級になるということなのでしょうか」

「恐ろしいですね」

「……人には、この鎧で触れられませんね」

「……触れるか」


 俺は、地面に降りて生えている草を撫でる。流石に、この程度では草が塵以下になることも傷つくこともないな。良かった。


「触れる程度なら、ダメージにはならないな。ここが、最大の手加減か」

「触れれはすると」

「良かったですね」

「ああ、手加減できてホッとする日が来るとは思わなかったよ。じゃあ、今日はもう帰って休むか。明日は決戦だ」

「「「「はい」」」」


 皆の声を聞きながら、俺は家へと転移した。


「さて、準備はいいわね」


 翌日、俺達の家の庭にライオルさん達がやって来た。全員が、当たり前だが本気の武装をしていた。その光景を見ていると、少し緊張してくる。いかんな。こんな気持ではいけない。俺はアルティを握ると、息を吐いて精神統一した。よし、行ける。


「まず、転移して戦場まで一気に飛ぶわね。そしたら」

「私が、周りにいる創世級迷宮を管理している国の兵士たちを、転移魔法で送り返すよ」

「そして、ベイ達が突入。開戦するわ」

「ああ」


 全員が、俺の言葉を聞いて俺を見つめる。その視線は、真剣そのものだ。負けるなよ。そう言っているように俺には思えた。


「じゃあ、行きましょうか」


 アリーが、杖の先で地面を叩くと、俺達は創世級迷宮の近くへと転移した。


「うん、なんだ?」


 誰かが、俺達に気づいたらしい。国の兵士だろう。だが、その次の瞬間には、彼らはここからいなくなっていた。


「良い腕だね、ヒイラちゃん」

「練習、しましたから」


 あれだけいた兵士が、一瞬で消えた。創世級迷宮を管理する兵士たちなわけだから、はっきりというと一大戦力だ。国の防衛に必要な兵士以外、殆どがここに来ていたと言ってもいい。だが、それを一瞬でヒイラは送り返した。すごいよなぁ~、俺のお嫁さん。


「さて、ここまでは予定通りね」


 アリーが、その場で転移魔法を使う。すると、この前集まってくれた魔物たちがその場に転移してきた。


「いよいよですね」

「そうね」


 距離はあるが、見える範囲に創世級迷宮がある。昔は、この距離でもあそこからは威圧感を感じたものだ。だが、今の俺にはそんな威圧感が無い。殺せる。そう思える。


「……ベイ」

「ああ」


 アリーが、俺に抱きついてきた。それを、俺は優しく受け止める。少しだけ抱擁を交わすと、俺達はキスをした。ほんの一瞬、触れ合うだけのキスだ。でも、これでもかと愛情を込めた。


「……待ってるから」

「うん」

「信じて、待ってるから!!」

「うん」


 お互いに離れる。俺の胸の中に、熱い力が宿った気がした。ああ、帰ってくるさ。君を幸せにするために。周りを見て、俺はこの場にいる全員の顔を見る。言葉はない。でも誰もが頷き、その目で俺達を応援してくれていた。その顔を確認した後、俺は頷いて皆と共に創世級迷宮へと近づいていく。その俺達に並んで、アリーとヒイラ、そしてレーチェが途中までついてきた。


「ベイ」

「ああ」

「とうとう、ここまで来たわね」


 俺達は、その場で言葉をかわした。本当は、ここまで近づくのもアリー達には辛いはずだ。でも、アリーとヒイラは来てくれた。ここまで。ありがとう。その気持ちしか無い。


「……行ってくるよ、アリー」

「ええ。必ず帰ってきてね、ベイ、皆!!」

「「「「はい!!」」」」


 そのまま、俺達は鎧を纏って振り返らずに進む。そして、創世級迷宮の眼の前まで来た。


「カザネ、分かっているな」

「……はい」


 レムが、カザネにそういう。カザネのみ、確実に1人で戦いきらなくてはいけないからだ。そのうえで、しかも勝たなくてはいけない。俺達の全てを超えた超高速で恐らく、カザネと相手の創世級は戦う。故に、俺達の体感速度だとカザネ達の勝負がつくのは一瞬のはずだ。故に、誰も助けられない。いや、俺達がカザネと最初に合流して一体化出来れば少しは楽になるが、そうだと思わないほうが良い。1人で戦うという心構えでいたほうが良いんだ。この戦いは。


「……行くぞ」


 創世級迷宮の壁めがけて、俺達は一歩を踏み出す。そして、俺達はそれぞれ別の空間へと飛ばされた。


「チッ!!」


 カザネは、油断せずに最初からフルアクセルを使う。そして、その光景を見た。緑色をした銀河を。


「……」


 それは、風の魔力の塊だ。すなわち嵐。渦巻く風の流れ。だが、その規模が違いすぎる。それはまるでひとつの銀河。終わりのない嵐。それがやがて進路を変えて、カザネの元へとその流れを変え始めた。


「……私と同速か」


 銀河の流れはある程度緩やかに感じる。だが、それはカザネの体感速度が早いためだ。普通の人間ならば、気付きも出来ないうちに、その体を嵐によって粉砕されている。魔力によって作られた檻の中で、近づいてくるその銀河を、カザネは身構えて待った。


「……はぁああ!!!!」


 鎧をオーバーフローさせ光らせて、カザネは拳を放つ。眼の前には、大きな風の魔力の球体があった。それはまるで巨大な原子。風の魔力のみによってはじめて相殺して破壊することが出来る創世級の体の一部だ。


「くっ!!」


 それらが、数えることすら放棄したくなる量でカザネへと迫ってきている。だが、カザネはこれらを避けられない。何故なら、この球体の一つ一つが、カザネと同速度で動いているためだ。つまり、わずかにでもカザネが退くための行動を起こせば、その分、同速度で動いている相手はカザネに詰めてくる。その上、どうしても下がる時には、動作に移るためのスキができてしまう。そのスキに、相手はカザネを囲もうとするだろう。はっきりというが、カザネはこの球体に囲まれたら終わりだ。完全に囲まれた時点で、カザネは詰む。同速で動ける、巨大な魔力の塊がカザネに命中する。その時点で、カザネは負けるのだ。それほどのパワーが、この球体の一つ一つにはある。それが、少しでもカザネを囲み始める。それは、命取りでしか無い。故に、カザネはひかない。


「だが」


 攻撃動作にも、やはりスキができる。生物であるがゆえ、体を動かす動作にも僅かに相手に詰め寄られる時間が出来てしまう。それをなくすためには、単純に風の魔力を同じ姿勢で放出し続ける必要があるのだが、それでは創世級を倒すのに体感時間が多くかかってしまう。拳を振るうことで、わずかにだが、使っている魔力よりも威力が攻撃に乗っている。その分、ちゃんと相手の球体の魔力は崩れているのだ。風の魔力に打撃を乗せることで。少しだが、魔力を抑えつつ創世級の肉体を破壊できる。こちらの方が効率的だろうとカザネは考えていた。


「私には、これがあるしな」


 拳を放っていると創世級が、カザネの近くにまで迫ってくる。もう、その一部が接触しそうな距離だ。そこで、カザネは身体に力を込めた。


「ブレイクアクセル!!」

 

 カザネの鎧が、変形していく。そして、時が巻き戻り始めた。



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