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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・二部 決戦・創世級迷宮
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外角の変化

創世級迷宮に挑もうとする少し前、俺達はいつものように外角を作って訓練を行っていた。しかし、外角が完成してから大きくする段階に移行してからというもの、魔力保有量の伸びが小さくなったと俺は感じていた。最初の時に感じていた死ぬほど辛いけど、その分爆発的に魔力保有量が上がっているという実感を、俺は持てなくなっていた。


「うむむ」


 それに、この状況に慣れてきている自分がいる。今の段階でも、気を抜けばすぐにでもこの外角は崩壊するだろう。だが、その状況にすらなれて余裕を持ち始めている自分がいることに気づく。うむむなんて、前は呟く暇すらなかった。だが、今はある。これは、俺自身を追い込みきれていない証拠なのでは? ふと、そんな考えが俺の頭の中によぎった。


「……悪いペースではないな」


 遠くで、レーチェがそういったのが聞こえた。だが、なにか物足りなさそうだ。やはり、成長率が下がっているのだろう。俺が思うに、この修業では負担がかかればかかるほど成長率が上がる。ただし、俺達の負担も更に重くなる。まぁ、当たり前だよな。だが、今は外角が安定してしまっている。強い負担を前よりは得られない。その上、この外角は不思議なもので、無理に成長しようとしない。大きくなろうとしない。俺達の意思があってもだ。自分が崩壊しないように、外角自体が見極めて成長している。そんな気がする。故に、成長率が変わらない。一定の速度なんだ。だが、正直この状況が面白くない。じれる。俺達は、残り数ヶ月で飛躍的に強くならなければならない。なのに、これでいいのか? 良いわけ無いだろ。


「……上げていくぞ」


 誰にともなく、俺はそう呟いた。返事はないが、周りにいる皆は聞いているはずだ。その段階で、俺はあることを始めた。


「……は?」


 レーチェが、外角を見てそんな声を上げる。俺は、余っている魔力を外角に無理やり注ぎ込み始めた。それにより、外角の表面が光り始めている。魔力が、外角に充填されてその内部を駆け巡っているからだ。それにより、外角内部に入りきれなかった魔力が、外に溢れ出して光っているように見える。つまり、外角自体からあふれるほどに、魔力が充填された状態に俺達の外角は今なっていた。するとなぜだか俺にも分からないんだが、外角の形が変わりだした。


「オーバーフローを制御するために、形を変えおったのか!?」


 外角が、充填された魔力を消費して新しい形へと変わる。それと同時に、巨大になっていく速度が増した。


「外角自体が強化されたことで、成長率が上がりおったのか!!そんなことが出来るのか!?」


 出来てるんだから仕方ない。その時から、俺達の属性特化一体化の鎧は姿を変えた。魔力を注ぎ込むことで、今俺達の力で出せる鎧を超えた鎧となる。それが、今の俺達の鎧だ。何故形が変わったのかだが、俺なりに推測すると、成長するためにこの外角に魔力を流したからだと思う。外角は、俺達の意思すら無視して安全に巨大になろうとしていた。しかし、俺達の意思が完全に無視できるわけじゃない。つまり、外角自体も安全に大きくなる方法。それも早く成れる方法があるならばそれを実行するのだろう。それが、恐らく鎧自体の強化だったのではないかと俺は思う。自身を強化することで、安全に早く成長できる。そのために、鎧は魔力が流れてきた時点で、自身の姿を変えたんだと思う。より、成長しやすく力のある姿に。


「ふむ。魔力を無限に大気中から吸えるベイだから出来る荒業じゃな。本来なら、そんなことは出来ん。一日の使える魔力には、限りがあるからな。自然回復できるからとはいえ」


 そのまま、俺達は修行を続けた。魔力をオーバーフローさせた状態を維持して、俺達は外角を成長させていく。その結果、どうやら俺達は最終決戦前にレーチェに認められるほどに、保有魔力を上げられたようだ。


「ふむ」


 決戦の前の日、俺達は庭に集まっていた。


「アルティ」

「はい。マスター」


 俺は、アルティを握る。そして、天に向かってアルティを一閃した。次の瞬間、上空の雲に切れ目が生じる。


「……やっぱり、多くの魔力を持っているだけでこんな風になるのか」


 最近、戦闘訓練を欠かしては居ないが、筋トレはしていない。なのに、俺自体のパワーもスピードも上がっている。それも、はっきり実感できるほど前以上に。つまり、魔力保有量を上げた結果、俺の肉体は強化されたのだ。魔力ってすごいね。


「魔力を消費して、今まで以上の動きが可能になっています。それも、保有量が多いですから、細かな動作にも遠慮せず魔力を消費して大きな力をかけられます。それを、身体が認識して動いているためと思います」

「つまり、消費できる肉体の燃料が増えたから、遠慮せずに動けると?」

「まぁ、そういうことですね」

「そうか」


 アルティを手に持ったまま。皆を見つめる。全員の顔を流すように見た後、俺は目を閉じた。


「……ライオルさん達が、協力してくれることも決まった。これで、俺達に憂いは無い」

「はい」

「だが、まだ鎧の慣らしが殆ど出来ていない。そうだろ」

「レーチェが、手伝ってくれたじゃないですか?」

「いや、レーチェだけでは力を抑えることの練習は出来ない。どの程度ならどの程度の力が出るのか、俺達は知っておくべきだ」

「それは、一理ありますね」

「なので、今から慣らしをしたい」

「どうするんですか?」

「具体的には、今まで攻略した迷宮のボスをすべて回る。消えている者、敵対していないものは除く」

「なるほど」

「じゃあ、行こうか」


 俺達は、その場で一体化する。そして、風属性中級迷宮と転移した。


「懐かしい」


 そこには、久しぶりに見るライオンさんが居た。さて、どうするか。


「……グアアアアアアアアアア!!!!」


 怯えながらも、ライオンさんは飛びかかってくる。そこにデコピンをすると、ライオンさんは塵となって消えた。


「……なんだこれ」


 予想以上の光景に、言葉を失う。いや、デコピンだよ。大した技じゃない。デコピンだ。それで、普通の人よりも確実に強い魔物が消えてしまった。


「……次に行こう」


 俺達は、そのまま水属性上級迷宮へと転移した。



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