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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第ニ章・一部 仲間を探して
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日常に潜む罠

「ねぇ、ベイ君?」

「何でしょうか、マリーさん?」

「もう、違うでしょ。お義母さんと呼んで……」

「……お、お義母さん」

「うん、よし!!それで何だけど……」

「はい」

「ベイ君の、召喚魔法を見せて欲しいの」

「駄目です!!お母様!!」


 アリーが、すぐさま拒否した。何か、鬼気迫るものがある断り方だ。


「ええー、いいじゃない。お母さん、昔はちょっと魔物の研究をしていたし、ベイ君の助けにもなれると思うわ。それに、アリーだけ見たことあるなんて、ずるいじゃない」

「いえ、ダメなものは、ダメです!!」

「むぅ!!お母さんに、意地悪は良くないと思うんだけど、アリー」

「いえ、意地悪ではありません。これは、お母様のことを思ってのことです。私を信じてください!!」


 アリーは、ぎゅっとマリーさんの腕を握って、目をまっすぐに見つめていた。これは本気だ……。


「……分かったわ。アリーがそこまで言うなら。でもベイ君、気が変わったら言ってね。待ってるから……」


 そう言うとマリーさんは、泊まりの自分の部屋に戻っていった。アリーは、今のやりとりで汗をかいたらしく、額の汗を拭った。


「ふぅ……、お母様ったら……」

(別に教えても、良かったんじゃないですか、アリーさん?もうご主人様のことは、だいたい話しているんでしょう?)

「ええ、そうね、ミルク。でも、あなた達のことは、何も話してないわ……」

(むぅ、それは何故。アリーさんの家族なら、我々の家族。特にご主人様の邪魔をされる方ではないでしょうし、我々を紹介して頂いてもいいのでわ?)

「……甘いわね」


 アリーは、俺たちの泊まる部屋のベッドに腰掛ける。俺とアリーは、今日泊まる宿の一室にいる。マリーさんは、そこに様子を見に来たというところだ。アリーは、大きく息を吐いた……。


「いや、ミルク。どう考えても、合わせないほうがいいだろう」

(むぅ、ご主人様まで……)

「考えてもみろ。自分の娘と結婚するはずの男の仲間の魔物が、全部、美少女と美人なんだ!!それで、うろたえないはずがないと思う!!」


 見た目だけなら、うちのチームは、白いロリ、黒髪美人、ロリ爆乳、水色の美少女、赤い美人だ。狙ってそうなったわけではないが、見られたら、多分アリーとの結婚を考え直されるまであると思う。


(いや、でも、それぐらい健康的な男性なら、普通でわ?)

「いや、向こうがそう思うとは限らないだろう……」

「……そうね。可能性は薄いと思うけど、その可能性もあるわね」


 えっ!!薄いの!!じゃあ、アリーはなんで断ったんだ?


「いい、今から言うことは、冗談だと思って聞かないで欲しいの……」


 アリーは、そう前置きしてから話し始めた。


「先に言っておくけど、お母様はちょっと魔物の研究をしていたって言ったわよね?」

「ああ、そうだね」

「あれは嘘よ!!ちょっとどころじゃないわ……。学生時代のお母様の卒業論文は、魔物に関しての研究よ。王国魔術師としての仕事も、魔物の対策と、その特性を応用しての装備作り……。つまり、お母様は魔物研究にかけて、すごい情熱を持っているの!!」


 な、なるほど……。それでミルクたちの、話をしないわけか。


「つまり、ミルクたちがレアな魔物だから、合わせない方がいいと。そういうわけだね」

「それもあるわ!!でも、問題はもっと別のところよ……」

「へっ?」

「いい、お母様がベイの魔物を見たら、私が我慢しているにもかかわらず。隙を見つけては、ベイに会いに行くようになるでしょう。研究衝動を抑えられなくてね……」

「あ、ああ~、それは困るな……」

「お祖父様達に、バレるのも早くなるわ。でも、それだけじゃない!!お母様は、やがて1つの事実にたどり着いてしまうのよ!!」

「そ、それは?」

「ベイの回復魔法よ……」


 えっ? なんでそこで、俺の回復魔法の話になるんだ……。


「お母様のことだから、ベイには魔物を惹きつける何かがあるんだ、と思うでしょうね。そこで、こう聞くのよ。ベイ君は、人とどこか変わったところはないかしら?って……」

(ああー、そしたら私やフィー姉さんが、回復魔法の話をしてしまいますね……)

(うん……)

「そう。そしたら研究熱心なお母様は、自分で浴びてみたいと思うのよ。あの、回復魔法を……」


 フィー達全員が、ゴクリと息を飲み込む。部屋中に、緊張が走った……。


「そしたら、後は分かるわね……。お母様は、私と違って大人の女性。あんな衝動を胸で感じてしまったら、お母様は止まらず、ベイと一夜の過ちを……」


 ええええええええええええええええ!!!! そ、そ、そ、そ、それは流石に!! い、いや、ありえるのか!! あり得ちゃ、確かに駄目だな!!!!


「その時の1回で、多少はお母様も我に返るでしょう……。でも、自分の知らない未知の魔物を連れている面白い男性。優しくて、思いやりもある。しかも、その1回で完全にお母様の身体は、ベイに屈しているでしょう……。そのまま、ダメだと分かっていても、身体はベイを求めて、優しいベイはお母様を慰めて、ずるずると関係は続き……」

「いや、いや!!!!待って!!分かった!!マリーさんに、皆の話はしない!!そうしよう!!!!そうするべきだ!!!!」

「分かってくれたみたいで、嬉しいわ、ベイ。せめて、するなら私と結婚した後にしてもらわないと……」


 さらっと、怖いことを言うアリー……。いや、しないから!! 俺が怒られるよ!! 色んな人から!!!!


(分かりました!!賛成です!!絶対に、言わない方向で行きましょう!!!!)

(うん!!)

(私も、それがいいと思います、主!!)

(私も)

(あたしも!!)


 良かった。皆が言わない方向で団結してくれて……。まさか、身近に、こんな落とし穴が存在するとわ……。恐ろしい……。やはり皆のことは、アリー以外には秘密にするべきだな。俺は、改めてそう思った。



「このようなことを、続けていいのでしょうか……」

「また、その話しか……。いい加減、覚悟を決めたらどうだ?」

「ですが。仲間を、自分たちの手で減らすなど……」


 男は、今の状況を後悔しているようだ。だが、もう一人の老人は違う。


「昔、あの魔物が言っていたことは、事実であった。そんな中で、我々が生き残るには、強い力がいるのだ!!より強い、神魔級クラスより上の力がな!!お前だって分かっているだろう!!!!」

「ですが……」

「これも、我々が生き残るためだ。致し方ないこと。そう、どうしようもないのだ……」

「……」


 だからと言って、仲間を自分たちの手にかけなくともいい道があるのではないか? 皆で戦ったほうが、いいのではないか? もっと、自分が強ければ……。そう考えてしまい、男の心は晴れなかった……。



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