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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・一部 真の救世主
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超神才魔法使いアリーさん

 流れる時の中いた。その中で、慌てて私は魔力を使って流れに逆らい途中下車をする。するとそこには、大地のない宇宙が広がっていた。


「どこ、ここ?」


 過去であることには違いはないのだろうが、現在地すら分からないのでは、星を守るなどと言ってはいられない。取り敢えず、私はその場から動こうとして。


「……身体が、重い?」


 うまく体が動かなかった。それどころか、どんどんと体調が悪くなっていっている気がする。宇宙空間にいるからとかじゃなくて、私の身体が魔力の塊に置き換わったせいだ。勿論、宇宙にいるうえでの生きにくさも感じはする。だが、それは普段使っている魔法を使えばどうとでもなった。ただ、その過程で身体の調子が悪くなり始めている。


「これは、動くどころではないわね」


 宇宙空間で、1人額に汗を書きながら、私は崩れそうになる自身の体の調整を始めた。


「……」


 どれほどそうしていたのだろうか。恐らく、かなり長い時間だ。一日とか、数日とかではない気がする。一ヶ月は過ぎているかもしれない。身体が魔力でよかった。生身であるならば、とっくに死んでいるところだ。


「でも、腹は減るのよね。流石に、魔法で生み出した水だけでは、限界があるわ」


 身体が変わったとはいえ、私は人間である。生前の習慣は消えないし、ましてや食事をしたくないなんてことはない。むしろ食べたい。だが、流石にここ一ヶ月は身体の不調の調整で食べる気にならなかった。やっと、身体が落ち着いてきたところだ。


「そろそろ、動こうかしらね」


 まずは、どこに行くかから決めねばならない。よくよく辺りを見回せば、太陽がある。あの外周に、星はあるはずだ。私は、その場所を探しに魔法で進み始めた。


「……あれかしら?」


 緑のある星を見つけた。だが、不自然なところがある。その星は、巨大な建造物にいくつも地表が覆われているように見えた。


「ひょっとして、過去に飛びすぎたのかしら?」


 魔法で目を強化して、星の様子を覗き見る。そこには、私達の歴史よりも繁栄していると思わしき都市国家が複数あり、それらが争いながらも生活をしていた。


「……取り敢えず、あそこだとして。だとすると、降りるのはまずいわね。ここでいっそ研究しようかしら」


 いずれ、あそこには創世級がやってくる。そのため、あの星にいるのは危険だ。だから私は、宇宙空間で研究をすることにした。この星を救うための。


「取り敢えず、土魔法で家を作って、転移魔法で食料は星からとってきましょう」


 それから、更に月日が流れた。たまに星の様子を見てなりいきを見守っているが、そこに手を出すことを私はしない。下手なことをして、私が生まれなくなったら困るからだ。あの都市国家には、いずれ滅んでもらわなければならない。勿論、それは彼らの自業自得のうえでなのだけど。


「……来たか」


 星に、巨大な魔力の反応を感じる。間違いない、創世級だ。始まったのだ、滅びが。


「全く、迷惑な話よね」


 そう言いながら、私は研究を進めた。私は、地表の魔法国家の魔法すらも参考にしながら、大規模な召喚魔法を扱う計画を思いつく。ただ、それは非常に不確定要素の強い魔法で、正常に機能するのかも怪しい代物であった。だが、条件付だけは確実にできている核心があり、望みのものが召喚されるだろう確率は高いように私は感じている。ただ、それがどういう形で召喚されるのかすら、私には分からない。


「あとは使用する魔力を貯めて、然る後に使えば良いわけね。それまで、少し改良できるところはしておきましょう」


 だいたいのものが出来た。後は、時を待つだけ。そうして過ごしていると、星が一際大きく輝き、創世級迷宮が出来た。更にその後、ある日、私は違和感を覚えた。


「うん?」


 私の魔力が、どこかに少し引っ張られていくのだ。それを目でたどると、小さな赤ん坊に目がたどり着く。私だ。私が生まれたのだ。


「これ、私?」


 そうとしか思えなかったが、確証を持つために一年ほど待った。うん、あれは私だ。生まれたばかりの私。


「さて、それじゃあ計画を実行しようかしら」


 今まで貯めた魔力を使って、魔法陣を起動させる。正常に魔法は発動し、一つの命を地上に産み落とした。


「上手くいくかしらね。まぁ、初回だし、失敗だったらやりなおせばいいか」


 今に至るまでに、もう一度時を巻き戻す準備はできている。失敗したら、それを使えばいい。そう、私は思っていた。だが、今はそれを使う気がない。なぜかって。私の一番大切な人が、その時生まれたからだ。


「よし!!この子は、今日からベイ!!ベイ・アルフェルトだ!!」

「……ベイ・アルフェルト」


 それから七年後。地上に生まれたもう1人の私は、その光景を見た。代わり映えのしない景色に、舞い飛ぶ木の葉を。何かが私を待っている。そんな予感を感じて、私は駆け出した。違う。何かが違う。そう、私を待っている。あの景色の先で。急ぐ。急いで私は走っていく。森に入った時点で速度を緩め、ゆっくりっと私は、そこに近づいた。そして。


「……」


 私は、運命の人に出会った。


 そして時が過ぎて、今、私達はここにいる。


「ベイ」

「ああ」

「とうとう、ここまで来たわね」

「うん」

「皆も、ありがとう。こんな戦いに付き合ってくれて」

「いえ」

「造作も無いこと」

「余裕ですよアリーさん、余裕」

「いずれ、決着を付けねばならない相手でありますから」

「どっちにしろってとこかな」

「ケリを付けましょう」

「そうっすね」

「ほんと、ここまで来たんですよね。私達」

「まさか、この数年でここまでに成れるとは」

「こん。誰も思ってなかったでしょう」

「私も、考えてもみなかった。まさか私が、世界を救うお手伝いをすることになるなんて」

「外は任せて。ジャルクと私が、なんとかする!!」

「クァ~!!」

「私も残るよ。レムさんの足手まといには、なりたくないからな」

「……皆、ありがとう」


 私の前には、今、大きな力が集まっている。私の愛する人。そして、その人が集めた大切な仲間たちだ。きっと、私はもう時を巻き戻すことはないだろう。彼女たちなら、彼ならばこの世界を救ってくれる。私は、心でそう確信していた。


「……行ってくるよ、アリー」

「ええ。必ず帰ってきてね、ベイ、皆!!」

「「「「はい!!」」」」


 フィーとミルクのみをうちに戻して、ベイは一体化する。そして、残った皆も鎧を展開した。後ろを振り向き、ロロとジャルク、ローリィを残して全員が歩み始める。その先には、創世級迷宮が存在していた。


「勝ってみせろ、ベイ」

「ベイ君」

「絶対勝つわ、ベイ達だもの」


 長かった私の旅も、今ここで決着を迎える。そのためにもお願い、だから必ず帰ってきてね。私と私は、愛するベイを見送りながら、胸を押さえて祈りを捧げた。



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