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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・一部 真の救世主
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これまでのこと

「ええ、一日だけお借りしたいんですが」

「まぁ、長期休暇中だから、貸すのは構わないが。いったい、何に使うんだね?」

「実は、迷宮を探索しようと思ってまして、その決起集会をと」

「迷宮探索の決起集会か。それならもっと、小さな部屋のほうが良いのではないかね?学校の屋外会場では、広すぎると思うのだが」

「いえ、かなりの人が来るんです。何しろ、とても難しい迷宮に行きますので」

「とても難しい迷宮ねぇ。……いや、生徒が挑戦しようとしているんだ。私としては、快く施設を貸そう。ただし、使った後のゴミ拾いくらいはしてくれるね?」

「はい、勿論です。では、その日お借りします」

「……アリー君」

「はい」

「どこの迷宮なのかね?」

「そうですね。……創世級迷宮。なんて、言って信じて頂けますか、校長先生?」

「……行き先は、秘密ということか」

「はい。私達の大事な戦いの舞台ですので。それでは、失礼致します」

「うむ」


 そう言って、アリーは校長室を出て、転移した。


「取れたわよ、会場」

「何日後?」

「一週間後」

「……一週間後かぁ」

「取り敢えず、今から声をかけて回るとしましょうか」

「そうだね」


 それから、瞬く間に時間が過ぎて一週間後になった。ウィルクス魔術・戦士学校の屋外施設。その会場には、多くの人々が座っていた。しかし、その背中には大きな白い羽がついている。彼らは魔物だ。天使と呼ばれている。そして、その中に青い燃えているような髪をした女性たちも居た。何人かの天使の傍らには、相棒となる魔物も座っている。椅子に座れない大きさの者は、通路に寝そべっていた。


「……」

「どうした、ローリィ?」

「ベイ・アルフェルト。私は、感動しているよ。この光景に」

「そうか。俺は、なんだか緊張してきた」


 会場の中心部。そこは、闘技大会が開かれるほど広く場所が取られており、その中心部にベイ達はいた。フィー達も、召喚されてベイを中心に横並びになって会場の中央に立ち尽くしている。しかも私服ではなく、全員が戦闘服を着た状態で立っていた。


「……遅いわね。ライアさん達」

「全員集めるのに、手間取ってるのかな?」

「ロデ、今のうちに拡声器のチェックをしときましょう。準備はいい?」

「OKで~す」

「了解。あ~、テストテスト。全員揃うまでもう暫くかかります。今少し座ってお待ち下さい」

「暖房の方は、いい感じかな?」

「良いんじゃない?皆、寝ては居ないみたいだし」

「あそこの青髪の人たちのとこは、暑そうですけどね」

「天使たちが、離れて座ってるもんね。まぁ、そうもなるわよ。あの見た目だし」


 そうアリーが話していると、会場中央にライア達が転移して来た。


「お待ったせ~!!」

「えっと、今日は何の用なんでしょうか?」

「……おいおい、ここにいるのは、全員魔物か?」

「何の冗談だ?」

「……座るぞ」

「お祖父様、しかし!!」

「良いから、良いから。座ろうね」

「アリー!!これは、どうなっているんだ~!?」

「お祖父様!!説明は後でしますから、今は、会場の席へ座って下さい!!話が出来ません!!」

「ぐっ、わ、分かった」


 ライアに連れてこられたライオル、ガンドロス、ジーン、ガーノ、シアとシュアは席に着く。そして、自然とその視線は、中央にいるベイ達に向けられた。


「こほん。それでは、全員が集まりました。只今より、創世級迷宮、攻略の決起集会を行いたいと思います!!!!」

「「「「……」」」」


 アリーの話口調とは別に、会場の雰囲気は、一気にその言葉で重い雰囲気へと変わった。


「創世級迷宮を」

「攻略するだと?」

「……やはりか」


 ライオルのみが、そう言って会場中央のローリィを見つめる。ローリィは、その視線に笑みを返した。


「創世級迷宮を、攻略だと!?そんな、馬鹿げた話をするのか!!出来もしないのに!!!!」

「お静かに。まずは、順を追って説明いたしましょう。おおよそ考えられないことかもしれませんが、この星は、一度創世級迷宮の崩壊によって滅びました」

「「「「!?」」」」


 アリーの言葉に、誰もが頭に疑問符を浮かべる。だが、誰も何も喋らなかった。そのまま、アリーは話を続ける。


「その最中、創世級の攻撃によって破壊される星を復活させた者がいます。それは、私とヒイラ・アルフェルトです。正確には、今の私達ではありません。未来の私達です。もっとも、それも今となっては、過去の話なのですが」

「未来の、アリーだと?」

「アリーさんは、何を言っているんですか?」

「理解できないかもしれませんが、事実です。私とヒイラは、時を巻き戻して創世級迷宮の崩壊を直したのです。そして、この星も。その結果、私達は、今日までまた生きてくることが出来ました」

「時を、巻き戻すだと。有り得ない、そんな魔法……」

「ガーノの爺さんは、頭が固いからねぇ~」

「ライア、お前には分かるのか?」

「分かるわけないよ。ただね、アリーちゃん達が嘘をついていないのだけは分かる」

「……」


 ライアは、そう言ってアリーに視線を向けて微笑んだ。


「ですが、世界は再び滅びの時を迎えようとしています。けれども皆さん、安心して下さい。この星には、すでに救世主がいます!!」

「救世主?」

「まさか」

「皆さん、会場の中央をご覧下さい。そう、ベイの元に集まった仲間たち。いえ、ベイ・アルフェルト。彼こそが、救世主なのです!!!!」

「……ちょっと、お腹痛くなってきた」

「ご主人様、頑張って下さい!!」

「マスター、ファイト~!!」


 ベイは、アリーからかけられるプレッシャーに、表情を引きつらせていた。


「ベイ・アルフェルトが、救世主だと!?」

「どういうこと!?」

「やっぱり、アリーさんが好きになった人だ。そういうことだったんだね、ベイ君」


 シアは、1人で納得した顔をしていた。


「ベイ・アルフェルト。彼こそが、未来に存在した私が召喚した、私の運命の人なのです!!本来、この星の歴史には、彼は生まれません。しかし、彼は私の召喚魔法によって、この世に生を受けたのです!!そう、この星を救うために!!!!」


 その声を聞いた瞬間、会場が一瞬の静寂に満たされた。しかし、どこからともなく天使たちから拍手が巻き起こる。徐々に大きくなっていく拍手の中で、ベイのみがいたたまれない顔で、その場に立ち尽くしていた。

 

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