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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・一部 真の救世主
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ニーナ・シュテルン ~広範囲対象選択しき~

「……」


 淡い光が、周囲を明るく染めている。その光は、部屋全体を包んで広がり。その光景を、アリーとヒイラが眺めていた。


「……今、何時間?」

「朝からだから、そろそろ3時間だね」

「じゃあ、一旦休憩にしましょうか」

「……はい」


 そう言って、ニーナは魔法を止めた。水色の光が、周囲から消えていく。


「これだけあれば、いいんじゃない。後は威力ね」

「社宅の女性冒険者の訓練で使ってみたらどうかなぁ。それで、だいたいの威力が分かるかも」

「そうね。それで行きましょう。昼からは、あっちに合流してみましょうか」

「はい。分かりました」


 ニーナが今使っていた魔法は、範囲回復魔法である。光が広がっている中にいる任意の対象に回復をかけ続けることが出来る魔法だ。この魔法の利点は、範囲内の対象を把握しやすいように、周囲に魔法の発動範囲を広げていることである。対象を敵ではなく味方のみにするために、あえて魔法発動範囲を大きく広げることで、その回復対象選択を確実に味方のみに行えるようにしている。光が広がっている部分は、敵味方の識別をする魔法。そして、ニーナが回復を送る相手がわかる魔法になっている。


「後は、回復人数を増やすとどれだけ保つかよね」

「回復度合いにもよるんじゃない?」

「そこは難しいわね。ニーナの今後の魔力量の伸び次第かしら」

「頑張ります!!」


 ニーナは、拳を握ってそう答える。その姿は、アリー達には頼もしく見えた。


「しかし、やっと形になってきたわね。これなら、長時間戦闘でも誰一人かけることなく戦い続けられそう」

「疲れたから一旦下がるってことが無くなりそうだしね」

「持てるポテンシャルを、常に最高の状態で出し切る。それが、私達には必要だと思うのよね。そう考えると、ニーナの発案したこの魔法は、よく効くと思うわ。決戦で、必ず役立つでしょうね」

「少しでも、お力になれれば良いのですが」

「なるわよ。ニーナがこの半年、頑張って磨いてきた魔法じゃない。役に立たないわけがないわよ」

「一通りの状態異常回復も覚えたしね。ニーナちゃんは凄いよ。これなら、戦線が後退することもない。皆、思う存分戦える」

「……いえ、まだまだです。常に万全が維持できるよう、これからも練習を頑張ります」


 ニーナの理想は、常に全員が無傷で居ることだ。切られようと、腕が無くなろうと、すぐに傷がふさがってなくなった部分ももとに戻っている。それがニーナの理想だ。そんなもの、ベイやアリーでないと難しいだろう。だが、ニーナはそれを求めている。大切な仲間を守るために、自分の使える力として。


「それじゃあ、もうちょっと魔法の開発も詰めましょうか。いいヒイラ?」

「うん。まだこの広範囲対象選択は、軽く出来る気がするんだよね」

「……あの、良いんですか?お二人の練習時間を奪うようで、心苦しいのですけど」

「良いのよ」

「私達は、外角を作ると数分で倒れちゃうしね。むしろ、それをするまでに出来ることだから、邪魔にはならないよ」

「……ありがとうございます」

「良いって、良いって。それじゃあアリーちゃん。どこをいじる?」

「私的には、展開する魔法陣部分を」

「……あの」

「うん、何かな?」


 ヒイラの声に、ニーナはアリーをちらっと見る。


「ヒイラさんは、血の鎧を持っているのは知っています。あの、アリーさんは、そういう物を作られなくて良いんですか?」

「……ああ~、そういう」


 ニーナは、思った疑問を口にした。ニーナは、見たことがない。ヒイラの血の鎧は見たことがある。それを、ヒイラが練習していたのも知っている。しかし、アリーは皆の魔法を手伝うだけで、自身のそういった強化魔法を作っていない。作ったところを見ていない。それ故に、ニーナは疑問に思った。だけれども、心配はしていない。だって、それがアリー・アルフェルトなのだから。


「あるわよ。皆には、見せてないけどね」

「……やっぱり、そうなんですね」

「私も、一部しか見てないんだよ。でもね、反則だと思うなぁ~」

「反則、ですか?」

「うん、反則」

「そうかしら。長年、宇宙で1人研究してたんだもの。それが実った結果じゃない。反則じゃないわよ」

「宇宙?」

「ああ、もう1人のアリーちゃんの話だよ。アリーちゃんは、今二人いて私達を手伝いながら魔法を作ってたんだぁ~」

「そういうこと。見る?ここでは、一部しか使えないけど」

「えっと、良いんでしょうか?」

「良いわよ。どうせ、決戦では使うんだし。知っといたほうが、驚かなくて済むわ」


 そういって、アリーは手のひらを広げる。すると、その手のひらに小さな黒っぽい球体が生まれた。それを見ていると、ニーナはそれに吸い込まれるような感覚を受ける。それは、まるで。


「はい。おしまい」


 そういうと、アリーはそれを消した。それと同時に、ニーナがふらっと身体のバランスを崩す。そして、その場に座り込んだ。


「まぁ、そうなるよね」

「あれって」

「それは、最終決戦のお楽しみってことにしときましょうか。まぁ、どーんとニーナは回復に集中しなさい。ベイはその場に居ないけど、安心していいわよ」


 そういうと、アリーは立ち上がる。


「後ろには、この私がついているんだから」


 その言葉は、ニーナにとってこれ以上無い最高の安心する言葉のように思えた。もっとも、ベイがいない時であればの話だが。


「この今のアリーちゃんでも、創世級は相手に出来ないんだよねぇ」

「魔力の総量が圧倒的に違うらしいから、仕方ないわね。最終的にはそういうことになるってことよ。純粋な実力での殴り合いみたいな?」

「高度すぎて技術を手放した状態に近い戦いになるってことかな。それでやっと戦うレベルになったと言えると。やっぱり、創世級の方が反則だよね」

「そうねぇ~」


 この星の人類史において、この2人にかなう魔法使いはいないだろう。だが、それでも創世級とは戦いにならない。そんな創世級から、力が届くのではないかと笑みを向けられているもの達がいる。それが、ベイ達。召喚魔法という絆で結ばれたチームだ。


「……」


 そんなベイたちを、アリーは窓から眺める。


「……そりゃあ、いくら全員で相手をしても、ベイを満足させられないわけよねぇ~」


 そう、ぼそっとアリーは言った。


「あれって、魔力関係あるのかな?」

「そりゃそうでしょう。普通の人間が、あそこまでになる?いくら鍛えてても、無理だと思うんだけど」

「そ、そうなんですか!?」

「理論的に考えてね。私も、他を見る気がないから知らないけど、多分あってるわ」

「……体力づくりもしようか。焼け石に水かもしれないけど」

「良いわね。ニーナの魔法をかけながら走る?いいと思うけど」

「……私も、走りながら魔法を使います!!」

「じゃあ、決まりね」

「午後はそれで」

「はい!!」


 3人は、ガッチリと腕を握り合って握手した。



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