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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・一部 真の救世主
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レラ・サルバノ ~覚悟で歩む剣聖道~

「ほぉ……」


 その日、レーチェは感心したようにそう呟いた。眼の前には、外角を作って修行するベイ達がいる。その姿を見て、レーチェは楽しそうに唇を曲げて笑みを作った。


「まさか、ここまで強くなるとはのう」


 今、時刻は朝方である。であるのにもかかわらず、ベイ達は外角を作る修行をしている。ここ最近、ベイ達の外角の形成可能時間は長くなっていった。最初こそ、数分やれば倒れていたものが、今や朝からやっても夕方まで修業を続けてやっと膝をつくレベルにまでその実力は達している。それには、理由があった。


「やはり、外角が鎧であるからか」


 本来、外角とは己の肉体そのものの映し身である。それを巨大化したものだ。しかし、ベイの外角は違う。皆と繋がっていて、一つであるという証、形成した一体化の鎧である。そこに、何の違いがあるのか。それは、己自身の外角が自分の強化を前提としていないのに対して、ベイの外角である鎧は強化を前提としている。そこに大きな違いがある。


「鎧自体が、より強くなろうと負担を軽くしながら次の成長のための制御をしておる。外角でありながらじゃ。普通なら、一般的な身体の外角を作る場合、次に進むのを外角自体が拒否する。これ以上でかくする必要はない。なぜなら、生きる上でこれ以上必要ない力だからと、勝手に外角が生命本能で解釈するからじゃ。故に、負担が軽くなることはない。進むに連れて、巨大になるに連れて負担があがる。そういうものなのじゃが」


 そう語るレーチェの目の前には、ベイ達がいる。


「ベイ達の外角は、元より強者と戦うために作られたものと言ってよい。その上を目指す思考に止まりはなく。創世級を外角自体が倒すと見据えている。故に、負担を考えて外角自体が強くなることを手助けしておる。それ故に成長が早い。これはもしかすると」


 レーチェは、自身の首に手を当てる。


「届くかもしれんな。ベイ達一人ひとりが、我ら創世級に」


 そう言うと、レーチェはニヤリと笑った。


*****


「え~~、これから訓練をします!!」

「「「「は~~い」」」」


 アルフェルト商会の社宅。そこの地下には、広い空間が作られていて訓練場になっていた。そこで、多くの女性冒険者相手に、レラが講習を行っている。


「えっと、まずは皆さんの実力を見せていただきたいので、私と練習試合をしましょう。それでは、どなたからでも良いので、この木で作った武器を手に挑んできて下さい。あ、パーティーでも構いませんよ。難しいほうが、私も練習になるので」

「……あんなに若いのに、そんなに自信があるのか」

「試してやろうじゃないか」


 そう言って、ナークが武器を手に取り前に出る。その光景を、2本の木で出来た剣を持って、レラは出迎えた。


「さぁ、始めましょうか」


 レラの目が、鋭くなる。そして、緑のポニーテールを揺らして、レラが消えた。


 ~30分後~


「次、誰か居ますかね?」

「……」


 レラ以外の女性冒険者は、全て体育座りをして座っている。全員がレラに負けたのだ。しかも、全員が無傷。首に木の剣を押し当てられて全員が負けを認めた。レラ・サルバノは速すぎる。一般的な冒険者の前では。ただし、ナークはこの中でも飛び抜けて実力が高い。だが、そのナークでさえもレラ相手では手も足も出なかった。だが、辛うじて動きには反応できる。訓練を重ねれば、すぐに打ち合えるようになるかもしれない。もっとも、レラの受け流しに合わせて攻撃ができるなら、ではあるが。


「あの、お若いのになんで、そんなに強いんでしょうか?」


 ミセが、レラにそう聞く。


「そうですね。私の家が剣の道場みたいなものでして、父から剣を教わっていました。ですが、そこで私は伸び悩んだのです。学生になるまで、いや、学生になってからも私は、あてもなく剣を振るってきました。でも、ある日彼にあって強さが変わりました。それが、ベイ君です。強い彼を見て、また、彼のために強くなろうとする友人を見て、私は高みへと踏み出せなかった一歩を踏み出せるようになりました。そこからは、少しずつですが歩みを進めて、今はここに居ます。そんな感じですかね」

「えっと、つまり……」

「つまりですね、恥ずかしいんですけど……」


 そう言うと、レラはポニーテールを撫でて、顔を赤く染めた。


「強くなる理由を見つけたから、ですね。彼に追いつきたい。近くに居たい。彼に誇れる自分でありたい。そう思ったせいだと思います。だから、私は諦めずにまだ剣を振っています。それが答えですかね」

「……恋か」

「……あはは、そうともいいます。彼の学校の先輩として、っていうのもありますけどね」


 そう言って、レラは再び剣を構える。


「皆さんの実力を把握させて頂きました。どうやら皆さんは、受け流しを主体とした流派と戦ったことが無いみたいですね。それに、素早く動き回る相手にも不慣れに感じます」

「いや、あの速度を人間が出せるとは思わないだろ。普通」

「まだ、私は速く出来ますよ」

「まじかよ!!」

「ええ。決めつけず、練習してみましょう。私の攻撃くらい、皆さんにならいずれ見切れるようになります。でも、私もまだまだ強くなると思うので、簡単ではありませんよ。それでは、今日から始めていきましょうか。早い敵に対応できれば、生存率がぐっと上ります。私が出来ることは、全て皆さんに教えましょう。まだ若輩者ですが、よろしくお願い致します」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「「「「よろしくお願いします」」」」


 女性冒険者たちの返事に、レラはニコリと微笑んだ。


「……私、こんなに覚悟は決まってるのに、ベイくんへのアピールは、あまり出来てない気がするんだよねぇ。私、もしかしてパパに似てきてるんじゃないのかなぁ~。剣で家族を守るみたいな?……今度から、ベイ君と出来るだけ一緒にいる機会増やそう」


 小さくそう呟くと、レラは冒険者たちに向き直る。そして、自身の流派の基本原理から説明を始めた。


 

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