表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・一部 真の救世主
560/632

女性冒険者の皆さん ~一年越しに落ちる~

「さて、準備も整ったわけですが」

「なによ、一等地じゃない」

「そうですよ、アリーさん。事前準備を、今回はバッチリしておきました。このために作っていただいたレーチェさんの野菜の貯蔵も完璧です。そして、例のスペースも確保済み」

「それで、後は開始を待つのみと」

「予定だと、そろそろですかね」


 ロデが、目線を中央広場へと向ける。すると、その中央で一人の女性が高らかに声を上げた。


「お前ら、お待ちかねの時間、熊狩だああああああああああ!!!!」

「「「「うわああああああああああああああああ!!!!」」」」


 女性の声に歓声が上がる。その声を聴くと、ロデ達は店に入っていった。


「ミズキさん、始まりましたので、開店致します」

「うむ」

「ミズキが、料理をカウンターに出して、後はセルフで持ち運んで食べてもらう形式なのね」

「そうです。ウエイトレスをなくすことで、トラブルも減ります。食い逃げ防止に、お金の支払はご注文時にしました。まぁ、逃げてもミズキさんに八つ裂きにされるだけでしょうが」

「それはそうね」

「さて、裏のベイくんの様子も見てきますか。アリーさんは、皆のいる別室に向かって下さい。こちらの従業員専用通路からいけます」

「分かったわ」


 アリーと別れ、ロデは調理場へと向かう。そして、その裏のドアを開けた。


「準備はいかがですか、ベイくん?」

「また、やるのかよ!!」

「そうですよ。昨年来た方々が、がっかりするでしょうからね。ただし、昨年来た方のみお通しします。だから、数は限られてますので、気にせずこなして下さい」

「……はぁ~」

「では、少し待ってて下さいね」


 そう言って、ロデは部屋を出ていった。


「はぁ~。気が重いな」


 そう言って、ベイは持ってきていた牛乳を飲み干す。すると、ベイは目を見開いて飲んだ牛乳の注がれたコップを見つめ直した。


「なんで、さっきまでミルクのだったのに。味が、レーチェの……」


 その事実に、ベイは顔を押さえて震える。そして、すっとその場で立ち上がった。


「……ムラムラするなぁ」


 ベイは、そう呟いた。


*****


「無いですね」

「無いね」


 女性冒険者の集団が、暗い路地に佇んでいる。その視線は、一年前にあったはずの店を探して泳いでいた。


「……明日、また来よう」

「今年は、無いんでしょうか」

「レビン、その可能性もある。ま、なかったら仕方ない。諦めるしか無いさ」

「そんな!!この日を楽しみに、一年頑張ってきたのに!!」

「……私もさ。でもね、どうしようもないことってあるんだよ」

「……お前達。何を探している?」


 不意に、聞き慣れない声が路地裏に響いた。その声の主が、どこに居るのか彼女たちには分からない。


「誰だ!?」

「答えろ。何を探していると聞いた。答えないならば、これ以上聞く気はない」

「……マッサージ屋を探している。去年、ここにあった屋台だ」

「……中央通りの野菜料理専門店に顔を出せ。そこで、荷物を預かってくれといい。マッサージを受けたいものだけ、野菜料理を二品注文しろ。言っておくが、他の者にこの事を教えた場合、それ以降のマッサージは二度と受けられない。そう思え」

「それは、マッサージを受けられるってことか!!」


 女性冒険者は聞き返す。しかし、もう二度と声が帰ってくることはなかった。


「ナークさん、どうしましょうか?」

「……藁にもすがるって感じだが、いってみるとしようか」

「は、はい!!」


 彼女たちは歩き出す。その姿を、ミズキは上から眺めていた。


*****


「アリー、会いたいよ~。君を、いますぐ抱きしめたいんだ。アリー、聞いてるんだろう。来てくれよ。愛してるんだ。君を抱きしめたい」


 そう言って、ベイは先程からアリーを呼んでいる。その声を、別室で聞いていたアリーは、その場の全員に取り押さえられていた。


「アリーさん、これは罠です!!行ったら、この部屋がバレますし、アリーさんが大変なことになりますよ!!」

「離して!!ベイが呼んでいるの!!私が行かないと、行けないの!!!!」

「アリーちゃん!!落ち着いて!!ここは堪えて!!堪えて!!」

「ヒイラ、離して~!!ベイが呼んでいるの!!私を、呼んでいるのよ~!!!!」

「……アリーさん、そろそろお客が来ますよ」

「……仕方ないわね。様子をうかがうとしましょう」

「そうです。何のためにこのセッティングをしたと思ってるんですか。前回の事件を踏まえて、その威力を客観的に私達が見るためでしょう。それで、真っ先にアリーさんに落ちられては困ります」

「でも、ベイが」

「それは分かりますから、今は我慢ですよ。我慢」

「……んん」


 しょんぼりした顔をして、アリーは部屋を写す魔法モニターを見つめた。


「ベイ様。お客様ですよ」

「……分かった」

 

 ロザリオが、お客を部屋へと招き入れると出ていく。その女性は、ベイを見つめると丁寧にお辞儀をした。


「お、お久しぶりです!!ミセです。お、覚えていらっしゃいますか?」

「ああ、以前新米冒険者をしてらした」

「は、はい!!その、ミセです。また、お会いできましたね」


 そう言うと、ミセはベイに抱きついた。


「……それでミセさん。今日は、どういった風にしましょうか?」

「……えっと。おまかせで、お願いできますか?」

「かしこまりました」


 そう言うと、ベイはミセをベッドに寝かせた。


 ~それから十分後~


「うわぁ~~」


 そう言って、アリーはモニターを見ていた。


「血行が良くなりますからね、重点的にここはほぐしましょう」

「少し暑いでしょうか?脱がれてもいいですよ」

「そうそう。体をそらして、伸ばしましょう。体の歪みが消えますよ」


 そう言って、至って普通のマッサージをベイは続ける。だが、それを受けているミセの方の表情は、普通ではない。よだれを垂らして、完全にほうけてしまっている。今、ミセはベイに何を言われても従うだろう。そう思わせるほど、ミセの態度はベイに対して献身的なものになっていた。


「はぁ~、はぁ~」

「お疲れですか?」

「いえ、まだ、らいじょうぶです」

「そうですか。では、もう少し強く揉んでいきますね」

「……はい」

「うわぁ~~」


 数分後、気絶したミセは、その場からロザリオによって運び出された。その途中、ベイがロザリオの腕を掴んだのだが。次のお客がすぐにくるというので、ベイは渋々ロザリオの腕を離した。


「うわぁ~~」

「……これ程とは」

「確かに、しておるのはただのマッサージであった。しかし、あの雰囲気は何じゃ?何故、あそこまでおなごがほうけておる。わしらの時とは違って、ただのマッサージじゃぞ。全く意味が分からん。だが、一つ言えることがある」

「なんですか、レーチェさん?」

「これ、あとでわしらがこのベイを受け止めるってことじゃろ?」

「……そうですね」

「死ぬんじゃないか?」

「……無いと言えないのが、なんとも」


 こうして、多くの犠牲者を出しつつ一日目が過ぎていていく。そして、そのすべての犠牲者を、サイフェルムで働くアルフェルト商会の人員として、ロデは雇うことに成功した。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ