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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・一部 真の救世主
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ローリィ・アルフェルト ~庭先で喋る2人~

「はぁ~~、お茶が美味い」

「何を爺くさいことを言ってやがる」

「……君が言うかね」


 黒い浮遊する円盤の中で、お茶を飲みながらローリィがそういう。その隣で、ライオルが椅子に座ってお茶を飲んでいた。


「……まぁ、容姿的には、俺のほうが爺かもしれない」

「そうだろう」

「だがな、俺はそんな風には言わない」

「じゃあ、どう言うんだ?」

「……美味いな。これだけだ」

「……いや、容姿がそもそも爺だからな、君は。言い方が違っても、爺くさいと思うぞ」

「はいはい、そうですか」


 そう言って、ライオルはお茶を飲み干した。


「しかし」

「うん?」

「ここの訓練はすげぇな」

「そうだろう」


 ライオルは、訓練するベイたちを眺めてそういった。アルフェルト家の庭で、ベイ達は近所を気にすることなく模擬戦をしている。これには、アリーが開発した結界の効果が関係しており、ベイ達の戦闘音どころか、戦闘風景すら隣に住んでいるノービス達にでさえ見えていない。それ程に高度な隠蔽結界を、アリーは作り出していた。


「周囲の映像を、違和感なく投影するのに苦労したわね」

「三ヶ月調整にかかったね」


 と、本人たちは言っていた。


「内緒だぞ。ライオル」

「分かってる。こんなもの、国に見つかれば一発でお買い上げだ」

「そう言うことだ。君だから、それでも特別に招かせてもらったがな」

「……よう、クローリ」

「ライオル。今の私は、ローリィだ。で、なんだ?」

「なんで、あんなにも皆必死で訓練してやがるんだ?」

「……」

「俺には分からねぇ。まるで、全員がこの先にとてつもない脅威でもあるかのように真剣だ。俺も、それらしいのに少し心当たりがある。だが、確証はない。しかも、それと戦うなど不可能に近いかもしれないからな。だが、あの姿を見ているとそうとしか思えん」

「……私の口からは、今はなんとも言えないな」

「そうか」


 ローリィは、そう言うとお茶を一口飲んだ。


「だが、君に言えることがある」

「ほう?」

「助けが、いるかも知れない」

「お前達がか?」

「ああ、そうだ」

「……そうか」


 ライオルは、その言葉に遠くを見つめた。


「そういえば、君の方はどうなんだ?弟子の育成は?」

「ああ、シアとシュアのことか。まぁ、ぼちぼちだな。シアは、大抵のやつには負けないだろう。シュアは、まだまだといったところだな」

「ふむ。神魔級相手に、戦えるか?」

「……いつまでにだ」

「年内。もしくは、来年頭までにだ」

「……無理だな。シアでも、単独で撃破は難しいだろう」

「単独でなくてもいいぞ」

「そうか。覚えておこう」

「うん」


 ローリィは、そう言うと円盤の中においていた木製のボウルをライオルに渡した。


「食べるか?」

「野菜か、これは?」

「ああ。芋を揚げたものに、塩をかけたものだ」

「これはまた、えらく薄く切ったな」

「食感が面白いぞ。私のお気に入りだ」

「どれどれ」


 ライオルは、そう言ってポテトチップスを口に含む。そして、ゆっくりとかみ終えると飲み込んだ。


「悪くない」

「いや、それだけか。もっとあるだろう。美味すぎる!!とか、美味しすぎいいいいい!!とか」

「いや、確かにそうかも知れない。普通の芋の何倍も美味いんだが、これは本当に俺の知っている芋か?芋じゃないんじゃないか?」

「ああ、なるほど。先入観ゆえに混乱しているんだな。勿論、芋だとも。ただし、ベイ・アルフェルトの作ったな!!」

「ベイ君が?」

「ああ、そうだ!!その、創世、じゃなくて、忌々しいあの女が作った種を使ったわけではあるが。たしかにこれは、ベイ・アルフェルトが育てた芋だ!!どうだ、凄いだろう!!」

「ああ、これは凄い。たしかに凄い」

「おい。全部食べるな。私のだぞ」

「おっと、こりゃすまん。つい手が止まらなくなってた」

「分かる。だが、そこまでだぞ。私のおやつだからな」

「……あの魔王が、おやつだと。しかも、サイフェルムの領内で」

「今は、ここが私の住処だ。何も問題あるまい」

「はぁ~~、俺には問題なんだよ。俺の中では」


 そう言ってライオルは、手で顔を覆った。


「実はな、もう一つ気になることがある」

「なんだ?」

「あれはなんだ?」


 そう言って、ライオルはレーチェに視線を向けた。


「……ただの女の子だろ」

「分かりやすい嘘をつくな」

「何故そう思う」

「眼の前で激しい訓練をしているベイくん達よりも、異常に俺の中の何かが危険信号を鳴らしているからだ」

「……胸がでかいからか?」

「下手なごまかしはやめろ」

「冗談を許容してもらいたいところであったが、まぁ、知らないほうがいい」

「……そうか」

「少なくとも、今は脅威に成り得ないさ」

「今は、ときたか」

「ああ。今はだ」


 ライオルは、その話を聞くとレーチェから目線をそらした。


「やはり、ここに来るといい刺激になる」

「そうだろう。強くなりたい。そう思うよな」

「ああ。負けてられない。そんな気持ちが沸き上がってくる。よし、帰って俺も訓練するか」


 そう言って、ライオルは立ち上がった。


「私と、訓練していかないのか?」

「それは無理だ。手加減できそうにない」

「……そうか」

「ああ。俺の全力を、一回受け止めたんだからな。お前は」

「今は、あの姿ではないのだが」

「変わらねぇよ。お前の、俺の中での危険レベルはな」

「そうか」

「ああ、そうだ」


 ライオルは、そう言って歩き出す。


「ライオル」

「おう」

「……決戦は近いぞ」

「……鍛え直しってことだな」

「ああ、そうしてくれ」

「お前がそういうってことは、サボってる暇はなさそうだ」

「……」

「また来るぜ」


 そう言って、ライオルは結界を出て帰っていった。


「君はやはり、頼もしい男だよ、ライオル。いや、勇者よ」


 ローリィは、去りゆくライオルを見送ると、お茶を一口すすった。



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