ヒイラ・スペリオ ~降臨!!鮮血の超英雄!!~
そして、その時がやってきた。季節は夏に入ろうとし、闘技大会の開催日時が決まる。その間に、ベイ達の修行内容は変化していた。ベイ達の作っていた外殻が、完全にその姿を完成させたのだ。だが、それで修行は終わりではない。
「次は、分かるじゃろう」
「これを、更に巨大にするんだろ」
「そうじゃ」
ベイ達は、外殻のさらなる巨大化に修行内容を変化させていた。少しずつ、時間をかけてベイ達は外殻を巨大化させていく。それにより、更にベイ達の魔力量は強化されていった。
「ほい。ローリィの改造も完了っと」
「むっ、何が変わったんだ?」
「モードチェンジ機能よ。円盤形態と鎧形態。使い分け出来るようにしといたわ。あと、レーザー砲部分を背中に可変して回せるようにしといたから、これで近接戦闘も可能になるわね。砲が邪魔になることもない」
「なるほど。ありがたい」
「近接武器は、銃剣っていうのかしら。そんな感じのにしといたから、今度試しておいて」
「了解した」
「さて、これで当面の予定は終了したわね」
「で、これからはどうするの、アリーちゃん?」
「ヒイラ、私達もあれ、やるわよ」
そう言って、アリーは庭を指さした。
「ああ~、ベイくん達がやってるやつ」
「そ。魔力量を増やす。私達もね」
「決戦に向けてって感じかな。でも、多分ベイくん達の手伝いは出来ないね」
「そうね。でも、力があれば外で待てるわ。それも、少しでも近くでね」
「なるほど。それは、やる価値があるね」
「でしょ」
ヒイラに、アリーはニコリと微笑んだ。
「ま、無駄にはならんじゃろうな。その修業」
そう、外に居たレーチェがそういう。
「む。何かあるって言い方ね」
「聞こえとったか。まぁ、あるぞ」
「どういうこと?」
「創世級が暴れるとなるとな、辺りには大量の魔力の溜まり場が出来る。まぁ、一時的に発生した迷宮みたいなものじゃな。仕掛けるタイミングにもよるが、それが創世級迷宮の外に溢れて出来る恐れがある」
「……それって」
「つまり」
「創世級迷宮から、大量の魔物が発生して辺りに散らばる可能性があるな。ま、わしにはどうでも良いことじゃが」
「……早く言ってよ」
アリーは、そのレーチェの発言に頭を抱えた。
「……人手がいるわね」
「そうだね。頼れる人は、全員呼ぶべきだよ」
「はぁ~。だとしても、呼ぶべきタイミングは最後ね。このタイミングでは、まだ誰にもバラせない。どいつもこいつも、国家と繋がりのある人ばっかだし」
「ここまで来たからね。今更邪魔が入るのも危険だし」
「そう。というわけで、これは後に回しましょう。あ、魔物で協力してくれそうな人たちには伝えておきましょうか。決戦の日は、そうなるって」
「そうだね。そうしよう」
そう言って、アリーとヒイラは窓から飛び降りて、庭に着地した。
「さて、やってみましょうか」
「そうだね」
「いや、先走ってやろうとしないでくれ。俺が見るから」
その二人の後を追いかけて、ベイが庭に着地した。
「うん、お願い」
「ベイくん、お願いね」
「ああ」
「と言っても、ヒイラは明日は闘技大会だから、控えめにね」
「善処するよ」
そう言って、地下に魔力を流し結界を起動させてその中に入ると、2人は外殻を作り始めた。
*****
「お待たせいたしました~~!!!!ウィルクス魔術・戦士学校、全校生徒参加可能闘技大会!!!!開催です!!!!」
「「「「「「「「「うわぁあああああああーーーーーーーー!!!!!!!!」」」」」」」」」
そして、その時がやってきた。闘技大会の開催。その参加者の中には、サラサ、レラ、レノン、サラの姿があった。
「あんたは、参加しないのね。ロデ」
「あんな強烈な修行した人たちに、商人である私が勝てるわけ無いですよ」
「あんたも修行すればよかったのに」
「いや~、レーチェさんの野菜がすっごく売れましてね。それで忙しくなっちゃって。残念だなぁ~。残念だなぁ~」
「……ま、いいわ。あんたには、後で修行してもらうから」
「え?」
「一応、頭数には入れてあげるわよ」
「は、はぁ~?」
アリーの言葉に、ロデは首を傾げた。
「ということでベイさん、今年の大会優勝者は、ズバリ誰だと思いますか?」
解説席で、実況者の女性に質問を投げかけられたベイが頭をひねる。そして、一人の人物の名前を上げた。
「これを言うと、本人のプレッシャーになるのでしょうが。彼女には、その実力が十分にある。そう、俺は思っています。ですので、あえて言いますが。その人物は」
「その人物は?」
「ヒイラ・スペリオです。サラサやレラも強いが、優勝はヒイラでしょう」
「流石ベイくん。分かってるねぇ~」
「いや、分かってない!!勝つのはサラサだ!!」
「ははは、分かってないねガンドロス。勝つのは、ヒイラちゃんさ」
「何だと、ライア!!サラサの姿を見ろ!!負ける気がしないだろ!!!!」
「勝つのは、レラだ」
「み、皆さん頑張れ~!!」
観客席に居る保護者達が火花を散らす。その横で、ニーナがなんとかライアさん達をなだめようと、一緒に応援しましょうと声をかけた。
「ヒイラちゃん、ぶっ飛ばせ~!!」
「サラサ!!負けるんじゃねぇぞ!!」
「レラ、実力を見せてやれ!!」
その声が届いたのか、三人は恥ずかしそうに顔を伏せた。
「……本当におばさんは。でも、手加減はしないよ。ベイ君が、見てるからね」
そのまま、予選が始まる。そして、生徒たちは知った。格が違う相手が、この中に紛れ込んでいたのだと。
「……」
ある者は無言。ある者は鼻歌すら口ずさみ、ある者は夕食の内容を考えながら予選を突破した。それ程に、一般の生徒と彼女たちの間には実力の開きがあった。
「やっぱ無理かぁ~」
「無理かぁ~」
最初に脱落したのはレノン、そしてサラであった。2人は、サラサとレラにそれぞれ負けた。その後、サラサとレラがぶつかり、レラが惜しくも敗退する。サラサの喉元にまで剣を突きつけたレラであったが、サラサのそれまでの攻撃で、そのタイミングで剣が折れたのだ。それも、パッキリと。そのタイミングでサラサが反撃して、サラサが勝利した。サラサの反応を見るに、それはどうやら狙った戦い方であったらしかった。
「いい武器買おう」
そう、レラは呟いた。
「レラが~~~~!!!!でも、よく戦った~~!!!!」
「良いぞ、サラサ!!!!」
ジーンは、そう叫ぶと燃え尽きたかのように椅子に座った。
「さて、今年は例年よりもかなり速いペースでありますが、次で今大会の優勝者が決まります!!決勝戦です!!!!」
「「「「「「「「「うわぁあああああああーーーーーーーー!!!!!!!!」」」」」」」」」
ステージに、ヒイラとサラサが上がる。そして、お互いに見つめ合った。
「ヒイラさん。手加減は、期待しないで下さい」
「うん?ああ、良いよ良いよ。気にしないで。私も出来ないと思うから、お互いに頑張ろう」
「……分かりました」
サラサは、息を呑む。サラサは知っている。彼女が誰かを。彼女が何者であるのかを。
「ぐふふ。楽しくなってきたね」
被っている帽子を調整しながら、彼女は笑う。彼女はヒイラ・スペリオ。この星を、一度創世級から救いし者。そして、彼女の魔法を見たものは、彼女をこう呼ぶ。鮮血のヒイラと。




