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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・一部 真の救世主
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レノン&サラ ~小さな成長~

 日々が過ぎていき、修行が続く。毎日が力尽きるように倒れてベッドの上で明日のために力を回復させる。その繰り返しであった。それは、同じことの繰り返しではあるが、一言で言えば過酷。それを、休むことなく毎日繰り返しているだけあって、ベイ達の修行の成果は大きなものであった。もうすぐ、ベイ達の作っている外殻は、その全身を完成させる。その様子を、家の窓からアリーは眺めていた。


「ちゃんと機能はしてるみたいね。私の作ったミニ迷宮結界発生装置」

「そうだね。ここから見てもベイくん達の外殻が小さく見えるから、動作は問題ないみたい」

「庭でも、これで気にせずベイ達が訓練できるわね」

「ここからしか見えないように、辺りの風景カモフラージュも出来てるしね。お義父さん達も気づいてないみたいだし、もう完璧だね」

「さて、じゃあ後はローリィの改造ぐらいかしら。とっとと進めるとしましょう。ヒイラも、やることがあるでしょうし」

「私?何かあったかなぁ?」

「闘技大会よ。今年も出るんでしょ?」

「ああ~、まぁ、出るよね。でも、そこまで気にして時間取るほどかなぁ?」

「いるに決まってるでしょ。サラサ、レラ。おまけに、レノンとサラも今は、実力が去年とは一段違うんだから」

「そうですよ、ヒイラさん!!」

「私達も頑張ってますからね!!簡単には負けませんよ!!」

「ああ~、そうだね。そっか~。皆出るんだよね。そして、実力を抑える気がないと。……なら、少しは気合い入れようかなぁ」


 メイド服を着たレノンとサラが、ヒイラに抗議する。それを見ても、ヒイラは慌てる様子もなくノートに文字を書き込んでいった。


「むぅ。動じた様子がない」

「流石、超英雄」

「あ、そっちの棚の三段目の左から五番目取ってくれる」

「分かりました!!」

「どうぞ!!」


 連携プレイで、本棚から本を投げ渡して、最速でアリーに渡すレノンとサラ。彼女たちの最近の仕事は、このようにアリーとヒイラの研究の手伝いであった。つまり雑用である。ただ、学校がない時のみという限定的な間ではあるが。


「ありがとう」

「「どう致しまして」」

「息ぴったりだね、ほんと」

「「いえいえ」」


 午前は二人の研究を手伝い、お昼の準備を手伝った後、午後は2人も戦闘の訓練をする。今回から、アリーの作ったミニ迷宮結界発生装置を使って、レノン達も庭で訓練をすることにした。


「おお~。庭が広い」

「凄いねぇ」

「魔法使いというのは、実に凄い職業だな」

「ははは、私もそう思う」


 レノン達が結界に入ると、先に結界の中に居たサラサと、レラがその言葉に反応した。2人は、そう言いながら自身の持っている剣を鞘から抜く。そして、一瞬の間をおいてお互いに剣を向けて剣をぶつけ合うと、その場から姿を消した。


「……は、動きが早すぎて捉えられない」

「ほんと、格が違うって感じだよね」


 そう言いながら、レノンとサラも剣を抜いた。2人が持っている剣は、お互いに双剣。それも、同じ種類の剣を持っている。そして、全身から水色の気を発すると、お互いに向かい合った。


「じゃあ、おさらいから行こうか」

「うん。気を出しながら、魔力の流れを意識する」

「そう。そして、それが全身を包んでいくイメージ」

「それが、自身を覆う鎧となって、私達の体を強化する」


 すると、二人の体を青い装甲が覆い始めた。それは、気を損ねることなく二人を包み、まるで青い炎を発する騎士のような姿となった。その後、その鎧を確かめるように2人は準備運動を始める。そして、再度向かい合うと、剣を構えてお互いに静止した。


「じゃあ」

「始めますか」


 そういうと、2人はお互いに剣をぶつけ合う。そして、その場から姿を消した。


「やるじゃない。あの2人も」

「そうだねぇ」


 アリーが窓の外を見てそういうが、その言葉にヒイラは、適当に相槌を打って答えた。こうして、休みの日の午後がすぎていく。ベイや、アリー達に魔法の使い方を教えてもらったレノン達は、このように自力で鎧を作ることが可能となっていた。それは、強化魔法と同じ意味を成す鎧である。しかし、この鎧は聖魔級強化よりも強化幅は少なく、作りが簡単だ。だが、それでも訓練を重ねてきたレノン達がその鎧を使って動けば、その強化後の能力はとても大きい。故に、2人は既に人間を超えた力が容易に出せるようになっていた。


「ふぅ~、疲れた」

「これぐらいで、今日は終わろっか」

「うん。ベイくん達の様子でも見に行こう」

「そうしよう」


 鎧を解いて、2人はベイの元へと駆け出す。


「ねぇ」

「うん?」

「私達、これでいいのかなぁ?」

「……良いと思う。アリーさん達みたく、魔法が作れるわけでもないし、少し体を動かすのが得意なくらいだし。この方向性で良いと思うよ。私は」

「それが、ベイくんの役にたってるのかなぁ~って」

「う~ん、今は成果が見えないけど。多分役に立つ日が来るよ。そう、私は信じてる。それに」

「それに?」

「体力がないと、その、すぐにベイくんにやられちゃうから」

「……ああ~、それはあるね」

「でしょう」

「体力、大事」

「うん」


 もうすぐ、ベイ達の外殻は完全に完成する。それを見ながら、2人はベイ達に向かって走り続けた。踏み出している一歩が皆よりも小さくとも、それでも少しでも愛する人の役に立つために、彼女たちは今日も進む。自分が愛する人を、自分らしく支えるために。


「……ところでヒイラ」

「うん?」

「本当に良いの?訓練しなくて。レノンとサラでさえ、あの実力なのよ。サラサと、レラともなれば」

「アリーちゃん、心配性だね。でも、大丈夫だよ」


 そういうと、ヒイラは読んでいた本を閉じる。そして、本棚目掛けて本を投げると、それが空中を吹き飛んで、見事に本棚のあいているスペースに収まった。


「私も、超英雄だからね」

「……そうね。むしろ、あなたの相手をするサラサ達を心配するべきよね」

「いやぁ~、それもどうかなと思うんだけど。ま、負ける気はしてないよ。だって、私はベイくんの専属魔法使いで、アリーちゃんの親友で、一緒に世界を一度救った超英雄だからね。ある程度本気を出す必要があるだろうけど、負けはしないかなぁ」

「じゃあ、今回の大会で知れ渡ることになるわね。貴方が、未来でなんと呼ばれていたか」

「鮮血のヒイラ・スペリオだっけ。まぁ、そうなると思うよ。可愛くなくて、あまり私は好きじゃないんだけどね。その呼び名」

「カッコいいから良いでしょ」

「そうかなぁ」

「そうよ」


 ヒイラは、苦笑いを浮かべながら指を動かす。すると、本棚から一冊の本が飛んできて、彼女の腕に収まった。


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