表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・一部 真の救世主
549/632

レーチェデカブラ ~封印から解き放たれた獣~

 新たな族長の誕生だ。それは、若くして頂点へとたどり着いたコンビ。ロロ&ジャルク。


「族長、優勝おめでとうございます」

「ありがとう。でも、言った通り私はすぐに出ていく。もう、私とジャルクは一人前。それを、証明した」

「はい。お二人は、もう一人前です」

「うん」


 ロロに、前族長が敬語を使っている。そういうしきたりなんだなぁ。


「ただ、その前に一つだけ決めごとを決めたい」

「決めごと、ですか?」

「うん」


 ロロは、見ている狩猟天使たちに向かって視線を移す。


「我々狩猟天使は、この星を守るために我が夫、ベイ・アルフェルトに協力することとする!!」


 そうロロは、皆の前ではっきりと言い放った。


「協力、ですか」

「そう。私とジャルクも、ちっぽけだけど役に立つために頑張っている。だから、皆にも力を貸して欲しい。創世級から、この星を守るために」


 ロロは、熱を込めてそういった。その言葉に、前族長達が頭を下げる。


「ははっ」

「うん。じゃあ、族長。あと、よろしく」

「はい。……ロロ、行くのか」

「うん。まだ、私達弱いから、夫のためにあっちで頑張らないと」

「クァ~~!!」

「……元気でな」

「勿論、元気!!そして、世界を救う!!」

「クァ~~!!」


 ロロ達が、俺に駆け寄ってくる。そして、皆を連れて俺は、家へと転移した。巣立っていくロロを、優しく狩猟天使たちが見送っていた。


「疲れた」

「ご飯食べて、休憩するか」

「うん」

「クァ~~!!」


 時刻は、丁度お昼時だ。参加人数の割には、早く勝負がついたな。まぁ、皆全力で殴り合ってたし、こんなものか。


「ベイよ。その前に、あれをするのじゃろう?」

「あ、そうだな」


 俺達は、料理をしているアリー達も集めて家の庭に集う。今日は、ノービスとカエラも一緒だ。そこで俺は、皆を代表して言葉を述べる。


「あけましておめでとうございます。今年もよろしくおねがいします」

「「「「よろしくおねがいします」」」」


 皆が、俺の言葉に合わせて挨拶を返した。何をしているかというと、家族間での交流だ。まぁ、俺の勝手で挨拶は日本式にした。ようは、これから食事会をするのだ。普段は、俺達が倒れてばっかなのでノービス達と同じ時間に飯を食べることが少ない。家族なのにだ。なので、年始は一緒に食べることにした。これは、その軽い挨拶みたいなものだ。まぁ、普通に呼んで食べればいいじゃんと思うのだが、アリー達が年始だし特別な気分で始めたいというのでこうした。まるで日本みたいだぁ。あるのは、洋食ばかりだけど。


「さて、それじゃあ用意しましょ。ごちそう、たくさん作りましたよ」

「本当、アリーちゃん」

「はい、お義母さん。ささ、こちらへ」

「ノービスさんも、どうぞ」

「ヒイラちゃん。君も、お義父さんと俺を呼んでくれていいんだよ」

「は、はい!!」


 全員が、アリーを先頭に家の中へと入っていく。その最後尾を、俺はついていこうとした。


「ベイよ」


 その時俺は、レーチェに呼び止められた。


「ちょっと、手伝ってくれんか」

「うん、何をするんだ?」

「なぁに、すぐに済む」


 そう言ってレーチェは、俺を引っ張ってとある部屋へと向かった。


「うん、ベイは?」

「どこかに行ったみたいですが」

「悪い、遅くなったかな?」

「大丈夫、今準備できたわよ」

「そうか。なら良かった」

「ふむ。良いものじゃった」

「?」


 そのレーチェの言葉に、ミルクは首を傾げて疑いの目を向けた。


「それでは、頂きます!!」

「「「「いただきます!!」」」」


 アリーの合図で、俺達は食事を始める。眼の前には、これでもかと豪華な料理が並んでいた。中でも目を引くのが、巨大な肉の塊の丸焼きだ。これは、何の肉だろうか?


「レムさんに頼んで取ってきて頂きました。グランドドラゴンの肉です」

「……ドラゴンの肉の、丸焼きだと」

「私が、完璧に焼き上げた」


 そう言うのは、サラサだった。流石、肉料理の専門家。丁寧な仕事だ。


「ジャルク?」

「……」


 ジャルクは、静かに肉から目を背けた。


「さて、切り分けるぞ」


 サラサが、肉の塊に包丁を入れる。すると、切れ目から肉汁が溢れ出した。


「おお~~!!」

「下さい!!」


 すっと、ロデが皿を差し出す。その上に、サラサが肉を置いた。それを、まるですするようにしてロデは口へと運ぶ。いや、まじですすってたぞ。それ程、柔らかいということか?


「うう~~~ん!!美味い!!!!」

「どれどれ」


 俺にも、肉の乗った皿が配られる。それを、俺も同じようにしてすするように食べた。


「うっ!?」


 美味い。柔らかいのに、噛みごたえがある。それでいて、肉汁が豊富でジューシーだ。まるで、一つのスープ料理。これが、ドラゴンの肉か。


「……美味いが、野菜が欲しくなるのう」


 レーチェがそう言う。俺も、野菜を食べることにした。合う。濃い肉に、レーチェ印の野菜の旨味がベストマッチしている。これは、無限に食える組み合わせだな。


「めっちゃ美味い!!」

「感動……」


 みんながそう言う中で、何故かジャルクが、気配を消すように身を伏せて静かに食事をしていた。安心しろジャルク。お前は食べないから。


「いやぁ~~、いい食事だった」

「そうねぇ」


 あっという間に、あれだけあったごちそうがなくなった。まぁ、人数いるからな。そんなもんか。


「さて、戻ってのんびりするか」

「ええ。アリーちゃん、ベイをよろしくね」

「はい」


 そう言って、ノービス達は実家に帰っていく。まぁ、実家のほうが静かで落ち着けるからな。それが良いだろう。新年といえども、俺達はこれから訓練をするしな。こっちはうるさくなる。


「ベイよ、飲み残しておるぞ」

「うん?」


 レーチェにそう言われて見ると、俺のコップに何故か牛乳が並々と注がれていた。あれ、飲んだはずなんだけど、いつの間に。


「……まぁ、いいか」

「……ふふっ」


 俺は、そのまま牛乳を一気に飲み干す。ほら、そこにはいつものように、慣れ親しんだうまい味が。


「……えっ、違う」

「ふっ」


 濃い。明らかに濃い。いつものミルクの牛乳じゃない。味が違うのだ。脂肪分が多く感じる。それでいて独特の癖の濃さがある。だが、美味い。これも間違いなく美味いのだ。だが違う。確実に、ミルクの牛乳ではない。


「ご主人様、どうかしました?」

「……」

「うん?」


 ミルクが、俺の持っているコップを見つめる。


「……レーチェ、貴方、まさか!?」

「ふはは!!ふはははははは!!」

「飲ませたな!!私のご主人様に、飲ませたな!!お前の、それを!!!!」

「そう。その通りじゃ!!あれは、お前のではない!!わしのじゃ!!!!」


 そう。それはヤギのミルク。牛乳などではない。さっき、俺が手伝ったものだ。恐らくそうだろう。捨てるって言ってたのに。残してたのか。


「お前!!お前えええええええ!!!!」

「そう熱くなるな。何、どれほどの味か気になってな。飲ませる相手もベイしか嫌じゃしな。それで味見をしてもらったというわけじゃ」

「……ご主人様!!どうですか!!味は!!私のよりもすごいんですか!!!!」


 ミルクが、大声で俺に言ってくる。だが、俺は今、それどころではない。


「なんか……」

「なんか?」

「なんか、めっちゃムラムラするな」

「……」


 俺は、ゆっくりと視線をミルクとレーチェに向けた。

 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ