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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
最終章・一部 真の救世主
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ロロ&ジャルク ~新年・族長決定戦~

 色々とあったが、無事に年が明けた。本当に、去年は色々とあった。思い返してみれば濃い一年だったと思う。全員が生きて今年を迎えれたことを、本当に嬉しく思った。そして、年が明けると同時に、ある行事が始まろうとしている。


「寒い」

「温めようか?」

「大丈夫。我慢できる」


 厚着の服装で、ロロはそう言う。そう、これからミエル達の故郷で、ロロ達狩猟天使の族長を決める戦いが始まろうとしていた。


「ま、頑張るんじゃな」

「うん」


 師匠ポジションのレーチェが、焚き火で芋を焼きながらそう言う。というか、屋内でやろうよ。外でやるのかよ。寒いよ。魔法使ってるから、俺達には関係ないけど。

 

「それでは、試合を始める。族長に、名乗りを上げるものはいるか!!」

「「「「おおおおおおお~~~~!!!!」」」」

「お~~!!」


 野太い男たちの声が響く。その中で、遅れるようにロロの声が響いた。まぁ、送らせないと聞こえないよな。この声の中じゃあ。


「ベイさん、本当に大丈夫なんですか?」


 俺に、狩猟天使の子供たちの教育係をしているフェーゼが声をかけてくる。それに対して、俺は微笑んだ。


「大丈夫ですよ。まぁ、見ててあげてください。ロロとジャルクの成長を」

「はぁ……」


 俺は、二人の小さな背中を見て思う。きっと、ここにいる誰よりも、この二人は努力した。負けるはずがない。それが証拠に、レーチェは気にした風もなく芋を食べている。きっと、勝って当たり前だと思っているのだろう。なら、大丈夫なはずだ。俺が教えた、切り札もあることだしな。


「では、順々に始める。……一番手、始め!!」


 狩猟天使の族長決定戦は、一対一で戦う勝ち抜き方式の戦いだ。予め、実力が近いものと思われる者同士がペアを作り最初の戦いを行う。故に、強者であろうとも一回戦で消えるものが多い。それを繰り替えす。実力が近いと思われる者同士が戦っていくので、最終的にぶつかり合う者同士は、同じような疲労度を背負うことになる。その中で、決定戦を行う。中々大味な行事だ。ロロの初戦は、一回戦の最後か。まぁ、ゆっくり他の人の試合でも見て待っていよう。そう思って、俺は椅子に座った。


「……おい、あんた」

「うん?」


 見ると、一人の天使の子供が、俺に向かって話しかけていた。子供の脇には、小さな豹のような魔物がいる。狩猟天使か。


「えっと確か、ベイさんだったよな?」

「ああ、そうだよ。君は?」

「俺は、ロジャール。こっちは、相棒のケンチャだ」

「おお、よろしく。それで、どうしたんだいったい?」

「えっと、ロロはさ、凄いやつなんだよ。俺達が震えてた時もさ、一人で外に駆け出していくぐらいすげー勇気のあるやつなんだ。だけどさ、流石に大人には勝てないと思う。あいつは、やる気があるみたいだけど」

「ふむふむ」

「それでなんだけど、もしもの時はあいつを守ってやって欲しい。この族長を決める戦いは、お互いが本気を出して戦う決まりがある。大人でも、子供に容赦してくれるか分からない。だから、何かあったら止めて欲しいんだ。頼むよ」

「ああ、任せろ。もしもの時は、俺がロロを救う」

「……ありがとう。あんたの、いや、貴方の言葉なら信じられる。お願いします。これで、俺も心置きなく戦える」

「うん?」


 そう言うと、ロジャール君はフェーゼさんが面倒を見ているグループに戻っていった。


「あやつが、ロロの一回戦の相手か」

「ああ、そう言うことか」

「……驚くじゃろうな。相手がロロでは」

「だろうな」


 待つこと数十分。ついに、ロロの試合が始まった。


「では、始め!!」

「うおおおおおおおおお!!!!」


 相手は、ロジャール君。族長決定戦には、ロロと同じく初出場らしい。なりふり構わずロジャール君は、相棒のケンチャを引き連れて武器の槍を構えて突進する。しかし、それに対してロロは武器を構えず、素手で構えた。


「なめてるのか!!」

「……違う」


 ロロは、ロジャール君の突きをあっさりと躱す。そして、一気に間合いを詰めた。そのまま、ロジャール君の手首を掴んでひねる。


「いてて!!」


 そして、そのままロジャール君を持ち上げると、駆けてきていたケンチャの頭目掛けて投げ下ろした。


「ぐえっ!!」

「キャン!!」

「投げやすいように、武器を出さなかった。それだけ」


 そのまま、ロジャール君とケンチャは倒れる。そして、起き上がらなかった。


「それまで!!」

「大丈夫!!」


 ロジャール君達に、医療班とフェーゼさんが近寄っていく。その中で、ロロとジャルクだけが颯爽と俺のもとに戻ってきた。


「まずは一つ」

「ああ、この調子で快進撃を見せてくれ」

「お任せあれ」

「クァ~~!!」


 俺の言った通り、ロロは快進撃を見せた。大人の狩猟天使達は、ロロ相手でも武器を振るう手を緩めない。それ、子供相手に出す武器のスピードじゃないと何度も思ったのだが、それらをあっさりとロロは撃破していく。多くの決まり手は、相手の頭目掛けての薙刀の振り下ろしだ。勿論、刃物側ではない。刃の無い方でだ。それで、ロロは相手の脳天や首を殴打して倒していく。ジャルクも、相手の成体となった魔物相手に光の光弾をだして応戦し、相手を倒したロロと結託して残った魔物を倒すという戦い運びを行っていた。多くの場合、相手の天使は魔物に騎乗している。その中で、ロロは素早さを活かし、相手天使を落とすか、そのまま倒す。その状況から、二人はどちらも欠けずに試合に勝利する。はっきり言おう。強い。


「ロロちゃん、いったい何をしたらああなるんですか?」

「すげー」


 フェーゼさんと、起き上がったロジャール君がそう言う。

 

「うーん、修行したからな。年明けまで俺達と。それに、ロロもジャルクも外殻を作って魔力を底上げした。並のやつには、負けないだろうな」

「よく分かりませんが、ベイさん達がすごい修行をさせたってことですね」

「まぁ、それであってる」

「ロロすげー」


 二人が驚いている間も、試合は進む。狩猟天使の戦いは、どちらかが全力の攻撃を相手の急所に叩き込んで終わる試合ばかりだ。恐ろしい。どちらも相手を悶絶させて気絶を狙っている。故に、一撃一撃が全力に近い鋭さを持った攻撃だ。見ごたえはある。だが、少々俺達には歯ごたえが足りない。まぁ、いつも訓練してる相手のほうがやばいからな。仕方ない。


「それまで!!それでは、最終試合を行う!!」

「まさか、君が残るとはな」

「族長。安心していい。私達が勝っても、貴方は族長。しかし、私達は出ていく。夫が、私達を待っているので」

「クァ~~!!」

「なるほど。確かに、私を倒せたならば一人前だ。だが、倒せたらの話だが」


 族長は、槍と盾を構える。族長には、相棒の魔物がいない。ノジュカント達との戦争で殺されたからだ。しかし、それでも彼は強い。彼は、彼一人でここまで勝ち進んできたのだから。流石、族長。伊達ではない。


「では、始め!!」


 そう審判が合図すると、ロロはジャルクに跨がる。そして、族長を見つめて動かないでいた。


「……」


 静寂が、辺りを支配する。この行動を、他の人はどう捉えるだろう。ジャルクは、今は単体であるのならば羽を出して空中を飛べる。しかし、その飛行も早いとは言えない。まして、ロロを乗せて飛ぶなど不可能だろう。多くの天使たちには、そう見えたはずだ。


「……」


 しかし、族長は攻めるか迷っている。これは、ロロ達を甘く見ていない証拠だ。流石族長。良い判断をしている。


「……ジャルク」

「クァ~~!!」


 先に、ロロのほうが痺れを切らした。その瞬間、ジャルクを光が包んでいく。


「なんだ?」


 光が止むと、ロロは金色の鎧で出来た竜にまたがっていた。金色の翼を広げ、大人の二倍ほどもある身長のその竜は、ロロを乗せて佇んでいる。そう、それはジャルク。天使と同じ、鎧を出すすべを身に着けたジャルクの姿であった。


「クァ~~!!」


 しかし、鎧を纏っても鳴き声は変わらない。


「驚いたな」

「族長、最初に言っておく」


 その後、ロロは翼を広げて浮き上がる。そして、光を身に纏った。それは、大人の様は大きさの鎧を身に纏ったロロだった。変化した薙刀を持ち、ロロは再度ジャルクに跨がる。


「今の私達は、かなり強い」


 遂に、本当の意味で2人はドラゴンライダーとなった。これこそが、ロロ&ジャルク。まだ若き、狩猟天使の天才児達である。


 


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