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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・八部 ???? フィー編
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頂点

 大気が揺らぐ。そして、動き始める。それは、今までの動きとは逆方向にだ。俺達以外の時間が、巻き戻っている?


「……カザネさん、これはまずいですよ。この力、使えば後がありません。落ち着きましょう。今は、この力を使うときではありません」

「……そうか。フィー姉さんの後に、最後の手段として取っておくか」


 カザネの、鎧の変形が止まる。フルアクセル・ブーストの状態に鎧が戻ると、目の前の妖精の女王が喋り始めた。



「そう、一体化。それを、私も使えるからですよ。ここに居た全ての妖精。妖精たちと一体化することで、私は、貴方専用の魔法ですら扱えるポテンシャルを得たのです」

「……」


 それは、俺達がもう聞いたセリフであった。間違いない。時間が巻き戻っている。


「主人」

「……そうだな。フィー、頼めるか」

「はい!!」


 カザネモードであるので、フィーの意識は眠っていたのだが、その中でも、はっきりとフィーは俺の声に反応した。どうやら、覚悟は十分なようだ。


「アルティ!!」

「はい、マイマスター!!カザネさん、フィー姉さんに切り替えますよ!!」

「ああ、フルアクセルの状態は、私が保つ」

「やっと、本気を出すのですね。愚かな。すべての力が、私に渡るかも知れないというのに」

「……」


 いや、どうやらそれはないようだ。ブレイクアクセルは、時を巻き戻す。つまり、相手はブレイクアクセルを覚えることが出来ない。なぜなら、その瞬間から時間が巻き戻るからだ。ブレイクアクセルの先に、通常の時間の進行はない。能力の新たな取得も相手には出来ない。つまり、妖精の女王相手には、完璧なほどに対抗力のある力であると言える。……だが、一瞬しか感じ取れなかったが、ブレイクアクセルを使用した時に寒気がする。それが、死だと俺は思った。ブレイクアクセル。限界を超える力。その先に、いつまでいられるかなど、俺達にですら分からない。間違えれば、俺達が自滅する。それ故に、アルティは止めたのだろう。ブレイクアクセルの使用を。


「この姿になるのも、懐かしい気がしますね」


 そういったアルティの姿は、魔石。その魔石は、カザネモードの鎧から一部身体を出して輝いている。そして、まばゆい閃光を放つと、俺達を魔力で包み込んだ。


「美しい光……」


 妖精の女王がそういう。光の中で、フィーが魔石となったアルティを胸に受け入れた。そして、目を見開くと、その周りに鎧が形成されていく。初めに、レムモードの鎧が現れた。その鎧に、ミルクの鎧の腕に近い形のガントレットの装甲が張り付いて強化される。次に、ミズキの鎧のような長い髪が鎧に生えた。足先と胸にはカヤの鎧の装甲が、背中にはミエルの武器である斧が、両腕にはシスラ、サエラ、シゼルの武器である小さな槍、弓、杖先についている宝玉がついていった。そして、足と背中の装甲が、カザネの鎧で強化される。そして、それらがフィーの力で統一され、一つの鎧の姿へと変化した。


「これが、力……」


 妖精の女王が感嘆を漏らす。そう、これこそが俺達の魔法。その到達点の一つ。その力。


「全属性属性特化一体化。全ての属性特化一体化の頂点の力。無事に、ここまで来ることが出来ましたね」


 アルティが、そういう。その言葉に、フィーは鎧の腕を握ったり開いたりしながら反応した。


「そうだね。感じるよ。皆の湧き上がる力を」


 その瞬間、俺の意識が切り替わった。鎧の制御権が、俺に移ったのだ。


「マスター、サポートは、お任せ下さい」

「良いのか、フィー?フィーの力だろ?」

「ええ。皆の力は、あなたの為に。そう、皆で考えて、決めましたから」

「はい」

「ええ」


 皆が頷く。そうか。なら、俺もその気持ちに答えないとな。


「素晴らしい、素晴らしい力ですよ!!」


 妖精の女王が、歓喜している。その前で、俺達は妖精の女王を睨みつけた。


「私の名は、フィー。フィー・アルフェルト。大好きなマスターと、愛する仲間を守るお姉さん。そしてこれが、そのための力。マスターのための、マスターの鎧。全属性特化一体化。超えられるものなら、かかってきなさい!!」

「創破滅砕のガントレット!!」


 俺は、腕に地の魔力を纏わせて、腕のガントレットを巨大化させる。そして、妖精の女王に向かって構えた。


「フハハハハハハッ!!ええ、良いでしょう!!見せて下さい、その力を!!!!」


 そう言って、妖精の女王が突っ込んでくる。しかし、俺達は避けなかった。妖精の女王が、魔法の矢を俺達目掛けて打ち込んでくる。しかし、その魔法の全てが、俺達を通過した。


「なるほど、ミズキさんの力ですか!!」

「そうだ」


 魔法は、俺達をすり抜けていく。まるで、水にでも突っ込んだかのように、俺達の鎧に傷一つつけず、あっさりと通過した。


「なら、これならどうですか!!創破滅砕のガントレット!!」


 妖精の女王が、俺達と同じようなガントレットを腕に纏わせて攻撃してくる。しかし、それを俺を無造作にはらって、その手首を掴み、握りつぶした。


「ぐっ、あああああああああ!!!!」


 女王の腕が、魔力になって砕け散る。しかし、すぐに再生した。神魔級回復魔法か。


「レムさんの力ですか。私達が、唯一完全に扱えない力」

「お前たちに、武術の心得は無い。今のではっきりと分かった。さぁ、覚悟を決めろ。借り物の力では、どうあっても俺達を倒すことは出来ない」


 飛び退いた、妖精の女王を見つめて俺はそういう。しかし、妖精の女王は笑っていた。


「そうですね。そうかも知れません。やはり、借り物の力だけでは駄目ですね」

「……」

「では、私も見せましょう。私の、真の力を!!!!」

「!?」


 その瞬間、妖精の女王の鎧が変わった。やや、俺達の今の鎧に姿が似ているかも知れない。しかし、感じる力は異なったものだった。


「ありがとうございます。皆さんのお蔭で、私はまた一つ強くなれました」

「どういうことだ?」

「フィーに流れる新たな力の本流。それを感じることで、私の中にあった魔力が、革命を起こしたのです!!」

「……何が言いたい」

「分かりませんか?つまり私は、貴方達のお陰で、さらなる進化を果たすことが出来たのです!!それも、迷宮の魔力無しで!!!!」

「……なん、だと」

「今の私は、純然たる創世級!!そして、この迷宮の魔力さえも、維持する最低限の魔力を残して取り込めば……」


 妖精の女王の鎧が、巨大化していく。


「完全!!まさに、完全なる創世級に値する力となるのです!!これが、創世級!!素晴らしい!!最早、私は女王ではない。妖精神。まさに、神に等しい力を持っている!!」


 周囲の景色が、妖精神から溢れ出す魔力で溶けていく。あまりにも強力な魔力が周囲に漂っているために、周りの魔石が分解され始めたのだ。そして、それらの魔力も妖精神に吸い込まれていく。レーチェほどではない。だが、その力から感じるプレッシャーは、かなりレーチェに近いものであった。


「……少し、まずいか」

「……あれ?」


 身構える俺をよそに、アルティだけが謎の違和感を感じて、それを調べ始めた。



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