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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・八部 ???? フィー編
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対立

 日光が反射して、辺りの魔石で出来た自然を輝かせている。声を頼りに進むと、人一人が通れるような細い路地を見つけた。それは、魔石で出来た大樹の裏に隠されていた。そこを、ミズキを先頭に俺達は進む。そして、開けた場所に出るとそこは、全てが魔石で出来た巨大な絶壁で囲まれた広場になっていた。


「……すごいな」


 辺りを見回しながら、俺は呟く。そして、近くの木々に目を向けると、その木の枝に小さな少女のように見える何かが止まっていた。


「ふふふふっ」

「……あれが、妖精か?」


 その少女は、俺と目が合うと短く笑って、蝶のような羽を広げて飛び立つ。飛んでいくさなか、こちらを見て再度微笑むと、広場の奥へと飛んでいった。


「ついて来い、ってことか」

「……ここまでのあからさまに自然ではない地形。罠では無いでしょうか?」

「魔石を使った罠か。無いとは言い切れないな」

「しかも、相手は妖精。フィー姉さんでもない妖精など、信じるに値しません。注意するに越したことはないでしょう」

「そうだな。慌てずに行こう。ミズキ、先頭を頼む」

「承知」


 ミズキが、辺りに魔力を撒きながら進む。それらは、周りに何か不審な動きがないかを探りながら俺達の前を漂っていたが、結局は何もなかったみたいだ。俺達は、先程見た妖精が待っている魔石で出来た木々のある森へと辿り着いた。


「いらっしゃい」


 そういうと、妖精は森の中へと入っていった。俺達も、警戒しながら後に続く。すると、そこには数え切れないほどの妖精が木々に腰掛けて座っていた。


「ふふふふっ」

「きたよ~」

「驚かそう」

「駄目だよ。まだね」


 楽しそうと言えば聞こえは良いのだろうが。妖精たちの全員が、俺達を見て笑みを浮かべている。無邪気なと言えばそうなのだが、そこに何か裏を感じる気がするのだ。それが、俺達には不気味な光景のように思えた。


「来ていただけましたね。フィー」


 すると、そこに新たな声が響く。見ると、森の中央に巨大な女性が現れた。その妖精の姿は透けている。本体ではないのかも知れない。あれが、妖精の女王なのか? でかい。大人の身長の三倍ほどもある大きさだ。他の妖精たちは、人間で言う少女のような大きさだが。この妖精だけ出で立ちが違う。妖精の女王でなかったとしても、何か特別な存在であることには違いないだろう。


「そして、邪魔者の皆さん。フィーを連れてきてくださってありがとうございました。出来れば、早々にお帰り願いたいのですけど」

「……話をする気すら無いのか?」

「いえ。私は、フィーの様子を感じることが出来るのです。ですので、皆さんのお考えも拝聴させていただいておりました。確かに、皆さんのお力なら、私を上回る力が出せるかも知れません。ですけどね、それは皆さんの希望でしか無いんですよ。まるで絵に書いた絵空事。私のように、確固たる勝機のあるものではありません。皆さんは、お互いの力を信じていらっしゃる。ああ~、それは素晴らしいことです。私達も、見習わなければいけないものですが。それはそれ。皆さんの力を、私は持っています。これが事実なのです。その力を、皆さん以上に私が使う。それは難しいことかも知れません。ですが、使えないなんてことは無いんですよ。そういうことです」

「俺達よりも圧倒的に力を使いこなしているから、立ち去れというのか?」

「そうです。これは、私の慈悲でもあります。皆さんには、大きな力を頂いた。それ故に、皆さんに手荒なことをしたくないのです。感謝していますから」

「……ふざけた奴ですね。感謝の意味を知らないと見えます」

「そうだな。知らぬ間に、魔法を勝手に取ったやつの言うことじゃない」

「……やはり、こうなるのですね」


 俺は、アルティを呼び出す。


「もう一度聞く。考えを改める気はないんだな?」

「ええ、勿論です。私達は、好き勝手に生きます。それが、貴方達の希望通りでないとか、そんなこと私達には関係がありません。私は妖精の女王。妖精の管理者。全ての妖精を守る義務がある。創世級にこの星が滅ぼされようが、そんなこと我々には関係がありません。魔力を糧に生きる妖精には星など無くても、存在できる空間を維持できれば良いのです。よって、フィーがわざわざそんな危険な戦いに身を投じるのを黙ってみている訳にはいきません。力ずくでも、止めさせていただきましょう。ええ、貴方達を殺してでもね」


 そういうと、妖精の女王は笑みを浮かべた。なるほど、話し合うことは無理みたいだな。なら、やることは決まっているな。


「カザネ」

「はい。アルティ!!」

「はい、カザネさん!!」


 俺達は、カザネを中心に一体化する。そして気配を探ると、その気配の感じる方向に向かって風魔法をぶっ放した。


「そこだ!!」


 そこは、何もない空間であった。しかし、風魔法が命中すると、そこに揺らぎが生じて妖精の女王の本体が姿を現す。


「……」

「クハハッ!!」


 しかし、その本体は笑みを浮かべると、その場から消えた。


「この加速した空間の中で、笑みを浮かべるだと?」

「言ったでしょう。貴方達以上に、私は貴方達の魔法を使えると」


 その声が聞こえると、周囲の景色が切り替わる。そこには、先程まで居た妖精たちの姿はなかった。


「夢想ですよ。カヤさん。貴方の力です」

「実体すら感じる幻影か!!」

「ええ、その通り。そして、この加速した空間の中でも動ける力。これが、貴方の力です。カザネさん」

「その力、どこまで使いこなせるかな!!お前に、ついてこられるか!!」


 カザネが、鎧にかけるディレイウインドを加速させる。


「フルアクセル・ブースト!!」


 カザネの鎧の黒と緑の装甲が、その魔力を受けて、外側に開き始める。圧倒的な風の魔力をカザネが放つと、周囲の空間が静止した。空気すら、カザネの動きに一瞬の反応も出来ない。ここは、そういう世界だ。その中で、カザネは妖精の女王を見つめている。すると、妖精の女王が笑い始めた。


「ハハハハハッ!!素晴らしい。やはり素晴らしいですよ、この力は。圧倒的、圧倒的な力です。それが、身体に漲ってくる!!」

「……ここまでは、ついてこられるようだな」

「ええ、当たり前です。と言っても、流石に私一人では無理でしたが」

「何?」

「どうして私が、貴方の専用の魔法であるこの段階まで扱えるのか。不思議ではありませんか?答えを教えてあげましょう」


 そういうと、妖精の女王は身体に鎧を纏う。いや、本当は元から着ていたのか?


「そう、一体化。それを、私も使えるからですよ。ここに居た全ての妖精。妖精たちと一体化することで、私は、貴方専用の魔法ですら扱えるポテンシャルを得たのです」

「……借り物の力で、いつまでも偉そうに喋るな」

「……」

「御託はいい。確かに、ウインガル相手には、ここまでで十分だった。だから私は聞いたんだ。ついてこれるのかってな」

「……」

「フルアクセルは、鎧の完全制御ができる段階までのディレイウインドだ。だが、勿論まだ上がある。その意味が、お前に分かるか?」


 時を止めるスピード。さらに、その先の力。 


「ブレイクアクセル。此処から先には、私でさえ行ったことがない。超えられるかな。借り物の力を持ったお前が」


 その瞬間、カザネの周りの大気が、動くはずもないのに揺らいだ。


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