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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・八部 ???? フィー編
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妖精の住処

 血を吐いてから目覚めると、あまり時間は経っていなかった。どうやら、ニーナ達に回復魔法をかけてもらったおかげらしい。ただ、俺の中の皆は未だ目覚めておらず。俺も、食事を済ませるとまた死んだようにベッドに倒れ込んで眠ってしまった。そして、再び気がつくと、既に朝日が昇っていた。


「……身体は動くか」


 一応、引き際を最初の頃よりも早く切り上げた気だったのだが、それでも血を吐いてしまったな。もうちょっと、早めに切り上げないと駄目か。


「よっと。おや、不思議と身体は軽い?」


 立ち上がってみると、身体は昨日よりも調子が良いぞと言った反応を示した。目を閉じて感じて見るに、俺自身の魔力量が上がっている。それが、力となって俺の身体に活力を与えているのだろう。だから、昨日よりも調子が良いのだと思う。というか、やはりあの訓練方法はやばいな。短時間で、これほどに魔力保有量を上げることが出来るのだ。死にかけてもやる価値はあるな。


「さて、皆起きてるか?」

「はい、マスター!!」

「おはようございます」

「昨日はあんなにヘトヘトだったのに、なんだか体の調子が良いですね。よく寝たからでしょうか?」


 他の皆も、出てきて挨拶をしてくれる。うむ。皆調子は良さそうだ。俺と同様の現象が起きているみたいだな。これなら、迷宮に行っても問題なさそうだ。


「よし、ご飯を食べたら、今日は迷宮に行こう。ケリをつけるぞ!!」

「「「「お~~!!!!」」」」


 俺達は、そのまま下の階に降りて、食事を作っていたアリー達に合流した。そして、朝食を済ませると、いつも通りの装備に着替える。そして玄関に行くと、軽く準備運動を始めた。


「う~ん、いい天気だ!!清々しい!!」

「大丈夫、ベイ?昨日は、無茶しちゃったみたいだけど」

「それが平気なんだ。ニーナの回復魔法のおかげかな。ありがとう」

「そ、そうかな。なら、嬉しいよ。ベイ君の役に立てて良かった」

「ベイ。無理はするなよ」

「ああ、サラサ。無理そうだったら、レーチェを助っ人に呼びに戻ってくるさ」

「まぁ~、無理そうなら考えんこともないぞ、ベイよ」

「……いや、多分出番はないよ」

「ふふっ、そうか」

「でも、相手は同じ実力の強敵かも知れないんでしょ?大丈夫?」

「レラ。俺達が作り出した魔法だ。俺達のほうが使い方では秀でている。まぁ、どう転ぶか分からない相手だが、負けはしないと思うよ」

「だとしても、無理はいけないよベイ君。気をつけてね」

「ああ、ヒイラ」

「気を付けてね、ベイ君」

「行ってらっしゃいませ、ベイ様!!皆さん!!」


 俺達を見送る言葉をのべながら、ロデはレーチェに近づいていく。


「これ、この前の売上です」

「ほうほう」


 ロデが懐から、札束を出した。そして、それをレーチェに渡す。


「あのトマト。大大大好評でして」

「ほうほう」

「既に、これほどの利益に」

「……農場を拡張して、出荷数を増やさぬか?」

「いえ、今はこれで行きましょう。少ないがゆえに、今この売上なんです。需要と供給ですよ。こちらで個数はコントロールできる。しからば、抑えて高くといきましょう。それに、今は買い取りたいという顧客が少ない範囲でしか広まっていないですからね。まだ、増量するには早いですよ」

「分かった。まぁ、また言えい。そしたら、好きな数だけ作ってやる」

「ははぁ~、ありがとうございます」


 ロデは、深々とレーチェにお辞儀をしていた。


「……」

「「がんばれ~、ベイ君!!」」


 サラとレノンが、なんとか場の空気を戻そうと俺達に声をかけてくれる。ありがとうございます、二人とも。


「じゃあベイ、皆。……勝ってきてね」

「ああ、行ってくるよ、アリー」

「あと、ロデはちょっと殴らせて」

「えっ!!ちょ、待って下さいアリーさん、待って!!早めに渡しとかないと、私の中の商売人としての意地が有りまして!!」

「今渡すな!!」


 ロデが、尻をアリーに小突かれている。あまり痛くはなさそうだ。良かったな、ロデ。それを見届けると、俺達は転移魔法を使って転移した。


「いってらっしゃ~い!!」

「クァ~!!」


 ロロとジャルクが、最後に見送ってくれた。


「さて」


 着いたのは、懐かしい泉のほとりだ。ここは、神魔級迷宮・妖精の住処。レムが今の姿に進化した場所であり、アルティが人化の能力を得た場所でもある。周りを改めて見回すと、昔と変わりなく木々が生い茂った森のように感じた。しかし、やはりこの場所は他とは違った神秘的な魔力が漂っている。昔感じたように、今でもなんだか嫌な予感がする場所だ。周りの景色は穏やかで、とてもいい光景なんだがな。


「着きましたね」

「……最初は、カザネに任せるぞ」

「了解しました」

「フィー、様子見をしたら出番だ。俺達の力を見せてやろう」

「はい!!」

「よし。まずは交渉だ。それが駄目なら、作戦通りに行こう」

「「「「はい!!」」」」


 辺りを見回して、一本の道を俺達は見つける。そして、隊列を組んで俺達は、その道を進んでいった。


「……」


 暫くは、何の変哲もない森が続いていた。ただ、恐ろしいほどに静かだ。動物の気配すら感じない。そして、暫く進むと、その変化は訪れた。


「ん?」

「どうしましたか、主?」

「木の葉が、凍っている?」


 俺の目線の先。そこには、一枚の木の葉が、透き通った氷のようになって存在していた。それを、ミズキが近づいて手に取る。


「殿、これは凍っているわけではありません。石です」

「石?」

「ええ。それも、ただの石ではありません。魔石です。極小ですが」

「は?木の葉が、魔石になってるっていうのか?」

「そうです。そして、どうやらこれ一枚ではないようですね」

「えっ?」


 視線を、俺は道の先に向けた。よく見ると、道の先のほうが若干光っているような気がする。まさか……。


「……進もう」

「はい」


 歩みを進めるに連れて、木々が徐々に消えていく。そして、ついには魔石で出来た木のみが存在する空間に、俺達は辿り着いた。

 

「綺麗……」

「そうだな。だけど、異様な光景でもある。これ、全部が魔石か」


 木は、不思議なことに色を変えつつ緩やかに輝いている。色を変える魔石など聞いたことがない。俺の召喚魔石も、契約すれば色が変わるが、一回限りだしな。……待てよ。そう言えば、アルティがこんなふうに輝くなぁ。この木は、アルティに似ているのか?


「そうですね。私に似ている。ですが、この木々の保有魔力量は、相当私より低いみたいですね」

「おいおい、ちょっと待て。つまり、この木々は全属性の魔石ということか?」

「そうなりますね」

「……すごい、大発見だぞ。そんなの、今の市場には出回っていない。ロデが、喜んで飛びつく代物だ」

「少し、葉をもいでいきますか?」

「……いや、やめておこう。一応、交渉前だ。勝手に森を荒らすのはやめよう」

「分かりました」


 俺達は、更に歩みを進める。すると、森以外の全てが進むに連れて、魔石に置き換わっていった。気づくと、周りは全てが魔石で出来た空間になっていた。


「ふふふふっ……」

「今」

「子供の笑い声が……」


 やっと、俺達は生物の気配を感じた。その何かは、この道の先で笑っている。


「さて、気を引き締めていくか」

「はい!!」


 俺達は、その声がする方向へと歩き始めた。



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