迷いすら晴れる仮説
「フィー姉さんの力は調和です。全てへの対応。全ての向上。故に私達の中で最強であり、最高の力が現状でも出せている。そう思います」
「そ、そうかな?」
「そうですよ。私もご主人様と繋がった今、魔法操作がこの状態でも可能であるとはいえ、それでもフィー姉さんに劣っている部分があります。まぁ、一概にどちらが強いとは言えない気もしますが、最終的に強くなるのはフィー姉さんでしょうから、まぁ、それでいいでしょう。まだ、属性特化一体化前ですしね、姉さん」
「どうだろう、ミルクに勝てるのかなぁ?」
「まぁ、そもそも争うことがないんですけどね。で、本題に戻りますが。その能力がご主人様の能力と合わさるわけです」
「うん」
「つまりですね」
ミルクが、身を乗り出してテーブルに胸を置いた。
「……どうなるんでしょう?」
「えっ?」
「いや、うっすらとした感覚での話になるのですが、深く考えるとこうなんだろうかとちょっと疑問が」
「えっと、直感でいいよ。何でも言って」
「そうですか。では」
ミルクは、乗り出した身を戻して椅子に座り直す。そして、話し始めた。
「私達、全員がご主人様と一つになります」
「……へっ?」
「私達全員が、ご主人様と一つになります。よくよく考えると、それが私達の最強ですね。そして、それが最終的な調和。つまり最終形態とも言えるわけです。これは、比喩でも何でもなく全員です。ロロとジャルク。そして、ローリィすらもご主人様と一つになる。……ローリィも言っていましたが、もしかしたら本当に無限に近い力が出せるようになるかもしれませんね。全員が一つになって調和し、互いの能力を混ぜ合わせて押し上げるわけです。私達全員の全ての能力が一つになるわけです。そして、それが一つの魔法になる」
「……」
「これ、無敵どころの話でしょうか。もしかして、最強?」
「……生物が持って良い力じゃないのは、何となく分かる」
「ですよね。でも、ちょっと懸念があります。流石に、そこまで一気にパワーアップできるのかなって」
「ああ、それはそうだね。そんな力、属性特化一体化とはいえ、生み出せるのかなぁ?」
「怪しいです。全ての形質を全員が保有しているとはいえ、それを混ぜて一つにする。かなりの魔力がいると思います。出来るとすればまさに無敵を超えますが。今かは分かりませんね」
「そこが、私達の到達点」
「自分で言っててなんですが、その力なら世界を救えるかもしれないです。創世級。全てを相手にしても遅れを取らないんじゃないでしょうかね?」
「やっぱり、マスターは凄い」
「そうですね。そう考えると世界を救う、夢ではありません。現に、私とレムが既に繋がっています。私達がご主人様と全てを超える者になる。これが、もしかしたらご主人様がこの星を救う答えかもしれません」
「ありがとう、ミルク。なんだかもう、負ける気がしないよ」
「お役に立てて光栄ですよ、我らの姉さん」
「うん、迷いが一気に晴れた。私達は、どんな敵にも負けるはずがない。だって、私達の愛は!!」
「無敵。いや、最強ですからね!!」
そうミルクが言うと、フィーとミルクはお互いに微笑んだ。
「さて、とはいえまだレムが残っています。レムならば、私以上のアドバイスをくれるでしょう。というわけで、呼んでまいります!!」
「うん、よろしく!!」
そう言って、ミルクは出ていった。代わりに、レムが静かに入ってくる。そして、落ち着いた様子で椅子に座った。
「迷いは無くなったようですね、フィー姉さん」
「うん、ミルクのお陰で!!」
「そうですか。流石はミルクですね。あいつは、人を元気にする。良いやつです」
「うん。で、レムにも質問しようと思うんだけど」
「はい。私でお役に立てるのであれば、なんでも聞いて下さい」
「う~んと」
フィーは、何を質問しようか考えるために頭をひねった。
「マスターと一つになるって、どんな感じ?」
「主と一つにですか。はっきりと言いますが、何かが変わったという印象は薄いです。今までも契約という魔力の糸でつながっていましたし、それが寄り鮮明になったという感じですね。いつでも、主が隣りにいてくれている気がします」
「それ」
「はい」
「すごく良いね!!」
「はい、最高です。いつでも、目を瞑ると主を感じられるのです。しかも、前よりより強く」
「……最高」
「はい、最高です」
しみじみとレムは言う。その言葉を、羨ましそうにフィーは噛み締めた。
「……そういえば、さっきミルクとこんな話をしたんだけど」
「はい」
そういって、フィーは先程の会話をレムに説明した。
「ってことなんだけど」
「なるほど。確かに、負ける気がしないですね」
「うん。それで何だけど、レムはどう思う?出来ると思う。これ」
「そうですね……」
レムは、目を閉じて数秒思考した。
「出来ると思います。確かに、今かは分かりませんがね」
「じゃあ、もう負けなしだね!!」
「ええ。ただし、一つ言えることがあります」
「えっ?」
「ミルクはそれが到達点と言いましたが、恐らく違います」
「えっ?」
「主は、今まで属性特化一体化をするたびに特殊な力を身に着けてこられました。きっと、それはこの話の前準備に当たるものでしょう。つまり、既に準備は進んでいるわけです。全ての能力を合わせる準備の」
「つまり、かなり現実的ってこと?」
「そうですね。そして、いずれミルクの仮説が組み上がって現実となる。いつかは分かりませんが。そして、その時起こるはずです。あることが」
「あること?」
レムが外を見つめる。
「レーチェですよ」
「レーチェさん?」
「そうです。それほどの力を持つことになる私達の主は、この世最大の召喚王。その時には、レーチェと契約することの出来る魔石すら容易に作れるはずです」
「そ、そうだね」
「そして、それほどの力を持つ主を、レーチェが気にしない訳がありません。そして、彼女はすでに主を特別扱いしている。つまり、そこまで到達すれば」
「レーチェさんも契約してくれる?」
「だと思います。そして、私達は破壊を手にする。そこが、到達点だと思います」
「……」
「最強で無敵。あり得る話ではないですが、現実に出来るかもしれませんね。私達ならば」
「良いのかな、そんな力が有りえて……」
「さぁ、どうでしょうね。でも、これだけは言えます」
レムは、視線を戻してフィーを見つめた。
「私達は、まだ立ち止まれない」
「……うん!!」
フィーは、その言葉に力強く頷いた。




