参考になりますね
相手は、自分たちと同じ能力を持つ。そのことを、カザネは考慮して考えている。故に、その勝てるかという問いに、安易な返答はできなかった。だから、黙った。
「私も、始めはカザネちゃんと同じ考えでした。皆の力を、マスターに適応できるように合わせる。それだけで、私はどんな敵にも立ち向かえる力が手に入ると思っていました。でも、今回はそうもいかないかもしれません」
「そうですね。本当に我々と敵の能力が互角になるとするのならば、我々が勝つことは難しいのかもしれません。……でも、我々の勝算は高いと私は思っています」
「それは、何故?」
「今、属性特化一体化には、ある問題点があります。それは、一人の意識しか表に出て活動できないということです。この場合、カザネモードなら私、シデンモードならシデンということですね」
「うん」
「ですが、全員が表に出られた場合。それは、各能力のスペシャリストたちが一斉に鎧を使って能力を同時に最高性能で使って攻撃できるということです。その観点から見るに、流石に相手も我々の魔法同時発動には対抗できないのでは?という考えが私にはあります」
「なるほど。通常の一体化みたいになればいいってことだね」
「はい」
「うん、分かった。参考にするよ」
「ありがとうございます」
「それじゃあ、次はシデンちゃんを呼んできてもらっていいかな?」
「はい。失礼します」
そう言うと、姿勢を正してカザネは中庭へと移動する。そして、暫くするとシデンがやってきた。シデンに座ってと手で促してフィーは、シデンを椅子に座らせる。
「こん、本日はお日柄もよく」
「うん。……シデンちゃん、私の強みって何だと思う?」
「フィ、フィー姉さんの強みですか?」
「そう。私の強み」
「……私の個人的な考えなのですが。ご主人様と長く一緒に居られたことじゃないでしょうか?」
「えっ?」
その回答に、フィーは意外そうな顔をする。
「それが、強みになるの?」
「こん、勿論です!!ご主人様と過ごした年月。それは、ご主人様のことを私達の誰よりも知っているということです。それすなわち、ご主人様を一番高みに導く方法を導き出せる。そういうことだと私は思っています」
「マスターを」
「恥ずかしながら、私は自分を優先させていました。ミルク姉さんやレムさんとは違い、己の能力を磨いてご主人様に寄り添おうとしなかった。だから、あのような力は持てても、魔力を同一には出来ませんでした」
「でも、おかげでマスターも、相手の心が読めるようになったよ」
「それだけでは、やはり不十分だったと私は思います。やはり、マスターにもっと寄り添った能力にするべきでした。相手の体内魔力を狂わせて、その動きを完全に止めるとか、幻覚を見せるとか」
「それは、強力そうだね」
「私もそう思います。マスターの周りの魔力に自身の魔力をあわせる能力。あれは、使いようによってはとてつもない能力です。それを、私もマスターと一つになって使えるようになっていれば……」
シデンは、そう言いながらうつむいた。
「つまり、マスターの能力を皆が活かせれたら、もっと強くなっていたかもしれないってことだよね」
「かもしれないではないと思います。確実に強いと思います。カザネさんならば、相手の速度を制限できるようになるはずです。ミエルさんたちなら、相手の破壊をスムーズに。カヤさんなら、そのまま幻覚を現実のものとして相手を倒すことが出来るはずです。ミズキさんなら、相手の魔力体に直接肌をつけるだけで潜り込むことが出来るようになるでしょう。どう考えても強いです。そう、私は思います」
「なるほど。参考になるよ」
「お役に立てて何よりです、姉さん」
「じゃあ、次はミエルさん達を呼んできてくれるかな?」
「はい、分かりました」
そう言うと、シデンは中庭に移動する。そして、ミエル達天使組が入れ替わりにやってきた。
「私達は、4人一緒ですか」
「ま、チームですからね。当然っすよ」
「では、失礼します」
「私も、座らせていただきます」
フィーに言って、ミエル達は椅子に座った。
「ミエルさん達は、不満とか無い?」
「ふ、不満ですか?」
「そう。不満」
「またえらく大雑把っすけど、答えにくい質問っすね」
「不満なんて、あったかしら?」
「ここに来てから、驚くほど自分達の成長を実感できています。食事も美味しいですし、皆さんにも良くしていただいています。私は、不満はありませんね」
「えっと、それじゃあ一体化の能力に不満はないかなぁ。何か変えたいとか?」
「うーん、一体化っすか」
「ある、不満?」
「……難しいお話ですね」
シスラ、サエラ、シゼルが押し黙る。だが、そんな中でミエルのみが口を開いた。
「通常の一体化のお話になるんですけど」
「うん」
「あれ、一体化じゃないですか」
「そうだね」
「ということは、一つの身体に皆の考えが集まってるわけじゃないですか」
「うん」
「もし、同じ鎧を皆が着て庇いあえたらもっと良いんじゃないかなって、思う時があるんですよ」
「え?」
「ミエル様、それって」
「一体化じゃないんじゃ」
「私達の時、ベイさんは同じ力を持つ鎧を、4体出してくれましたよね」
「まさか、ミエル様」
「全員が属性特化の鎧を着ている。そんな事ができたら、どんな相手も連携して倒せるんじゃないかなと、私は思います」
「なるほど。個人個人で動かせる鎧が欲しいと。その方が、連携がスムーズにできると」
「やっぱり、1人では出来ない強みってあると私は思います。ね、皆」
ミエルは、そう言ってシスラ達を見た。
「ま、そうっすね」
「4人だからこそ、出来ることもあります」
「数は強みですからね」
「なるほど。チームプレイっと。参考になります」
「いえ、フィー姉さん。お役に立てましたか?」
「はい。勿論です。ありがとうございます。では、次はカヤを呼んできて下さい」
「はい」
ミエル達と入れ替わりに、カヤがやってきて椅子に座った。
「で、姉さん、あたしはどうしたら良いの?」
「カヤは、一体化の動きに不満はある?」
「動き?うーん、無いかなぁ。あの鎧凄いんだよね。パワーが満ち溢れるし、思ったように動くし」
「そう」
「うーん、あっ、でもあるかも。不満」
「えっ、何?」
「伝えにくいんだけど、属性特化一体化って、主様が違和感なく魔力吸収をやってくれるんだけど」
「うん」
「でも、違和感はないだけで、その感覚はあるんだよね。なんか、主様に無茶させてるなぁって感じ」
「うん」
「それが嫌かなぁ」
「えっと、つまりマスターにもっと楽をしてもらいたいってこと?」
「おお、フィー姉さんその通り。それ、凄い正しい」
カヤは、嬉しそうに軽く拍手をした。




