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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・八部 ???? フィー編
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いらっしゃいませ、フィー姉さんの個人面談

「うーん」


 アリーが唸っている。眉間に指を乗せて、フィーの構成魔力を見ているようだ。すると、秒刻みでアリーの眉間にシワが寄っていく。それが寄りきると、アリーは額から汗を流しだしてその2分後くらいに目を見開いた。


「無理」

「……アリーでも無理なのか」

「なんですと!!」


 あまりの驚きに、普段フィーが喋らないような口調でフィーさんが喋っておられる。なんせ、我が愛する嫁のアリーさんは、超絶万能有能俺の人生のヒロインだからな。アリーさんに任せて不可能だったことなど、数えるほどしか無い気がする。それぐらいアリーは頼れるのだ。しかし、そのアリーがわずか数秒で無理という結論に至った。はっきり言おう。これは無理だ。どうしようもない。


「で、なんで無理なんだアリー?」

「ローリィはね、私が作ったのよ。身体をね。だから、構成魔力が超綺麗に分かりやすく組まれてて今はいじりやすいんだけど、フィーは別。自然に任せて構成された身体なわけね。だから、はっきり言うと一日そこらで構造を理解できるようなもんじゃ無い、そういう訳よ。構造を理解しないで身体なんて下手にいじって良いもんじゃない。だから無理。そう、今はね」

「それって、つまり」

「いつかは出来る。……はず!!」

「はず……」


 あのアリーさんが、はずという。いや、アリーを信じよう。なんせ神才魔法使いだぞ。他に誰を信じるって言うんだ。


「フィー、希望は残っているぞ!!」

「はい!!」


 一握りの希望を胸に、嬉しそうにフィーは頷く。その顔を見て、アリーは頷いていた。眉間を指でトントンと叩きながら。あれは、平常を装っているが、内心で物凄い計算を始めている構えだな。俺には分かる。


「300!!」

「クァ~!!」

「よ~し、次は組手じゃ!!」

「はい!!」

「クァ~!!」


 俺がアリーを見ていると、レーチェを相手に、ロロとジャルクが組手を始めた。筋力トレーニングをした後だからか、二人共、身体に十分に力を入れた動きが出来ていない。どこか、その攻撃はふらふらだ。


「そうじゃ。そうやって力を抜いて、最小限の動きでロス無く最善の攻撃が出来るようにせい。体の痛みを味方にし、無駄のない動きを編み出してみせよ」

「はい!!」

「クァ~」


 なるほど。そういう修行か。理にはかなってるのかな? そんな修行をしたわけじゃないから、俺には効果があるのか分からない。だが、レーチェと組手をするのは確実にいい経験になるだろう。それだけは、間違いないな。なんせ、あまりにも実力に開きがありすぎて全力で戦えるからだ。俺もそうだったからな。全力で戦い続けるのは良いと思う。毎回、己の限界を押し上げられる気がする。


「ほれほれ、すぐに年が明けるぞ。もっと打ってこんか」

「はい!!」

「ク、クァ~」


 若干、ジャルクが辛そうだな。でも、やる気は満ち溢れているようだ。頑張れ、二人共。


「さて、俺達も訓練するか」

「そうですね」

「フィーはどうする?一緒に訓練するか?」

「私、ですか……」


 フィーは、うつむいて考えている。フィーは、戦う覚悟を持たなければならない。覚悟を決めるために、今のフィーには何が必要なのか。それは、俺にも分からない。だから、フィーに任せるしかない。今日は、フィーには好きに行動してもらおう。そう、俺は考えていた。


「マスター、私、皆とお話します」

「皆と?」

「はい、皆とです」


 フィーは、仲間たちを見つめる。そのフィーの言葉に、全員がフィーを見つめた。


「フィー姉さんとの、個人面談ですか」

「ちょっと緊張しますね」

「うむ」

 

 ミズキの頷きに合わせて、全員が頷く。どうやら、1人づつフィーは話をしたいらしい。それが、フィーの仕草で全員分かっていた。流石だな、皆の意思疎通能力は。えっと、それじゃあどうするかな。


「じゃあ、今日の訓練は家で出来る程度のことにしよう。それで、フィーは話したい相手のところに行ってくれ。そうしよう」

「はい」

「よーし、では、始めにお話をするのは誰でしょうか?」


 ミルクが、フィーに尋ねる。すると、フィーはカザネを手招きした。


「……わ、私か」

「気負わなくていいんですよ。自然体でいってらっしゃい!!」

「努力します」


 そうカザネが言うと、フィーとカザネは家の中に入っていった。


「よし、俺達は魔法の修行でもするか」

「あの、外殻を作るやつってどうやるんですか、ご主人様?私も、ちょっと挑戦してみたいのですが」

「私も、興味があります、主」

「じゃあ、今日はそれを皆で試してみるか」


 そう言って、俺は皆に外殻の作り方を説明し始めた。

 

*****


「座って、カザネちゃん」

「はい、失礼しますフィー姉さん」


 カザネとフィーは、向かい合わせにテーブルを挟んで座る。お互いに顔を見合わせると、フィーは話し始めた。


「今度の敵は、手強いです」

「はい。そうですね」

「ですが、私は思っています。皆が力を合わせる限り、決して私達が負ける要素は無いと」

「は、はい!!それは勿論です!!」

「それを踏まえて、皆に聞きたいことがあります。だから、私は皆と話そうと思いました」

「と、言いますと?」

「……私、どうなるのが正解なんでしょう?」

「えっ?」


 カザネは、一瞬質問の意味が分からず聞き返した。


「私、皆の属性特化一体化を見てきました。どれも、皆の個性と能力を活かした素晴らしい一体化だったと、私は思っています」

「はい。私もそう思います。皆さん、それぞれに独自性があって、大変素晴らしいと思います」

「では、その中で私は、何を目指すべきなんでしょう?」

「……ああ~、そういうことですか!!」


 カザネは、質問の意味を理解した。 


「カザネちゃん、何か意見はありますか?」

「……」


 カザネは、うつむいて考える。そして、ゆっくりと顔を上げた。


「やはり、ありきたりで申し訳ないのですが。私としましては、姉さんに皆の力を纏めていただければなと思います」

「なるほど」

「私達のすべての力を、フィー姉さんが束ねて使う。それこそが、我々の最高性能であり、目指すべき一体化の形なのではないでしょうか?」

「確かに、それだけでも強いよね」

「はい。かなり強いです」

「でも……」


 フィーはカザネをまっすぐ見て言う。


「それで勝てるかな?」

「……」


 その問に、カザネは押し黙った。




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