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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・七部 ???? レム編
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一体化説

「……」

「……」


 静かだ。俺とレムはお互いに無言。だが、肩が触れ合う距離で隣同士に座っている。お湯の暖かさとは別に、お互いの体温を感じる。それがとても心地よくて、心が安らぐのを感じた。


「レム、ありがとうな」


 俺は、隣りに座っているレムに顔を向けた。その顔は、お湯で暖かくなったからか、熱を帯びていてとても色っぽい。お湯で大半が隠れてしまっているが、レムのプロポーションは抜群である。その上に、お湯の水滴が乗っていて、それがレムが動いたことで滑り落ちた。レムの胸から。その光景に、俺は目を奪われそうになったが、レムが俺を真っ直ぐに見てきたので視線をそっちに合わせた。


「皆にも、俺は感謝している。だがレム、お前がいなければ、俺達はここまで来られなかっただろう」

「……そうでしょうか?」


 レムは、俺の言葉を本当にそうだろうか、と思っているように聞き返してきた。


「ああ。俺には、あまり特別な力がない。他の魔力に自身の魔力を合わせられるというのも、気づいたのはライアさんと出会ってからだ。しかも、その力だけではあまり意味がない。強さを得られない。だが、レムが居てくれたから、俺は、俺達は一体化という力を得ることが出来た」

「……」

「きっと、レムが居てくれなかったら俺達は、これまでに出会った無茶苦茶な強さの強敵にも勝てていなかったかもしれない。それに、レムは俺の剣術の師匠だ。レムが居なければ、俺はここまで強くなれなかったかもしれないな」

「……」

「だから、ありがとうレム。共に居てくれて」


 俺がそう言うと、レムは、俺の真正面へと移動した。そして、俺の肩へと両手を置く。


「それは違います、主」

「えっ?」


 レムは、そう言いながらぐいっと俺の方に身を寄せてきた。


「主は、勘違いをしておられる」

「勘違い?」

「そうです。この力、私が進化して得た物の一つです。そもそも、私は一体化などという力を持っていなかった。迷宮を、強者を求めて彷徨うゴーレムでしかなかった。その私が、こんな力を持てたのは、貴方が居てくれたからです、主」

「た、確かにそうだが。しかし、それでもそれはレムが得た能力だから」

「主。貴方を守りたいと思ったこと。嘘ではありません。しかし、何故それで私が貴方の鎧になったのでしょう?守るのなら、自身を強くするのでも、固くするのでもいい。ですが、私は貴方の鎧となった。何故だと思いますか?」

「何故って、俺にも分からないんだけど……」

「私は、あの時自主的な意識が芽生えたばかりで己の願望など希薄でした。ですが、強くなりたい。貴方を守りたいとは思っていた。その時、私の目の前に別の鎧がいた事、覚えていますか」

「ああ。あの黒い鎧だろ」

「はい。それで、もしその鎧を見た主のイメージと、私のイメージが重なったとしたら、どうでしょう」

「……えっ」


 レムは、更に顔を近づけて話を続ける。


「そもそも、おかしいと思いませんでしたか?ミルクの服装。あれには、主しか知らない国の文字が書かれている。それは、何故なのか。ニンジャすら知らないミズキが、今は主も認めるほど立派にニンジャらしい進化を遂げて活動している。それは何故なのか。私にはもう、答えは出ています。我々の進化は、つまり、主の願望・知識を反映させて進化しているのです!!」

「な、なんだって~!!!!」


 そ、そうだったのか!? 思えば、前に考えた進化の法則にそんなのあったなぁ。いや、そう言えばそうだな。そんな都合よくミルクの羽織に、牛の漢字なんて普通かかれないよな。進化の神秘だと思っていた。というか、服装ぐらいある程度好きな形に出せるみたいだから、特に気にしてなかった。最近は、よく自作してるし。


「だから、私が鎧になったのも、主の守るというイメージがそちらを向いていたからじゃないかと思うのです」

「俺が、鎧を見たから?」

「そうです。だから、私は鎧になった。そして、鎧とは本来人にとっては武装。つまり、着るものです。それこそが」

「一体化?」

「はい」


 レムは、更に顔を寄せてくる。もう、これ以上近づくと唇が触れ合ってしまう。


「つまり、一体化を得られたのは、主のお陰です。私を通してではありますが。9割ほど主のお陰です」

「そ、そこまでか」

「ええ、勿論です。そして、この能力は私で無くともいずれは得られていたものでしょう。ミルクが、主の力を伸ばして相手の魔法操作を可能にしたように。主の仲間の誰かが、貴方を強くしたいと思って進化していれば、たどり着いていたはずです。一体化でなかったとしても、それに似た能力、力を得ていたでしょう」

「そ、そうかなぁ……」

「そうです。だから、私にありがとうを言う必要はありません。むしろ、私が言わせて頂きたいくらいです。ありがとうございます、主。このような力を、私にくださって。貴方を、守る力をくれて。私は、とても嬉しいんです」


 そう言うレムの顔は、とても真剣だ。言葉にも、熱が乗っている。いや、でもレムが居てくれたからだよ。本当は、そう言いたい。でも、いまレムに言うと、また別の角度からありがとう返しをされそうだったので黙っていることにした。


「……ですが、正直に言います。この力、私しか持ち得ないと思います。私が持たずともと言いましたが、私しか持たないと思います」

「えっ?」

「だって、主と私はきっと出会わないなんてこともないでしょうし。主を守ろうと思うのも、私が一番先のはずです。ですから、一体化を得るのは私だと思います。いえ、だからこそ私しか得られないんだと思います。だって、私はきっと、主とそういう運命の糸で繋がっていますから」

「……そうか。そうかも知れない」

「はい。きっと皆、主と繋がっているのでしょう。だから、主と出会えた。だから、貴方と共に強くなれた」

「そうだな。俺が、皆を見逃すはずがない。特にレムなんてそうだ。あの時は、絶対に仲間にしてやるぞって思ってたもんな」

「ありがとうございます。ただのゴーレムでしかなかった私を、そんな風に見てくれていた。やはり、主は皆と繋がっているんですよ。だから、この力も必然のはずです。私と、貴方の絆の証」

「俺達の力、ってわけだ」

「はい。私と貴方の、特別な力。主も、皆も守ることが出来る。とても大きな力……」


 レムは、そう言い終えると立ち上がる。そして、俺に背中を向けた。


「ですが、それに甘えているばかりではいけません」

「……」

「私、今は目標があるんです、主」

「目標?」

「ええ。覚えていますか。レーチェが、我々一人一人が創世級の相手をして創世級迷宮の崩壊を防がなければいけないという話を」

「ああ、覚えてる」

「私、主を守れなかったことがあります。主との絆の証、一体化をもってしても」

「……」

「ですが、安心してください、主。私が、あれを殺しましょう。いえ、殺さなければいけません。だって、私の中に、未だに消えぬ怒りがあるのですから」


 な、なんと安心感のあるセリフだ。他の誰でもない。レム先生が言うと安心感が違う。それに、あの背中から発せられている気迫を見ろ。死亡フラグすら、裸足で逃げ出すぞ。やばいな。剣神を本気にさせている。今は、敵にするのも恐ろしい創世級だが。何故だか、少し可哀想に感じた。まぁ俺、そいつに殺されてるんですけどね。


「……ところで主」

「はい、レム先生」

「そろそろ、身体を洗いませんか?」

「……」


 そう言えば、ここお風呂だったな。ちょっと忘れてた。




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