食事睡眠
「う~ん、このプランで今の体型だと、胸の部分に変な突起が出来ることになるわねぇ~。いっそ、増設しようかしら」
「……」
俺は、何かヤバイことを言っているアリーの横を通りずぎて、2人をベッドへと運んだ。
「……マスター」
「フィー、どうした。不安そうな顔をして」
2人を寝かせると、フィーが俺の内から出てきた。それは、不安にもなる。レーチェに、フィーと契約を切れと言われたんだからな。しかも、フィーがいることが、まるで俺の邪魔になるような言い方だった。だが、俺はフィーが不安になる必要はないと思っている。だって、俺にはフィーが必要だから。
「フィー」
「はい」
「ずっと、一緒にいてくれるよな」
「は、はい!!勿論です!!」
「なら決まりだ。不安なんて無い。俺達はまだ、ミルクや、レムと同じように魔力で繋がってないかもしれない。でもな、フィー」
「はい」
「俺達は、もう心で繋がってるだろ」
「は、はい!!」
俺は、フィーを抱き上げた。そして、強くフィーを抱きしめる。絶対に離さない。そう言うかのように。
「不安なんて無い、だろ」
「はい。絶対に、大丈夫です」
「当然だ。俺とフィーは、最高の相性だからな」
あの日、フィーと出会ってから駆け抜けてきた日々が、俺とフィーとの絆の深さだ。その絆の前で、何が障害になれるだろう。もしそれが障害だとしても、成長するための壁の一つにしか過ぎない気がする。俺達が、離れ離れになる未来などありえない。そう、俺は思った。
「……フィー」
「はい、マスター」
「……ごめん。めっちゃ腹が減った」
多分、俺のお腹の音が、フィーにはよく聞こえていると思う。すごい抱きしめてるからな。
「ふふっ、ご飯にしましょうか」
「ああ、そうしよう。この件は、また後日レーチェに聞いて確認するとしよう」
「はい」
俺達は、そのまま台所へと向かった。
「そう言えば、レムは皆みたいに名乗らなかったですね。思いつかなかったんですか?」
「名乗りかぁ。私の場合、主のための鎧ってだけだからなぁ~」
「でしたら、この世最強の召喚王の鎧ということですね。つまり、召王神鎧・レム・アルフェルト!!」
「なるほど、いい考えだアルティ。それにしよう」
キッチンでは、ヒイラ達がのんびりと料理していた。それを、レムとミルク、アルティが手伝っている。
「ヒイラ~、腹減った~」
「ん、待ててねベイ君。今盛り付けるから。丁度出来て良かったよ」
ヒイラが、そう言ってスープをお皿に盛り付ける。良いなぁ~、エプロン姿のヒイラ。お腹も減ってるからか、今のヒイラが母性の塊に見える。こんなお嫁さん最高だろ。そう思いながら、俺はヒイラを見ていた。
「あれ、そう言えば、アリーちゃんは?」
「お、アリー!!ご飯にしよう!!」
「拡張部分は胸だけでいいかしら。しかし、どこまで詰め込むか。いや、それは拡張した魔法回路の大きさによることにして、出来るだけ既存の回路を改変して、圧縮。新しい魔法回路を……。ハッ!!はーい!!」
アリーからの返事が遅かった気がするが、声は届いたみたいだ。それで良しとしよう。取り敢えず、俺達は晩御飯を食べることにした。
「ふぅ~、ご馳走さまでした」
「いっぱい食べたね、ベイ君」
「ヒイラ達の料理が美味しすぎるからなぁ~。もりもり食べれてしまう。……あれ、さっきまでレーチェいなかった?」
「レーチェさんなら、もう寝るって、すぐに食べてお風呂に行ってたけど」
「まじか。話聞こうと思ったんだけどなぁ~。明日にするかぁ~」
「急用?」
「いや、レーチェが焦ってなさそうだから、多分大丈夫だよ。今度にする」
そう言って、俺は席を立った。
「俺も、風呂に行こう。……眠いけど」
「そう言えば、ベイ君、今回は倒れないんだね」
「あ、そう言われればそうだな。修行の成果か?」
レムモードでは、結構な間力を使っていた。倒れていてもおかしくはなかったが、まだ俺は大丈夫みたいだ。流石に、身体はだるいけども、風呂に入れる余裕がある。いや、下手すると風呂場で寝るかもしれないなぁ。
「皆、集合!!」
「はい、ご主人様!!」
「よしシデン、良い返事だ。皆、お願いしたいことがある」
「どうしたの、主様?」
「カヤ、正直俺達、風呂場で寝るかもしれない」
「そうですね」
「一応、疲れてますからね」
「全員、まだ起きてるっすけど、時間の問題だと思うっす」
「主人、それでどうするのですか?」
「皆、俺が寝ないように見てていただけませんか。というか、お互いが寝ないように見合おう。じゃないと、最悪風呂場で溺れる」
「ということは?」
「ご主人様と、お風呂ターイム!!」
「「わっしょい!!わっしょい!!」」
俺は、皆に担ぎ上げられる。そして、そのまま風呂場まで連れて行かれた。
「ふふっ、良い連携だね」
「ああ、全くだ。さて、私達は後片付けをするとしよう」
「そうだね、サラサちゃん」
「移動は飛行メイン。遠距離の射撃精度を上げるために、そのへんの機能の調整をして。あとは、今までの鎧だと危ないから、形も変えられるように」
熱心に考えているアリーを残して、残りの女性たちは、後片付けを始めた。
「よし、入るぞ」
「「おお~!!」」
俺達は、揃って風呂に入る。そこには、もうレーチェの姿はなかった。やっぱ、明日聞くしか無いか。
「はぁ~、いい湯だねぇ~」
「本当」
かけ湯をして、皆が風呂へと入る。その中で、ミエル達はすぐに身体を洗い始めていた。
「えっと、これが……」
「ミエル様!!もう、寝かけてますよ!!」
「そうっすよ。だらしがないっすよ、ミエル、さ、ままま」
「シスラも!!」
サエラとシゼルが、2人のサポートをして、何とか身体を洗い終える。そして、2人も体を洗い終えると、ミエルとシスラをサエラ達が担いで風呂場を出ていった。俺に、視線で目配せして。
「えへへ、ご主人様~」
「よしよし、シデン。ところで、その体勢で俺に抱きつくと、眠くならないか?」
「……」
「シデン、落ちましたね」
「ミルク、頼んでいいか?あと、さっきから俺の腕に抱きついて寝ている、フィーも一緒に」
「フィー姉さんも!!わ、分かりました!!ささっと洗って、2人をベッドへとお連れします!!」
「ああ、頼んだ」
「了解です!!」
そういうと、本当にささっと2人と自分を洗って、ミルクは二人を担いで風呂場を出ていった。
「しかし、珍しくカザネが長湯してるな」
「……」
「既に寝てますね」
「こんなにいいお湯なのに、すぐに寝ちゃあ勿体な……」
「カヤも寝ましたね」
「ミズキ、頼む」
「承知。では、レム。あとは頼みました」
「ああ、任せてくれ」
ミズキは、2人を洗って。いや、洗ったのか? 一瞬すぎて分からなかったが、多分洗った。ミズキ自身も。そして、2人を担いで風呂場を出ていった。
「いいお湯ですね、主」
「ああ、そうだな、レム」
俺は、レムと2人でお風呂場の湯を眺めた。




