牛と牛乳
「いやぁ~、新年ですねぇ。ご主人様」
「そうだなぁ……」
俺達は今、家の部屋にいる。新年といっても、ここは日本じゃない。こたつもなければ、お餅もない。おせちもない。こればかりは、故郷が恋しい。文化は偉大だと実感する。でもいいんだ。俺には、可愛いお嫁さんがいるし。と言っても、新年に、この国で何も行事がないというわけではない。家族で集まったり、お店が休みだったり、安売りが始まったり。そう言うところは、ここらへんでも行われているようだ。その結果、新年でも朝のキスだけで、アリーはしばらく実家にいることになった。夜は泊まりに来るらしいけど。夜、早く来て……。
「新年といえばアレですよ、アレ」
「あれ?」
なんだ、何かあったか? そんな年間行事的なこと、家ではやってないぞ。新年は、訓練なしで休みにしている程度かな。
「何って、乳搾りですよ」
「?」
何を言っているんだ、ミルク君……。
「どういうことだ?」
「新年というのは、年の始めです。今年も家族が元気で過ごせるように、家族で集まって過ごす風習があるのだとか……」
「ああ、そうだな」
「しかも、元気で過ごせるように、その際は栄養価のあるご飯を皆で食べるという、家族団らんもあるとか……」
「ああ、まぁ、いつもやってることだけど、そう言う話も伝わってたなぁ……。家も、今日の朝食は、少し豪華だったな」
「ふふふ、ご主人様。後は、お分かりでしょう。ここに、かなりの栄養価を持つ、素晴らしい物があるじゃないですか……」
ゆさ、ゆさっとミルクの爆乳が揺れる……。やばい、目が離せない。
「いやいや、ちょっと待て。フィーがそれは、手伝う事になっていただろう。何故、わざわざそれを俺に言う」
「何故って、そりゃあ、ご主人様に搾っていただくためですよ?」
可愛く、首を傾げるミルク。いやいや、おかしい。前までならまだいい。だが今のミルクは、牛耳や角や魔物である以外は、どう見てもロリ巨乳だ。いや、ロリ爆乳か? ともかく、絵面がやばい。
「いや、でもお前、俺が触ると変な声出すだろ……」
「そりゃあ、愛する人に敏感なところを触られたら……、テヘッ❤」
テヘッ❤、じゃない!! 可愛い顔をしていても、やはり中身はミルクだな。あざといやつだ。今は美少女だから、更に困る。
「ほら、やっぱり前みたいに、搾るところまで俺じゃあいけないだろう。……だから、やめておこう!!」
「えー!!そんなぁ……。私、今年はご主人様のために、いっぱい働きました!!!!美少女にもなりました!!せめて!!せめて、ご褒美だと思って!!!!」
やはり、己の欲望全開じゃないか、この牛わ。
「エロ牛……」
「ふふふ、ミズキ!!私だけではありません。ここにいる仲間の誰もが、ご主人様に胸を触って欲しいと思っているはずです!!そうでしょう!!!!あと、胸が張ってきているので、搾りたいというのもあります……。が、ご主人様に搾ってもらいたいという欲求が、高いのは否めません!!!!」
やはり、欲望を優先しているじゃないか!! あと、皆が自分の胸を見ている。フィーが自分の胸を見て、腕をポンと叩くと、ミルクの能力を使う姿に変身する。だが、フィーの胸は変わらなかった。フィーは、静かに落ち込んでいた……。俺はフィーを抱きしめて、頭を撫でた。しばらくこうしてあげよう。
「あっ、いいなぁ……。主様!!私も!!」
後ろから抱きついてきたカヤを、片腕で撫でてあげる。嬉しそうな顔を浮かべると、そのまま俺に頬ずりしてきた。うん? レムも何かそわそわしているようだ。手で来るように言うと、近づいてきたレムの頭を撫でる。レムは頬を赤く染めると、お辞儀をして元の場所に戻って座った。
「むむむ、皆さんやりますね……。ご主人様!!私は、乳搾りで!!!!」
いや、だから問題があるって!!!!
「……どうしてもか?」
「ああ~、胸が張って辛いですねぇ~。ご主人様が搾ってくれれば、楽になるんだけどなぁ~。私、去年いっぱい頑張ったんだけどなぁ……」
「ぐぬぬ!!」
「ふふふ、でも、ほら……。なんだかんだ言って、ご主人様も触りたいんですよねぇ~」
ミルクの胸が、ぶるんぶるん揺れる。ミルクの腕で、形をふにゃふにゃ変える。そりゃあ、そんな物体、男女関係なく触りたくなるに決まってる。あまりに見事すぎて、他の人に見せたいですか? と言われたら絶対にNO!! と即答するだろう。ミルクの胸は、それほど威力がある。本人には言わない。調子に乗るから。あと、そのまま俺が、あの胸に溺れさせられそうだから……。
「さぁ、ご主人様。覚悟をお決めになってください」
ミルクがいつもの、牛乳缶を出す。いつの間にか、デフォルメされたミルクの絵が中央に描いてあって、ミルク牛乳と言う文字も添えられている。しゅるしゅるとさらしをミルクが外すと、その超弩級の胸が解き放たれた。表向きは、冷静を保っていた俺だが、この時ばかりは、その迫力に思わず生唾を飲み込んだ。と言うよりも、俺以外の全員も、ミルクの胸を見ている。それほど力があるのだ……。それが今は、逆につらい状況を生んでいるが。
「フィー姉さん、隣、失礼しますね……」
ミルクが、フィーと一緒に、俺の膝に座る。ああ、いいね。ミルクとミルクの格好のフィーが、並んで座ってるの。可愛い。だがミルクは、そんな俺の考えをよそに、胸に俺の腕を持っていく。
「あっ❤」
可愛い声が漏れた。やっぱ駄目だな!! 明らかに、牛乳を搾るどころの話では無くなっている。と言っても、ミルクはこのチーム一番のパワーファイター。こうなるともう、俺は逃げることもできない。
「ほら、大丈夫です、ご主人様。私が、補助してお手伝いしますから、うんっ❤」
「あ、ああ……」
なんというか、それから数時間は、気まずい時間を俺は過ごした。柔らかかった……。終わった後は、ミルクは俺にべったりだったし、落ち込んだフィーを慰めなければならなかったり。まぁ、色々大変だった。これが、飼い主の苦労というやつだろうか。今年も、色々苦労しそうだ……。でも、悪くはない。胸がとかじゃなくて、皆と過ごすこんな時間が……。
*
「……」
「あ、あのアリーさん」
「えへへ、ご主人様~❤」
アリーが来ても、ミルクはまだ離れない。アリーの目が、鋭くなっている。怖い。
「ベイ……」
「は、はい!!」
アリーが、無言で俺を抱きしめ、そのままキスをする。長く、ゆっくりとしたキスだ。お互いに顔を離す頃には、二人共、顔が真っ赤だった。
「今年もよろしくね、私の旦那様!!」
「う、うん。よろしく、俺のお嫁さん!!」
今年も大変だろう、だがきっと幸せのはずだ。この皆となら。その後、俺が皆にもみくちゃにされたのは、言うまでもない。