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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・七部 ???? レム編
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剣神圧倒

 衝突する2つの斬撃。レムの斬撃とクローリの斬撃。両者の斬撃には、違いがあった。レムが振るっている剣は、現在一刀を両手持ちしている。片やクローリの斬撃は、空間に増やした無数の腕から放たれていた。それら全ての斬撃を、レムは剣一刀で全て凌ぎ切っている。


「……速度は、こんなものか」


 レムは呟く。レムの周りは、クローリの斬撃によって地面すら消えている。クローリの転移魔法を用いた斬撃。それは、ありとあらゆる物質を両断する威力を持っている。だが、それはレムには、どうでもいいことであるようだった。特にその威力すら気にすることもなく、レムは自身の斬撃を当てることで、クローリの斬撃を反らす。


「……」


 クローリは、無言だ。無言で、剣を振るい続けている。クローリの目には、何が見えているだろうか。驚きか。はたまた賞賛か。どのような気分だろう。自身の最高威力に近い転移魔法での斬撃。それが、身体能力と技量に任せて放たれている通常の斬撃に全て反らされているという事実。それを、クローリは分かっているのだろうか。


「さて、次だな」


 レムは、剣を片腕に持つ。そして、隙きすらも見せず、盾を片腕に出現させて装備した。


「さて……」


 レムは、試すように盾での斬撃の受け流しを始める。盾が、最初は少し削れた。しかし、徐々に盾の損傷は減っていく。そして、盾を持つ手の動きがある程度早まった頃、クローリの空間に出した腕の一本が、突如として切り裂かれた。


「!?」

「一つ」


 それは、速度を上げていく。5秒後に、2本目の腕が切り裂かれた。次に、2秒後に3本目。そして、その次からは、たて続けざまに空間に生えている腕が切り裂かれ、消えていった。そして、クローリが生やしていた腕は、その場から全て消えた。


「フッ……」


 クローリは笑う。何故なら、クローリの魔力は、最早無限に近い。この星という魔力供給機関を通して、クローリは無限に魔力を使える。つまり、一瞬にして先程よりも多くの腕を、空間に生やすことが可能であった。クローリは、笑いながらも新たな腕を空間に生やそうとする。しかし、その腕が完全に辺りを埋め尽くすことはなかった。それどころか、どれ一つ、完璧には腕という形状をなすことが出来ていない。そう。恐ろしい事実なのだが。クローリが腕を生成する速度よりも、レムの斬撃のほうが速いのだ。


「……」


 恐らく、クローリの頭の中は、はてなが渦巻いているんじゃないだろうか。訳がわからないと思う。恐らく、クローリとしては、腕を同時に生成しているつもりだろう。だが、実際のところ、生成するのには意識を向ける必要があるため、一つずつに若干の生成のタイムラグが有る。はっきり言うが、それは人間の感覚の中では、同時と同じだ。どこかずれてる? と言う程度のズレでしか無い。だが、レム相手にそれは通じない。その短い期間で、レムは切り終える。魔法を、魔法を使わない斬撃で。


「片腕でも、十分な速度が出るな。どうする魔王。これで終わりか?」


 残念ながら、相手が悪い。クローリの無限の魔力。それは、確かに使い方次第では途方もない強さを生み出す。だが、目の前の剣神には、そんなもの関係がない。それを使う前に、レムは切り終える。


「良いだろう。小手先の技には頼らない。全力で、君を消す」

「……来い」


 そう。始めから、そうするべきだった。クローリは、全身から転移魔法の魔力を放って空間を覆っていく。その空間に飲み込まれた者は、転移魔法の魔力によって全身の構造組織をシャッフルされて、細切れになって絶命する。まさに、最悪な魔法とも言えるが、レムはその魔法を前にしても動かない。ただ、剣を横薙ぎに振るう。すると、転移魔法で出来た空間に亀裂が入り、中にいたクローリの体ごと、その空間は両断された。


「チッ!!」


 クローリの身体が、一瞬で修復される。だが、転移魔法で出来た空間は消滅した。


「何だ、その強さわ!!」


 クローリは、今度は転移魔法の魔力を、まるで雨のように拡散させて腕から放出させてきた。これを、レムは初めて回避する。クローリは、レムを捉えようと腕を動かすが、レムには一滴も魔法が当たらない。両腕で、両サイドから挟み込むようにクローリはレムを追い詰める。だが、追い詰めた瞬間、レムの姿が消えた。


「転移魔法か!!」

「使えないと思ったのか?」


 レムが、背後からクローリを両断する。しかし、またしてもクローリはすぐに傷を再生した。


「何度やっても同じだ!!私の再生を止めない限り、君に勝ち目はない!!」

「どうかな?いくつか教えてやろう。一つ。お前の魔法発動速度よりも、私の斬撃は速い。2つ。私には、お前が何の魔法を使うのか見えている。3つ。まだ、私は本気じゃない。いや、違うか。まだ本当の力を使っていないが正しいな。さて、魔王よ。まだ、私を楽しませる物はあるか?」


 残念なことだが、このレムモードになって分かったことがある。レムの切ろうとしている相手。それは、クローリではない。いや、今切っているのは間違いなくクローリなのだが。レムが切ろうとしているのは、音速をも超えた鳥。すなわち、幻音神鳥。いわゆる、カザネモードだ。レムが、切り合わせようとしている目標がそれだ。カザネモードを切り払えるようにと、今のレムは思って剣を振るっている。はっきりというが、そんな速度にクローリが追いつけるはずがない。


「くっ、馬鹿な。この私達が、たった1人に圧倒されるなど……」

 

 クローリは、魔力を使って自身の身を強化していく。己の身体を、限界まで強化して、クローリは剣を振るった。それは、ありとあらゆる生命を死へと導く渾身の斬撃。しかし、剣神の前には、ただの雑な一振りでしか無い。


「……」


 無言で、レムはクローリの腕を切り飛ばした。先に放たれた斬撃よりも早く、レムはクローリの腕を切り飛ばす。だが、その事実に驚愕することもなく、クローリは笑った。


「剣を、振るったな」


 今のレムには、遊びがある。自身の能力が、圧倒的すぎるためだ。それは、遊びというよりは、性能試験に近いが。クローリには、同じことだ。レムは、クローリを完全に殺そうと思って今は剣を振るっていない。その事実に、クローリは気がついた。だから、その事実を最大限に活かすために、クローリはわざと隙きだらけの攻撃を仕掛けてきたのだろう。それを、レムは無造作に切り払った。その一瞬。クローリは、ある魔法を使う。それは、自身を起点として発動する魔法。


「ウオオオオオオオオオオ!!!!!」


 クローリの身体が、細かな黒い霧へと変化していく。それは、明確には物質ではない。つまり、切れないのだ。クローリは、身体を巨大な黒い霧の塊へと変化させていく。その霧に飲み込まれた土地は、腐食し、岩さえも溶けて消えていった。


「さぁ、どうする?これでも、まだ私を切れるか?」

「……ああ~。いつか見た黒い化物ようだ。我らの主を殺す直前まで行った化物。それに、今のお前は近い。切れるかだと?切れるに決まっている。だがな、今私はお前を消したい。故に、見せてやろう。私の本当の力お」


 そう言って、レムは体の力を抜いた。



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