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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・七部 ???? レム編
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剣神技鎧

 即座に剣を切り替えして、クローリはレムへと再度斬撃を繰り出す。しかし、結果は変わらない。レムへの斬撃は、神業とも呼ぶべきレムの受け流しであっさりと軌道を変えられてしまう。その結果、クローリには、一瞬の隙が出来た。その隙は、俺達にしてみれば隙とも呼べないほど僅かな時間だが。しかし、レムからしてみれば、逃すはずのない大きな隙だった。その瞬間、レムは剣を一閃する。すると、クローリの片腕が宙を舞った。


「フッ……」

「……」


 一瞬だが、クローリは驚きの表情を見せる。しかし、飛んだ腕にかまうこと無くクローリは、攻撃を再度繰り出した。その再度の攻撃の過程のうちに、クローリの吹き飛ばされた片腕は再生していく。だが、斬撃を繰り出すたび、隙が出来る度、レムはクローリの一部分を斬撃で切り飛ばしていった。その度にクローリは攻撃動作とともに再生し、またレムへと攻撃を繰り出し続けた。


「……」


 クローリは、ただ闇雲に攻撃を繰り出しているわけではない。攻撃する度に、自身を強化して攻撃速度を上げている。底無く強くなれると言ったクローリの言葉通り、今の今まで、クローリはその速度を上げ続けてきた。しかし、それでもレムに決定的な一撃を放てない。しかも、その中でクローリは、体の一部を切り裂かれ続けている。恐ろしいのは、クローリではなく、レムだ。聖魔級である。今のレムさんは聖魔級だ。しかし、創世級とも呼べるべき力を持つクローリを、レムはものともしない立ち回りで切り裂き続けている。これが、本当に神魔級にも達していない魔物の実力なのだろうか。やはりレム。お前は、うちのエースだ。


「何故だ!!何故当たらん!!合体もしていないのに!!」

「私は、貴様とは違う。我が鎧は主のため。我が技術は主のため。貴様のように、己の私利私欲で鍛えていない。貴様とは、技術の物が違う!!」


 レムは、自身が動く度、切りつけて自身の体が疲労する度、少し回復し。その回復分だけ身体能力が成長して強化される。だが、はっきり言うと、それはとても小さなものだ。勿論、普通の生物が戦うのならば、これ以上の脅威はない。だが、それよりも今のクローリの攻撃速度は増加率が上だ。決して、レムに斬撃速度で負けているわけではない。しかし、それでもレムには攻撃がはいらない。それは何故か。


「貴様の剣技は荒い。パワーのみに頼っているから、そうなるんだ」

「私の剣技が、荒いだと!?」


 戦っている分には、分からないだろう。しかし、遠目から見ているこちらにはよく分かる。レムの動きには、無駄というものがない。全てが、美しい最低限の動きをしている。相手の動作を流し、斬撃を放つ。そこに、一滴の無駄も存在しない。まるで、流れる水のようにその動作は、崩れることがなく綺麗だ。一つ一つの動作が、一個の完全な流れとして成り立っている。そこに、クローリは入り込むことが出来ない。レムという激しい流れに、クローリは何もすることが出来ずに立ち尽くしている。今は、そんな状況だ。


「くっ、体の魔力密度も高めているのに、何故こうも簡単に私の体が切り裂かれるのだ!!あのライオルですら、全力でやっとだったのに!!」

「それは、貴様と私の相性の問題だ。私は闇属性。貴様を構成している肉体と、同じ属性の使い手だ。私は、斬撃に乗せて、魔力で貴様の体の構成魔力を相殺して崩している。ゆえに、斬撃があっさりと貴様の体を切り裂くのだ。まぁ、貴様には見えていないようだがな」

「何だ。何だそれは。お前は、何が見えているんだ」

「今まで、何と戦ってきた?圧倒的な速度を誇る神鳥はどうだ?記憶から死者を蘇らせる死神わ?増える機械仕掛けの天使わ?魔法を破壊する炎神、はたまた海底の邪神、そして、世界を破壊するヤギを相手にしたことがあるか?私達はあるぞ。そして、全てと戦って、私達は生き残ってきた」

「……」

「悪いな。貴様とは、戦闘の経験値が遥かに違う」


 レムの踏み込みが、一際大きくなる。すると、レムとクローリの攻守が逆転した。


「なっ!?」

「マジかよ……」


 思わず、俺がそう呟くほどだ。クローリは強い。だが、圧倒的な技術は、それすらも完封する。それを、今目の前でレムが体現していた。正直、意味が分からない。いや、理屈は分かる。相手の攻撃動作や、防御動作が終わる前に自身が動いて、相手の動作を封殺し、こちらは攻撃する。それをしているだけだ。だが、やろうと思って出来るか? レムは、クローリが動かそうとした身体の一部分を的確に切り飛ばして動作を封じている。そして、相手がその後動かそうとした部位すら、自身の流れるような攻撃速度で切り落とし、クローリの動きを完全に封じていた。圧倒的。圧倒的過ぎる。まさに剣神。これが、今のレム・アルフェルト。


「馬鹿な!?」


 いや、本当にそう思うよ。一体化もせずにこれだもんな。下手すると、レム1人のほうが強いぞ。そんなことってある? 有り得ないよ、普通。だが、それを体現する。それがレムだ。流石、俺の師匠。並どころか、強者すら飛び越えている。まさに達人。


「シッ!!」


 クローリの四肢を切り飛ばし、レムはクローリの胴体を最後に真っ二つにする。すると、距離を取るためにレムは後ろに下がった。


「フ、フフッ。フハハハハ!!いやぁ、凄い。凄いぞ、ベイ・アルフェルト。彼女のような魔物を、よく見つけられたものだ。素晴らしい。素晴らしい逸材だ」


 真っ二つにされた、クローリがそういう。クローリは、切られたところから血のような黒い液体を発生させると、それをつなぎにして、自身の肉体を復活させていった。そして、あっという間に身体を再生する。


「チッ」

「だが、彼女でも私の再生は防げぬらしい。これでは、まるで意味がないな。私を、殺し切ることが出来ない」

「どうかな。お前が、まだ手を隠し持っているから、レムはそれをしないだけだ。俺も、だからライオルさんを回復しに行けない。あまり、俺達を待たせるなクローリ。お前の力は、その程度の物なのか?」


 正直、そんなこと1ミリも思ってない。強すぎる。もう、これ以上強くならないで。そうとしか思ってない。だけど、これでは同じことの繰り返しになる気がする。少し、煽りを入れておいたほうが良いだろう。


「そうだな。君は分かっているようだ。君が動けば、ライオルが完全に死んでいたであろうその事実に」

「ああ。どうせ、お前の仲間がいるんだろう。分かってたさ。殺気が凄いからな」

「フフッ。だそうだぞ。バズラ。ベイル、ミゴール、フォート、スビア、ザルシュ、デイク、アビマよ」


 その次の瞬間、クローリの肉体の中から、そいつらは外に出てきた。クローリに従う闇の魔物の精鋭。それが、俺達の前に姿を現した。



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