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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第ニ章・一部 仲間を探して
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目標

 あの日からそれなりの日々と時間が過ぎた。


 世界崩壊などという余りにも信じるには難しい事実。だがそれを、確かめないわけにも行かず俺達は、その事実を確認するために日々の時間を使っていた。そして、俺達は一つの真実を知る。


「昨日の感覚と比べると、確かに感じる魔力量が微かにだが違う。どこまでが迷宮としての機能を維持できるラインなのかは分からないが、この調子だと……」


 20年。恐らく良くてそれぐらいしかもたないだろう。


 勿論、所詮は感覚的にというだけなので本当はもっと長いかも知れないし、短いかも知れない。


 もしかしたら何かが原因で迷宮の消滅が早まる可能性もあるかもしれないし。俺達の見積が甘すぎて本当は、10年もないのかもしれない。


 正直に言うと俺の最初の想像よりも、ずっと残されていた時間は少なかった。数日調べたが、迷宮から感じる魔力量は減るばかりで増えはしない。崩壊しないという可能性にかけて日々を生きるということは出来ないだろう。


 その上俺達は、知ってしまった。創世級迷宮に近づいたことで自覚してしまったことがある。それは、この迷宮が本当に化物の巣窟であるという事実であった。


 創世級迷宮に近づいたことで俺達は、自分達がまだちっぽけな存在でしかないことを自覚させられた気がした。一体化という強くなれる力があったことで俺達は、少しだけだが自分達の力に自信を持っていた。しかし、それは余りにも甘いものであった。 


 一体化した俺達ですら創世級迷宮を目の前にして、体が寒気を覚えて前に進むことが出来なかった。迷宮の入り口にすら俺達は、立つことも近づくことも出来なかったのだ。本当に、あの中には化け物がいる。俺達は、それを肌で心で理解した。そして化け物共と俺達の力の差は、勝つという希望を今は簡単に見失うほどにとても大きかった。


 さて、そんな状況の中で今俺達が何をしているかというと、修行だった。勝てないと感じはしたが、何もしないと言っていられる状況でもない。やれるかは分からないが、やらなければいけない気はする。だから俺達は、諦めることよりも進むことを選んだ。


 と言っても焦りを覚えて我武者羅に修行をしていた訳ではない。確実に創世級に対抗する力をつけるために、とりあえずの目標を俺達は立てた。


「主、聖属性の魔物を仲間に加えましょう」

「うん、なんでだ、レム?」


 その日、レムは唐突に俺にそう言った。


「今、我々の誰も扱えない属性の魔法だからです。雷は主が使えますし、闇属性の創世級への対抗手段としていつかは必要になると思います。なので聖属性の仲間を見つけることは、優先される事柄だと思います」


 反属性という言葉がある。闇の逆は聖という感じで反対に位置する属性の魔力という意味で使われるが、それらを当てあうと相手の魔法をより破壊しやすいと言われている。相殺の方が本当は便利なのだが、相手の魔法を完璧に解析できなければ相殺はほぼ出来はしない。そんな時に反属性の魔法が扱えれば有効であるとされている。


「聖属性か」

「……何か、問題でも?」

「聖属性は、聖魔級迷宮からしか無いのは、知ってるよな?」

「はい。下位の迷宮には、聖属性の魔物はいないんですよね。何故か」

「ああ。それと、聖属性の魔物は組織的に動くことが多いらしい。実際には、聖魔級でも神魔級相当の迷宮であると思っていいと、迷宮の本には書いてあった」

「神魔級ですか。それは、いい修行になりそうですね」

「まぁ、それはそうなんだが。仲間を探しに行って、自分達が成果もなく大怪我をしてちゃ意味がないからな。行くなら、他の聖魔級迷宮を何個か攻略してから行きたいところだ」

「なるほど」


 という訳で、聖属性聖魔級迷宮を目指して、現在の俺達は修行している。


 まず第一に、カヤのいた火属性聖魔級迷宮から攻略を進めた。ここの魔物の特性を、カヤが全て理解しているおかげでスムーズに迷宮攻略は進む。迷宮のボスも、全身に無数に開いた穴から火魔法を放つティラノサウルスみたいな奴だったが、ミルクとフィーが進化したおかげで総合的な対応力が上がり問題なく倒すことが出来た。


 だが、すぐに迷宮が攻略出来たからと言って、そのままでは実力の向上につながらない。俺達は、チームで対応していた魔物を一人づつで相手にしてみたり、迷宮のボスすらも一人で倒せるようになるまで訓練を続けた。


 その修行期間の途中でアリーの長期休暇もおわり、しぶしぶ魔法研究のためにアリーは学校へと戻っていく。


「私も、魔法研究で創世級に対抗出来る手段を考えるわね!!」


 と、アリーは去り際に言っていた。アリーさんの言葉は、本当に頼りになる。なんというか、アリーがそう言うと本当にそうしてくれそうな気がするんだよな。信頼感が半端ない。あと学校に戻らないという選択肢もあったらしいが、戻った理由の大半が俺に迷惑がかかるのを避けるためらしい。何故かは詳細には教えてくれなかった。まぁ、アリーのことだ。何か考えがあってのことだろう。なら俺は、アリーを信じるだけだ。


 一通り火属性の聖魔級迷宮で実力をつけた俺達は、次に水属性聖魔級迷宮を攻略し始めた。その迷宮は、地上の入口から階段で下へと降りていく地下に出来た迷宮だった。その中で歩ける道は全て氷。周りの壁は水という、とてつもなく不穏な空気漂う迷宮だ。


 周囲は全て水の壁だ。容易に壁をかき分けて遠くから水魔法が飛んでくる。周りのどこからいつ不意打ちがくるか分からないうえに、氷に足元の動きを邪魔されてとても対処がしづらかった。魔法で最小限の動きの補助と、索敵をしながら俺達は迷宮を進んでいく。慣れない場所での戦闘は、俺達に今までにない魔法の使い方と体の動きを教えてくれた。


 この迷宮での経験は、かなり実力をつける修行になったと思う。火属性聖魔級迷宮も火山自体に暑さという脅威があって辛さを感じたところがあった。更に周りの岩が魔物だったり、溶岩の中に潜む魔物がいたり。不意打ちという意味では、気の抜けない戦闘にも火山ではなっていた。だが、それでも火山では足場が安定していた。


 やはり足が滑るという状況は、なかなかに厄介だ。不利な地形で戦うという経験は、この先の戦いでかなりのプラスになるだろう。そして、この迷宮は火山以上に多くの魔物に囲まれるという状況が多かった。火山以上に、集団で行動する魔物が多いようだ。何度、全員で背を預けあいながら対処したことか。これも聖属性聖魔級迷宮に行く前の、いい練習になったと思う。


 いや、率直に感想を言うと聖魔級迷宮は、魔物も強いが地形もひどい。雷属性聖魔級迷宮は、一面の雷発生地帯だし。風属性聖魔級迷宮は、強風吹き荒れる足場の細い山道だ。


 ちゃんとした装備じゃないと、魔物と戦う前に地形のせいで死ぬだろう。火と水は、これでもまだマシなほうだ。暑いし、滑るが、それでもまだマシだ。


 いずれ風と雷にも行かないと行けないだろうが、出来るならば遠慮したい。取り敢えず、すぐに風と雷に行くのは無理すぎるので、修行は火と水の迷宮を中心に行っていた。闇属性聖魔級迷宮に行く手もあったが、今は魔王軍の情報を調べに国が調査しているらしいので、あまり近寄りたくない。だから却下とした。


 そんなこんなで修業を進めていると月日が過ぎて行く。


 アリーの誕生日や俺の誕生日も迎え、プレゼントを送りあいもした。アリーの誕生日には、アリーの学校に出向いて魔力の指輪をプレゼントした。この指輪は、自身の魔力を指輪の魔石に貯めることができ、自由にいつでも使用することが出来るという優れ物だ。すっごい高かった。何でも希少な鉱石を手作業のみで加工しているかららしいのだが、その割には貯めれる魔力が少ないと思う。もうちょっと安くてもいい気がした。いや、一般的にはこれほど貯めておければ凄いのかもしれない。まぁ、便利そうだったのでこれにした。


 俺は、懐から木箱を取り出してアリーに指輪を渡す。アリーが喜んでその指輪を左手の薬指に照れながらはめてくれた時俺は、何とも言えない表情をしてしまって胸が一杯になった。


 うん、嬉しいです。


 俺の誕生日の時は、アリーがわざわざ学校から来るというので、転移で俺から迎えに行って一緒に家で祝った。装飾の色が違う似た感じの魔力の指輪を貰った。俺は、アリーの指にはまっている指輪を見つめて、俺も左手の薬指に指輪をはめた。二人して滅茶苦茶顔が真っ赤になったのを覚えている。お互いに照れくさくなった俺とアリーだが、その日は、長く抱き合ったまま一日を過ごした。


 それから一週間ほど、アリーが俺から離れたくないと言って学校に戻らなかったわけだが。まぁ、俺も幸せだったからよしとしよう。そんな感じで、月日は流れ……。


「そろそろ年明けが近づいてきたわけだが」


 今、俺達がいるのは、水属性聖魔級迷宮の広い一室だ。そこで俺達は、模擬戦をしている。この迷宮も攻略に長い時間を使ったが、今ではもう慣れたもので、強い相手と闘いながら不意打ちに気をつける訓練を今はしている。水の壁の向こうから襲ってくる敵を察知しながら皆と戦うのは、俺には相当つらいが、確かに実力として自分の身になっている訓練なんだろうと長く続けるうちに俺はそう実感した。


「うん?よっと……」


 俺は、自身の後方に向かってダークブラストを放つ。闇の魔力で出来た弾丸が、水の壁の中に入っていき、遠くからこちらを狙って近づいてきていた魔物を貫いた。本当に俺の実力は上がったと思う。前の俺なら、こんなことは出来なかっただろう。


「あれ、ご主人様。破浸透、お使いになりませんでしたか。何故?」

「いや、いつまでも破浸透に頼りっきりじゃいけないだろ。普通に魔法だけでも対処出来るようにならないと」

「え~~、私の能力ですのに。そんな遠慮なさらずとも、バシバシ使って頂いて構いませんよ?」


 そう、俺も皆の能力が使えるようになっていた。どうもフィーの能力、全合一の効果らしいが、どうなっているのかはよく分からない。何故か使い方が分かる。


 各種魔法から、フィーの全合一、レムの一体化、ミルクの破浸透、ミズキの可変状などの特殊な能力も使える。ミズキの可変状は、いまだに怖くて魔力隠蔽にしか使っていない。体を好きに変化出来るって、失敗したらと思うと怖いしな。


「ともかく、もうここでの訓練にもだいぶ慣れてきたと思う。どうだろう、そろそろ聖属性聖魔級迷宮に行ってみるというのは?」


 俺の言葉に皆が唸って考え込む。確かに慣れたとはいえ、この迷宮はだいぶ攻略に時間がかかった。迷宮自体が広いのもあったが、魔物の攻撃がそれだけ強かったせいでもある。考え込むということは、皆の中ではまだ、次に進む為の不安材料があるのかもしれない。


「私は、別に大丈夫だと思いますよ、マスター。そろそろ新しい環境に移るのも、いいと思います」

「ですね。私も賛成です、主」

「ふふふ、私はいつでもOKですよ。ご主人様!!」

「私も、問題は無いですね」

「あたしも賛成!!と言うか、早くこの水だらけのとこから出たいです!!!」


 少し時間はかかったが、皆賛成のようだ。


「それじゃあ、年が明けたら聖属性聖魔級迷宮への移動を開始しようと思う。それまでに、出来るだけ実力をつけよう。皆、よろしく頼む」

「「「「「はい!!」」」」」


 こうして俺達は、聖属性聖魔級迷宮に向かうことにした。


 その日、十分に訓練を終えて家へと俺達は帰る。晩御飯を食べ、いつも通り寝る時間となった。だが、最近は困ったことがある。それは、ミルクが俺の股下のポジションで寝ていることだ。


 いや、それ自体は別に構わない。たまに内ももに角が当たったりするけど、まぁ、そっちはそこまで痛いわけではないんで問題ない。問題は、ミルクの胸だ。寝るときに胸でがっちり俺の片足を捕まえてくるので、柔らかさとむにむに感で俺のアレな欲求が刺激されてかなり寝づらい。破浸透を使われていなくても、あの胸にはそれほどの破壊力がある。……慣れるには、まだまだ時間がかかりそうだ。


「!?」


 そう思った瞬間、足に走る落雷でも落ちたかのような甘い刺激。


「むにゃ、ご主人様、好き」


 ミルクゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!? 眠りながら胸で破浸透を使ってくるなぁああああああ!!!? 危うく変な声を上げるとこだったわ!! 静まれ、俺の高ぶる心よ!! 静まるのだ~~!!!! ふぅ~~、よし。徐々にでいい。落ち着け~~。 ……俺は、顔を動かして辺りを見回す。するとそこには、フィーとレムの可愛い寝顔があった。二人に罪はない。だが、今の俺に美少女の顔は効く。いや、でも二人の寝顔は落ち着く要素になる。安眠を守るんだ。落ち着け、俺。俺は、そのまま暫く心を落ち着けるのに時間を取られて、気づけば夜が明けていた。


「……俺の精神力も、日々鍛えられているな。もやもやが、溜まっている気もするけど」


 ちょっと疲れた顔のまま俺は起きた。皆を起こし、いつも通り朝の準備をする。そしていつも通りに朝食を食べにおりた。最近は、こんな感じで朝を過ごす。だが、今日はいつもと様子が少し違っていた。


「ふむ、ベイ。お前も、もう12だ……」

「え。うん、そうだね」

「そこでお前も、学校に行かせようと思う。年が明けたら1回、学校に手続きに行こう。なに、何も難しいことはないから、心配しなくていい」

「ああ……、うん、分かったよ」


 そろそろ俺も、アリーの学校に行く時期か。学校か。何も起きないと良いなぁ。俺は、そう思いながら朝ごはんを食べすすめた。




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