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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・七部 ???? レム編
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複製強魔

 風が吹き抜ける。魔力の衝撃で、抜けた葉っぱが宙を舞う。その一枚が、俺達の間を通りすぎた。その次の瞬間、金と黒色の閃光が激突する。


「シッ!!」

「フッ!!」


 距離を詰めると同時に、俺はアルティを振り抜いた。その斬撃が、クローリの腕に直撃する。しかし、奴の腕には傷がつかない。それが分かっていたからか、クローリは斬撃を気にせず、そのままもう片方の腕での攻撃に移ろうとしていた。だが、俺はアルティに魔力を込めることで刀身を輝かせる。すると、アルティの刀身が、クローリの腕を切り裂き始めた。


「チッ!!」


 クローリが、即座に闇魔法の魔力の塊を投げつけて、俺達と距離を取る。その魔力を、俺達は躱しながら、後ろに飛び退いた。


「やはり、この程度では、君相手には不足か」


 クローリの腕の傷が、一瞬にして消える。俺は、魔力で輝くアルティを再び構え直し、クローリを牽制した。


「では、少し変えるとしよう」


 クローリが、腕の形状を変える。それは剣だ。腕に持っているのではなく、腕そのものが伸びて、剣を形作っている。


「戦闘スタイルを変えたのか?」

「おかげさまでね」


 そう言うと、クローリが、俺達の視界から消えた。


「!?」


 その時、後ろから違和感を感じる。何かが、後ろに収束していくような感覚。これは、俺達の背後に、魔力が集まっている証。振り向くと、俺達の背後に、クローリの本体が再構成され始めていた。


「反応が良いな」


 クローリが、まだ未完成の体で、俺達に腕を振るって斬撃を放つ。その斬撃ごと、俺はアルティで、クローリの体を真っ二つに切り裂いた。だが、何故か手応えがない。


「隙きが大きすぎるか」


 俺達よりも、少し離れた地点に、クローリが再構成された。だが、まだ周囲に違和感を感じる。


「魔力探知能力も高い。君は、本当に面白い人間だ。普通の人間であるのならば、それほどの能力をもつことは出来ないだろう。何故なら、あのライオルでさえ、魔力探知能力は低いのだから」

「俺は、魔法使いだからな」


 そう。俺は魔法使いだ。今でさえ、かなり肉体的に鍛えられてはいるが、一応魔法使いなんだよなぁ。


「なるほど。それほどの身体能力があるのに、魔法使いだと。そうか。それが君と、ライオルの違いか」

「それだけじゃないけどな」


 肉体に、ディレイウインドをかける。生身よりも、一体化しているので出力を上げたディレイウインドを今の状態ならば使うことが出来る。その速度に任せて、俺はクローリを切り裂くつもりでいた。先程よりも数段早く、クローリが防ぎきれない斬撃を放つことで、勝負はつくと思っていた。しかし……。


「そう、急ぐな。まだ始まったばかりだろう」


 クローリは、先程よりも速度を増した斬撃を避けた。


「!?」


 更に躱しながら、クローリは俺に向かって腕を振り上げて切りつけようとしている。その腕に、俺は片腕で魔力の弾を放つと、その威力でそのままクローリの腕を吹き飛ばした。


「流石だ、魔法使い。魔法の威力も、とても高いな」


 その声は、俺達の後ろから聞こえた。


 吹き飛ばしたクローリの肉体を確認した後、俺達は後ろを振り向く。すると、そこにもクローリが居た。


「分身、だと」

「分身?いや、そうではない。どちらも私だよ。紛れも無くね」


 再び、周囲が暗くなる。地面が黒く染まり、その中から魔物ではなく、いくつものクローリに似た何かが浮上してきた。


「なんだ、これわ?」

「さて、どうかな」


 クローリに似た何かが、俺達に向かって一瞬で飛びかかってくる。それを、俺は一太刀で切り裂いた。連中のスピードは、先程までのクローリと変わらない。十分対応可能だ。


「フッ……」


 切り裂いた、連中の肉体が宙に浮いている。だが、真っ二つになった肉体を気にすらぜずに、クローリに似た奴らは、その腕を伸ばして剣に変形し、そのまま俺を切りつけようとしてきた。


「!?」


 肉体から魔力を放ち、俺は、連中を吹き飛ばす。すると、連中の肉体は塵のように消えて、同じようなクローリの複製が、消した数と同じだけ地面から浮上してきた。


「なるほど。そんな感じか」


 休む間もなく、追加された複製体が、俺目掛けて駆け出す。しかも、先程よりも複製体達の動きのスピードが上がっていた。


「チッ!!」


 ディレイウインドの出力を上げて、俺は、魔法で敵を吹き飛ばしていく。だが、吹き飛ばした瞬間に、また新たなクローリの複製体が地面から湧き出し、更に速度を上げた攻撃を俺達に放ってきた。それが、十数体ほど続いただろうか。その時、この鎧での、ディレイウインドで出せる速度の限界が訪れた。


「クソッ、まだ早くなるのか!!」


 クローリの複製体達の速度は、すでにこの黄金の鎧よりも上だ。俺は、自身の技術で、何とか複製体達の攻撃を躱して反撃する。だが、徐々に相手の速さも技量も、俺を上回り始めた。


「グハッ!!」

「捉えたか……」


 一体の複製体の斬撃が、鎧の肩に命中する。その衝撃で、鎧の肩が砕けた。


「フッ!!」


 すぐに立て直し、俺は鎧に魔力を込めて肩を修復する。だが、その間に放たれた相手の蹴りを避けることが出来ず、俺はその場から吹き飛ばされた。


「ガアアアアアアッ!!!!」


 鋭く、威力のある蹴りが、モロに俺の腹に直撃する。鎧によって、多少ダメージは押さえられているが、それでも俺の肉体にまでダメージは届いている。生身で今のをくらえば、俺の命はなかっただろう。俺は、飛ばされながらも肉体を回転させて受け身を取り、地面に体勢を立て直した状態で着地した。


「ハァッ、ハァッ……」


 性能限界の動きをしてきたせいで、息が上がる。だが、クローリの複製体達が疲れている素振りはない。この状況、どうするべきだろうか? 一体化を、属性特化一体化に変える手もある。例えば、カザネモードだ。あれならば、今の段階の複製体の速度も、すべて置き去りにできる。だが、それで今のクローリに決定打を放てるだろうか? それが、俺に属性特化一体化をためらわせていた。クローリの、魔法のカラクリが分からない。今、俺達の目の前で一番遠くにいるクローリ。恐らく、あれも本体ではない。あれすらも、量産された複製体の一つに過ぎないだろう。本体を倒さない限り、この攻撃は止まない。それを見つけたいのだが、見つけられない。周囲に、クローリの本体らしき気配を感じないのだ。魔力を操作した形跡を感じることは出来る。だが、その形跡の始点を感じ取ることが出来ない。それらは、不規則に空中で発生し、複製体を生み出している。まるで、クローリそのものの本体が、この一帯の空間であるかのように。


「その程度か。ベイ・アルフェルト」

「……」


 奴の口調から察するに、クローリにはまだ余裕がある。この分身魔法。どれほどの性能が出せる魔法なんだろうか。まさか、無限に複製体が強くなるということもないだろうが……。


「もう何も出来ないのであれば、死ね、ベイ・アルフェルト」


 再び、クローリの複製体達が、俺に向かって駆け出す。だが、俺は逃げない。一応、アルティを構えたまま、俺はクローリ達の動きを見ていた。


「見ているだけか!!」


 複製体達の斬撃が、鎧に一気に襲い掛かる。俺が何もせぬまま、複製体達の斬撃が、俺達の鎧に届いた。



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