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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・七部 ???? レム編
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魔王強襲

「あ、後ライアさんが実家に帰ったわ」

「え、そうなの?」

「実家を開けっ放しにしてるの、気が気じゃないみたい。体調も戻ってきたし、一旦お家に帰るって」

「ま、元気になられたのなら良しとしますか」

「それとなんだけど……」


 アリーが、俺の耳に口を近づけて小声で話す。


「くれぐれも、レーチェさんには気をつけるようにって」

「……まぁ、そうだよな」


 指先一つで俺達を殺せる人だからな。そう思われても仕方ない。いや、指先すらいらないと思うが。


「お、行動の早い連中じゃのう」


 レーチェが、いきなりそう呟く。次の瞬間、俺達も感じ取った。サイフェルムに、何かが転移してきたのお。


「……数が少ないのう。2体か」

「ちょっと、様子を見てくる」

「ええ、気をつけて」


 そう言うと、俺は全員の召喚を解除して家を飛び出した。そして、地を蹴って気配のする方角へと駆け出す。その最中、空中を白い閃光が、俺と同じ方向目掛けて飛んでいくのが見えた。


「……」


 たどり着くと、丘の上にそれは佇んでいる。黒い布にその体は覆われているが、あの大きさからして普通の人間ではないだろう。その人物の前に、白い閃光が浮いている。それは、ライオルさんであった。


「出迎えご苦労。やはりここか、我が因縁の地サイフェルム。そして、君たち2人。この地には、よくよく私と縁のあるものが集うようだな」


 謎の人物は、マントで隠していた顔をさらけ出す。それは鎧。黒く赤い瞳を持った鎧だ。それが、俺達を前にして、そう喋っている。


「クローリ。お前、クローリなのか?」

「ライオル、姿は変わってしまったが、理解してもらえて嬉しいよ。どうだろうか、今の姿わ。バズラには禍々しくて素晴らしいと言われたんだがね。いささか、私自身は、装飾が派手すぎるのではないかと思っているよ」


 確かに、これでもかと言うほど、今のクローリの姿は禍々しい。鎧であるのにもかかわらず、まるで生物の血管のような筋ばった模様のようなものが鎧についている。それが脈動し、異様な雰囲気を出していた。


「禍々しい。そうかもな」

「君もそう思うか。嫌だなぁ、もっとシンプルでありたいものだが」


 魔王クローリは、現在の自身の姿に、ご不満のようだった。


「で、何しにここに来た?」

「ん、決まっているだろう」

「……」

「君たちを殺しにだ」


 空気が、一瞬にして変わる。周りの景色は赤く染まり、それまで降り注いでいた日光は瞬時にして消えた。辺り一面に闇が広がる。そして、地に広がった影から、無数の魔物がその場に姿を表した。


「君たちを見せてくれ。今、どれほどかおね。取るに足らなければ、残念ながら、ここでお別れにしよう」

「お前がか?」

「それでもいい。ただ、今の私を殺せるのなら、の話だが」


 俺と、ライオルさんは剣を構える。すると、その無数の魔物たちが、驚くべきスピードで俺達目掛けて飛びかかってきた。


「チッ!!」

「……」


 俺とライオルさんは、息つく暇もなく剣を振るう。魔物の顔を落とし、足を切り裂き、胴体を真っ二つにした。だが、魔物の数が減っている気がしない。次から次へと、影から魔物が湧いて出てくる。


「流石の反応速度だ。だが、いつまで保つかな」

「いつまでだと?お前が死ぬまでだ!!」


 ライオルさんが、魔法を剣に乗せて放つ。その放たれた光の斬撃で、周囲の魔物たちが、一瞬にして消えた。


「……腕を上げたな、ライオル」

「次は、お前だ!!」

「だがな……」


 ライオルさんが、光の矢となってクローリに迫る。それを見ているクローリは、逃げるどころか、防御すらしない。ただ、無言でライオルさんを見つめている。ライオルさんの剣が、クローリへと迫る。あと、ほんの一瞬の距離だ。薄皮一枚ほどまで近づいた斬撃。確実に当たったと思われたその斬撃。それを……。


「私には、遅すぎる」


 クローリは、指先で掴んで止めた。


「!?」

「すまないな、ライオル。もう、実力が違いすぎるようだ」

「剣が、動かな……」

「別れの時間だ、強敵ともよ」


 クローリが、もう一方の腕をライオルさんの腹目掛けて放つ。その腕は鋭く、早い。その腕が、ライオルさんの腹に直撃し、腹の骨を砕き、腹の肉を破って背中に貫通しようとする。その直前。


「ディレイウインド!!」


 俺の、瞬間加速して放たれた蹴りによって、その腕は威力の方向を変えられた。


「ほう……」


 そのまま俺は、アルティでクローリの指先を切り裂いて、ライオルさんを離させる。しかし、確かに切ったというのに、クローリの鎧は無傷であった。俺は、魔法を使ってライオルさんと共に、後ろに距離を取るために飛ぶ。後方に湧いて出た魔物を、俺は魔法で吹き飛ばして、その場に着地した。


「素晴らしい」


 その動きに、クローリは称賛し拍手をする。余裕だ。もう、ライオルさんを相手にしても、あいつはそれほどまでに余裕なのだ。


「素晴らしいぞ、ベイ・アルフェルト」


 俺は、腹を押さえているライオルさんに転移魔法をかけて、サイフェルムへと送り返す。そして、再びアルティを構えた。


「クックック、素晴らしい。なぁ、君に質問したい。答えてくれるか?」

「……」

「君は、本当に人間か?」


 質問に、答える暇はない。何故なら、喋り終わると同時に、クローリは一瞬で俺との距離を詰めてきた。その速さ、今の俺でさえ、辛うじて認識できるほどだ。クローリの腕が、俺の認識の世界で迫ってくる。アルティでの斬撃ですら耐えるその腕での攻撃。くらえば、命はない。そう、俺の感が囁いていた。クローリが、もう目と鼻の先まで迫ってきている。その僅かしか無い時間の中で、俺は、ディレイウインドで加速し、クローリの腕をアルティで受け流した。


「素晴らしい!!受け流した!!私の攻撃を!!!!」


 クローリは、攻撃を外されたというのに、なぜだか歓喜している。そして次の瞬間、同速度の攻撃を、連続で俺目掛けて放ち始めた。俺も、ディレイウインドで加速しながら、その攻撃をいなしていく。だが、攻撃回数が増えるにつれ、クローリの攻撃速度が上がり始めた。俺も、ディレイウインドを強めて対抗する。だが、徐々に俺の体のほうが、ディレイウインドの負荷に対して悲鳴を上げ始めた。ディレイウインドは、元々カザネモードで使うべき魔法だ。生身では、その性能を全て発揮しきれない。その結果、俺は徐々にクローリの攻撃を防げなくなってきていた。


「この程度か、ベイ・アルフェルト!!違うだろ!!お前には、あの魔法があるじゃないか!!さぁ、見せてみろ!!この私に、強くなったお前の力を!!」

「……一体化」


 俺を中心に、爆発的な魔力が発生する。その魔力に、クローリは反応して飛び退いた。周囲の空気が、クローリ以外の魔物が、その魔力で消し飛んでいく。魔力が俺の体に纏わり付き、黄金の鎧を生み出した。闇に染まっていた空間は、青空を取り戻し、周囲を正常なる世界へと変える。


「今度は、俺が見せてもらおう。お前が、どれほどの強さかお」

「素晴らしい……」


 アルティを構える俺に対して、クローリは、再び無手で構えた。





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