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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・七部 ???? レム編
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魔力同一

 その後、何事も無く体を洗って俺は風呂を出た。そして、倒れるようにベッドにミルクと寝転がって寝た。


「……」

「いや、そう言われても……」

「クソッ、何故私じゃないんだ!!」


 珍しい感情を、乗せた声がする。声的にはレムか。レムが、ミルクに対して何かを怒っているようだ。その声を聞いて、俺は目覚めた。


「……どうしたんだ?」

「あ、ご主人様、起きました」

「主、すみません。私が、不甲斐ないばかりに」

「え、どういうこと?」


 何故、俺が謝られるんだ。さっぱり分からない。


「私は、主の鎧。その私が、主と魔力的に未だ完全に繋がっていなかったなど。悔しくてなりません……」

「……いや、それでそこまで悔しがることは、無いんじゃないかなぁ」

「ですが、ミルクはそうなったのでしょう!!私ではなく、ミルクが、先に……。鎧である、私ではなく」

「どうも、何故かレムのプライドに引っかかっているようですね」

「ありがとうレム。その気持は嬉しい。だが、順番に意味はないと思う。ミルクがあの状況を打開するために、結果的にそうならざる負えなかっただけだ。それよりも先に、レムがそうなっていてくれても嬉しいが、別に今からなってくれても俺は構わないと思う。いつでもいい。レムがなりたいと思ってくれているだけで、俺は嬉しいよ」

「主……」

「ちょっと、レムの主張も大事なのだが。どうやら、それよりもやばい状況のようだ」

「「?」」


 俺は、視界にふっと入ったその子が、いつもと様子が違うことに気づいた。俺の視線をたどって、ミルクはその子に話しかける。


「フィー姉さん?」

「……」


 珍しい。珍しいこともあるものだ。皆のお姉さんであるはずのフィーが。あのフィーが、頬を膨らませて無言で怒りをアピールしている。自身の不機嫌を、表に出してアピールしている。ただし、皆にわざわざ見えないように顔を背けてしている辺り、フィーなりに気を使った怒りの発散なのだろう。だが、俺にはすぐわかった。そもそも、フィーが壁に向かって顔を向けているのが、まず怪しい。


「ね、姉さん!!」

「通りで、いつもと様子が違うと……」

「大変だ、大変だ~!!」


 普段怒らない人が怒っていると、どうしていいか分からなくなるものだ。それも、皆の中心人物たるあのフィーがである。シデンあたりは、動揺してあわあわしだし。ミルクに至っては、その場ですぐに土下座していた。あれは、正しい判断なのだろうか?


「抜け駆けして、申し訳ございませんでした!!」


 綺麗な土下座である。ただし、ミルクの胸がクッションになっていて頭は床についていない。凄い。


「……」


 未だに、フィーの頬は膨らんだままだ。だが、フィーは土下座しているミルクの頭を優しく撫でた。


「ね、姉さん。許してくれるんですか?」

「……」


 その動作とは裏腹に、フィーさんの頬はまだ膨らんでいらっしゃる。だが、ミルクへの怒りはないようだ。では、何に対して怒っているのか?


「レムと、同じなのかフィー?自分が、出来ていないことに対する怒りなのか?」

「……はい」


 フィーは、そう言うとベッドに倒れ込んだ。これは、五体投地。つまり、一見倒れただけに見えるが、体全体を使った謝罪表現である。全身から発せられる、怒りとともに発せられる謎の謝罪の意思。それを感じ取り、俺はその倒れ込みをそう感じた。それを見た時、俺はすぐさま立ち上がり、フィーを抱き起こした。


「フィー、あまり考え込むな。レムと同じだ。そこまで無理して、急ぐことじゃない」

「……はい、マスター」


 取り敢えず、フィーを抱っこしながら俺は起き上がった。そして、片腕でフィー抱えつつ、レムの頭を撫でる。そうして暫くの間、俺は、2人の機嫌を治すための努力をすることにした。


「ベイ、起きた?」

「ん、アリー、起きたよ」


 暫くすると、アリーがやってきた。そして、俺を手招きする。アリーの手招きに従って、フィーを抱えたまま俺達はアリーに着いていき、一回の大部屋へと移動した。


「ローゼットさんから、知らせがあったわ」

「ローゼットさんから?」


 アリーが、テーブルに地図を広げる。そして、サイフェルムよりも更に南に位置する国を指さした。


「国家・シャドウオーブ。それが、滅んだらしいの」

「国が、滅んだ?」


 地図で見る限り、とても大きな国だ。だが、地図上には黒塗りの地形が多く、その国の環境は想像しづらい。


「この、黒いのはなんだ?」

「地図によると、人工の洞窟らしいわね。この中に都市や、自然環境などもあるみたい」

「……変わった国だなぁ」

「むしろ要塞よ。国土の殆どが、洞窟という名の城壁ってことだもの。それを滅ぼす辺り、相手も相当な力を持っているみたいね」

「……神魔級クラスか」


 俺は、頭の中に浮かんだ強さを思い浮かべた。


「いや、そうとも言えんぞ」


 すると、ドアを開けてレーチェさんが部屋に入ってくる。


「と、言うと?」

「その連中な、サイフェルムにも刺客を放っておった」

「は?」

「わしがすぐに殺したがな」

「……」


 敵も哀れなものだ。レーチェさん相手では、どのような敵であっても霞んでしまう。


「その連中の強さであれば、神魔級であったじゃろう。じゃが、あの者たちは何か違った存在であった気がする」

「と、言うと?」

「うむ。別れてておりながら、連中の魔力は繋がっていた。つまり、別々の生物でありながら、奴らは同一の存在であったというわけじゃ」

「それって……」

「私と、ご主人様と同じってことですか?」

「ま、そういうことじゃな」


 レーチェさんは、何かを投げてよこす。それを見ると、一粒のポップコーンだった。


「連中は、このトウモロコシと同じよ。神魔級の皮をかぶり、別れた一つの存在に過ぎぬ」

「創世級……」

「ま、わしほどではないじゃろうが、そういうのが妥当じゃろうな」


 俺は、そう言うと出ていくレーチェさんを見送りながら、ポップコーンを口に含んだ。美味い。塩味。


「創世級が相手か。となると、ベイ達に任せるしかなさそうね」

「おっと、いい忘れておった」


 そう言って、レーチェさんが戻ってくる。


「連中、時期にここに来るぞ」

「えっ、なんで?」

「なんでじゃと?何も被害を出せずに、仲間を殺されたからじゃよ」

「いや、それなら攻めづらく感じるはずでしょう。後回しにしよう的な」

「さて、どうかのう。あの敵の攻めよう。来ると思うがなぁ~」


 その時、一際強い風が、サイフェルムに吹いた気がした。




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