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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第一章・一部 召喚魔法使い ベイ・アルフェルト
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召喚魔法・初級

「ベイ~~!!来たわよ~~!!」


 午後から来たアリーに連れられて練習場に移動する。2人でアリーの持ってきた召喚魔法の本を見ながら、初めての契約に挑戦することにした。


「これ、めんどくさいわね。魔法陣が、複雑すぎるわ」


 契約内容が多く書き込まれているせいか、やたら複雑な魔法陣だ。真ん中に書かれた記号を中心に、まるで蛇が這い回ったかのような文字が三周ほど書かれている。


「とりあえずやってみよう。1つずつ確認しながら」

「そうね、必要な物は持ってきたから、2人で協力して進めましょう」


 魔法は、感覚で出せるという簡単そうに見える所もあるが。実際は、爆弾のようなもので。扱いを間違えただけで何が起こるか分からない代物だ。しかも今回は、契約内容が多く書かれている魔法陣だ。ミスをすれば、呪いのような発動をしかねない。2人で決められた円を書き、確認しながら内容を写していった。何度かの確認をしながら、10分ほどで魔法陣を書き上げる。

 

「そういえばベイ、その子の名前考えた?」

「え。う~~ん、それがまだ思いついてなくて」

「契約の時に、名前を付ける必要があるみたいなの。ほら、パッと考えちゃって!!」


 名前かぁ。ちらっとシルフを見ると、名前!!名前!!みたいな感じで小踊りしていた。やばい、下手な名前を付けられる空気じゃない。シルフ、精霊……。シルフって、シルフィードとも言うんだったか。じゃあ、そこからとって。


「フィー、っていうのはどうかな」

「フィー、ねぇ……。悪くは、ないんじゃないかしら」


 シルフは、結構嬉しそうにしている。よかった。ネーミングセンスがきっかけで信頼度が下がらなくて。


「よし。それじゃあやってみましょうか。フィーは魔法陣の上、ベイは魔法陣の前ね」


 呪文が書いてある本を片手に持ちながら魔法陣の前に立つ。フィーも魔法陣上に移動して準備は完了だ。


「よし、詠唱を始めるよ。……古より存在する魔力を宿すものよ、強大なるその力と意志をもって我が道を共に歩む力となれ。汝の名はフィー、風を操る小さき精霊よ、我に力を!!」


 右手を突き出し詠唱を始めると、魔法陣が強く赤い光を放ちだす。詠唱を完了すると、光が空中にただよい、俺とフィーを結ぶ線となって消えた。


「うまくいったみたいね」

「ふぅ、よかった」

(やった~!!やった~!!)


 ……うん? 今、聞きなれない幼女の声が聞こえたような。


「どうしたのベイ?急に固まって」

(どうしたの、マスター?)


 えっ、何。この声、もしかしてフィー?


「……いや、さっきからフィーの声?が、聞こえるんだけど」

「ああ、召喚の契約で相手の意志が分かるようになったのね。私には聞こえないんだけど、どんな感じ?」

「う~ん、なんだろう。魔力を通して言葉が伝わってきてるんだけど、かなりはっきり聞こえるね。頭の中に、直接聞こえてくる感じ」

「へ~、結構便利そうね。とりあえず、召喚も試してみましょう。フィー、ちょっと離れたとこに行ってみて」

(うん、分かった)


 頷くとフィーは、スッと飛んで練習場の端の方に移動する。と、アリーがこちらを見て頷いた。


「契約を結びし力あるものよ。我が呼びかけに応えよ。召喚、フィー!!」


 練習場端にいるフィーの身体が光で覆われたかと思うと、瞬時に俺の前に移動し出てくる。


「うん、完璧!!あとは、これをどう使うかね。ベイ、期待してるわよ」


 そう。成功して嬉しいけど、ここがスタートラインなんだよなぁ。研究するって決めてから一応方針は考えてあるけど、不安だ。


「ははっ……。頑張るよ」


 アリーの目は、キラキラ輝いて俺を見つめていた。すごい、すごい期待していらっしゃる。……不安に押しつぶされないように、心の中で覚悟を決める俺であった。


「召喚魔法も無事に出来たし。それじゃあ、次は魔法の練習をしましょうか」


 と、いきなり風魔法で空中に浮きはじめるアリー。一日しか経っていないのに、もう靴を履いたままでの魔力コントロールを可能としていた。天才すぎる。


「魔法っていうのは、イメージとコントロールでどこからでも出せるというのは分かるわよね。自分から遠いところに出すほど出力や制御が難しくなり。物に魔力を貫通させて使用する場合も難しくなる。だから、自分の周りに出すほうがやりやすいのよね」

「うん。自分より離れた場所での発動だと、その場所に発動させる魔法にあった魔力を送るイメージをしてから魔法を発動させないといけないから難しいんだよね。魔力がバラけると魔法も威力が弱まるし」

「だから魔術師にとって魔力のコントロールはとても大事なわけなんだけど。ほとんどの魔術師は、詠唱を使えば安全に発動出来るからそっちにするのよね。無詠唱に比べて発動は遅いけど……」


 無詠唱で出す場合は、完全に感覚が頼りになる。魔力のコントロールで魔法発動時に自分が傷つかないように常に注意しなければならない。焦って魔法を無詠唱で発動した魔術師の腕が、吹っ飛んだなんて経験談も魔術師の世界ではよく話されているようだ。


「で、魔力コントロールの練習として、魔力をわざと物に貫通させて貫通先の空間で発動させるっていうのがあるんだけど。ちょうど今、私が足裏から靴を貫通させて魔力を出してるのと同じ感じよね。……ということでベイ。あなたも、この風魔法での移動の練習をしましょう。速いし便利よ!!」


 う~ん、確かに便利そうだよなぁ。なによりカッコイイ!! おし、やるか!! と意気込み、その日の残りの時間は、アリーに風魔法での飛行のやり方を習っていたのだが、うまく姿勢制御ができずスケート初心者みたいにアリーに手を引いてもらいながら練習することになった。


(がんばって、マスター。出来たら、フィーとお揃いだよ!!)

「ほらベイ、もうちょっと魔力の出し方を意識して。そう、その調子よ!!」


 2人に、がんばれ!! がんばれ!! と言われながら練習したが、その日はちょっとましになった程度だった。二人の声援は嬉しかったが、若干の恥ずかしさを感じた俺は、早く出来るようになろう。と、アリーを家に送っていきながら考えていた。



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