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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・六部 ???? ミルク編
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一つ

 ミルクと一緒に、脱衣所で服を脱いで風呂場へと入る。魔法ですぐに浴槽にお湯を貯められるのでやはり魔法は便利だなと思いながら、かけ湯を行った。自分よりも先に、俺にお湯をかける手伝いをしてくれる辺り、ミルクさん優しい。ちょっとした腕の動作だけで、あの胸の人類の至宝が揺れるので癒やされる。生きる気力が湧いてくる。あれこそマジックアイテムだ。


「ミルクにもかけるぞ」

「あっ、はい」


 優しめに浴槽からお湯をすくっては、ミルクの肌にかけていく。滑らかでいて柔らかいミルクの肌を、お湯がその形に沿って落ちていった。見事な水の流れである。あそこを流れる水であったのなら、お湯も本望であろう。


「それでは、入りますか」

「うむ」


 かけ湯をやめて、俺達は浴槽へと入る。大きめに設計されただけあって、風呂場はかなり広い。それを一瞬でお湯貯めできるのだから、魔法は現代の水道よりも便利であることは違いないだろう。そんな適当なことを考えながら、このただただ広い浴槽の中で、あえて俺の膝上の座るという暴挙をなして見せているミルクさんから少しでも意識をそらして、お湯の暖かさに俺は集中しようとしていた。


「……」

「はぁ~、いいお湯ですね」

「そうだな」


 疲れている時、眠い時、人間は他のことを考えられなくなる。寝たい、休みたい。そちらにばかり意識が傾いて、まともに他のことに集中できやしない。だが、このミルクという存在は、それすらをも凌駕するようだ。体から失われていたはずの活力が、どこに隠れていたんだお前。というぐらいに湧いてきて、彼女の一挙手一投足に集中してしまう。ミルクとは、もう長い付き合いになるが、やはり凄い。慣れるどころか、惹きつけられている。これが、俺のために進化した、ミルクという存在なのだろうか。


「何か、変わりましたか?」

「……俺がか?」

「はい。ご主人様が」

「そうだな。……少し、魔力の扱いがうまくなっただろうか」


 ミルクとの属性特化一体化をした影響は、あまり目立って感じられない。微妙にではあるが、魔力が以前よりも動かしやすくなっている気がする。細かい魔力操作の方法を、一体化して覚えたせいだろう。


「それだけですか?」


 ミルクは、振り向いて俺の胸板に、自身の胸を押し付けて尋ねる。おいおい、そんな態度を取られたら、何かを思い出すどころじゃなくなっちまうぜ。


「……だと、思うんだが?」


 俺は、ミルクから目線をそらしながらそう答えた。顔が妙に熱い。

 

「なるほど。ご主人様側には、何時も通りに感じられるんですね」

「?」


 肌が、更に押し付けられていく。ミルクの肌と俺の肌がぶつかり合って、ミルクの柔らかい肌がたわむ。ミルクの顔が近づき、ミルクの手が俺の肩に触れ、そして気づいた。


「ミルク、お前……」

「ええ。貴方と一つですよ。ご主人様」


 繋がっている。肉体でではない。魔力で。俺達は、完全に結ばれていた。最早、召喚契約すら無い。何故なら、ミルクは俺の魔力と繋がっているから。契約というものすら必要ない。何故なら、俺の魔力と同一の存在になっているからだ。


「ど、どういうことだ?」

「全て、本当に全てを捧げました。ご主人様。アルティとは違います。ですが、私の命は、貴方とともにある。この体も、存在すらも貴方と一つ。ある意味、結婚以上の関係ですね。ぐふふ」


 よく分からない。いや、分かるんだけど分からない。ミルクと俺は、今や魔力が完全に同一の扱いになっている。今までも俺が自然と合わせていたので繋がっていたとは言えるのだが、それとはわけが違う。ミルクの魔力、全てが俺のものとして使える。今までなら、それでも制限があった。だが、それが今はない。だから感じる。体どころか、魔力でミルクを。ミルクの全てを。


「あ、あと一体化していなくても、相手の魔法を操作出来るようになりましたよ」

「……なんですと?」

「ご主人様の魔力を、私も使えますからね」


 なるほど。俺の魔力と一体である今ならば、素のミルクのままで、相手の魔法がどんな属性であろうとも合わせることが可能ということか。 ……強くね?


「レーチェも、気づいているでしょう」

「そうなのか」

「ええ。あのあと、私達に向かってあの魔法を撃つ素振りすら見せませんでしたからね」

「ただ寛容なだけでわ?」

「そうかも知れません」


 そう言うと、体の力を抜いて、ミルクは俺にもたれかかってくる。心地よい重みが、俺の全身に広がっていった。


「もう、貴方と共にいることを、私は諦めません」


 それは、優しい言葉に聞こえた。それと同時に、ミルク自身の誓いだったと思う。


「ずっと、一緒にいてくれるよな。ミルク」

「はい」


 お互いに、手を絡ませて握り合う。そして、俺達は顔を近づけて……。


「いい風呂じゃのう」

「「……」」


 いきなり入ってきたレーチェが、俺の隣に座った。


「うむうむ。仲が良くて宜しい。ところでベイよ、背中を流してくれんか?」

「なんで入ってくるんですか!!こんな最高の雰囲気の時に!!」

「ははは、そんなのわしが知ったことではない。いい湯が入った気配がしたでな。来たというわけじゃ」

「どんな気配ですか!!」


 すげぇ!! 4つの島が、お湯に浮いている!! すげぇ!! スゲェ!!!!


「ま、ゆっくり湯にでも浸かって、今は休むと良いぞ、ベイよ。明日には、またすぐに面倒事が始まりそうじゃからの」

「え、面倒事ですか?」

「何を不穏なことを言ってるんですか。そういうのやめてくださいよ。雰囲気が台無しでしょう!!」

「はいはい。では、頼むぞベイ」


 浴槽から出て、座ってレーチェは俺に背中を向ける。俺は、仕方なく浴槽から出ようとして。


「っ」


 ミルクに引き寄せられて、強引にキスされた。


「ずっと、一緒です」

「ああ、いつまでもな」


 共に歩もう。ミルクと一緒に。そうすれば、どんな困難すらもハッピーエンドに変えられる気がする。そう、俺は思った。


「はよ~う」

「あっ、はいはい」

「ちょっとぐらい、空気ってもんをですね!!」


 まだまだ、我が家は楽しくなりそうだ。



 

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