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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・六部 ???? ミルク編
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帰還

 森の中で、空気が蠢いている。それは静かに光を放ち始め、ゲートを作る。その中から10体ほどの魔物が出てきた。それは、黒い狼のような魔物だった。だが、その大きさは、狼と言うには程遠い。獣というよりは怪物。人の背丈の二倍はある巨体をしていた。その魔物達が、今、目の前に見えている都市の明かり目指して、静かに駆け出す。


 その都市を守っている壁に速度を早め、そのままその巨体で激突して粉砕しようとしている。その瞬間、その黒い狼達の巨体が、跡形もなく消えた。


「何者かは知らんが、送り込まれてきたか。ま、わしがいる限り、ここにちょっかいはださせんがのう」


 家の中で、レーチェはそう呟いた。


「うわ~!!もう夜だ!!」

「ご飯を作るぞ!!あれ、アリーさん?ベイは、まだ寝ているんですか」

「ええ。ちょっとね。今、だいぶ落ち着いたみたい」

「ロロちゃんも来てる。ジャルクも」

「おはよう」

「おはよう!!」


 日が暮れて、ヒイラ達が起き始めた。そして、ヒイラ達はアリーに指示されて、ご飯を作り始める。その後、皆で遅い晩御飯を食べて、ヒイラ達は、ベイが起きるのを待つことにした。



*****


 暗闇の中で、それは座っている。それは鎧。生命を得た鎧だ。その鎧の前には、8の魔物が跪いている。その名は、ベイル、ミゴール、フォート、スビア、ザルシュ、デイク、アビマ、バズラ。そして、目の前に座っている鎧。その鎧の名は、クローリ。かつて、魔王と人間に恐れられた魔物である。今は、その姿も新たなものとなり、昔の面影は残っていない。


「改めて、神魔級迷宮の掌握、おめでとうございます。魔王様」

「ああ、そうだな」


 クローリは、目の前の彼らを眺めている。だが、彼らの誰もが、その視線に反応しようとしない。答えるのは、バズラのみだ。


「しかし、都合よく事が運びました。まさか、迷宮が魔王様を次の主と認めるとわ」

「そうだな。おかげで、新たな力を得ることが出来た」


 クローリは、新たな体を動かす。以前とは全く違う、以前以上に力と、魔力を身に着けた体となった。その体を、クローリは確かめるように動かす。


「新たな仲間も集いました。これで、魔王様が人間の上に立てることでしょう」

「……」


  その魔物たちは、何処と無くクローリの以前の仲間たちに似ていた。クローリが新たな迷宮の主となった際に、その魔物たちは発生した。闇の中から、まるでクローリに答えるかのように。その魔物たちに、クローリは自然と、以前の仲間たちの名前で呼びかけていた。だが、彼らは喋らない。機械的に、クローリの命令だけは聞き。そして、彼に付き従うように、自然と彼に跪いたり、力を貸してくれていた。


「状況はどうだ、バズラ」

「はい。周辺の国は、制圧いたしました」

「被害わ」

「こちらは少数。敵には、大多数出ております。ですが、ご命令通り、戦う意志のないものは殺させておりません」

「そうか。ならいい」


 クローリは、ゆっくりと立ち上がる。そして、空中に手のひらを突き出すと、その手を握り込んだ。すると、クローリの迷宮の領土が広がっていく。それは、土地を飲み込み、廃墟となった国を飲み込んで、一つの巨大な迷宮とした。


「魔力が、満ち溢れるのを感じる」

「これが、魔王様の。いや、創世級の力」


 バズラの言う通り、クローリは創世級になっていた。迷宮の力を己の特性で全て己のものとして、その体を新たな領域まで進化させたのだ。


「この力ならば、全てを魔王様が統べることが出来る。この星の全てを」

「いや、どうだろうか」


 クローリは、思い出す。今まで戦ってきた敵お。その中で、多くの敵が今の体になった事で、過去の強者へと姿を変えたと、クローリは考えていた。だが、それでも未だにこの世には、自身と渡り合える可能性があることを、クローリは知っている。


「時期に来るだろう。彼らが」

「彼ら?」

「ベイ・アルフェルト」


 クローリは、そう呟くと闇の中を見つめた。


「ふっ、最早あの者など、魔王様の敵ではありますまい」

「バズラ。彼らは、若くして私達を追い詰めたのだ。そんな彼らが、あのまま立ち止まっているとは考えられない」

「以前より、強くなっていると?」

「ああ。それだけは、確かだろう」

「ですが、我々に匹敵するなど、ありえますでしょうか?」

「それを確かめたい。楽しみだよ。彼が、私の前に立ちはだかるのが」


 クローリは、嬉しそうにそう言うと、椅子に座った。


*****


 空が、ゆっくりと明るくなっていく。その中で、ベイは目を覚ました。


「……朝、か?」


 周りには、アリー達が寝ている。自身に寄り添うように。その彼女たちに、ベイは布団をかけ直すと、ゆっくりと部屋を出た。


「体が、気持ち悪い。汗をかき過ぎたのか?ひどく不快だ」


 ベイは、壁に手を付きながら移動する。その途中で、足をもつれさせて転けそうになった。その体を、誰かが支える。


「ミルク?」

「はい、ご主人様。危ないですよ。そんな体での一人歩きわ」

「悪い。でも、体を洗いたいんだ。不快で仕方ない」

「分かりました。では、私が付き添いましょう」


 ミルクに運ばれて、ベイは風呂場へと移動する事になった。






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