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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・六部 ???? ミルク編
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少女と怪物

「ぬっ?」

「おっ?」


 レーチェは、一人で畑を見ていた。すると、見慣れぬ少女が、家の中から出てくる。その少女は、レーチェを見つけると、素手で構えた。


「だ、誰?」

「自分から名乗ったらどうじゃ。自己紹介とは、そういうものであろう」

「……ロロ。そしてジャルク」

「ほう。そっちのトカゲにも、名前があるのか」


 レーチェは、ロロに見向きもせずに、畑を見ている。そして、適当な苗を急成長させると、その果実をもいだ。


「わしは、レーチェデカブラ。レーチェでよい。ほれ、食ってみろ」


 レーチェは、成長したばかりのトマトを、ロロに投げてよこした。それを、ロロは見事にキャッチする。そして、服で軽くふくと、齧って感動したような顔をした。


「美味いぞ、ジャルク!!」

「クァ~」


 ジャルクも、トマトを齧る。そして、その場で美味さのあまりに、回転し始めた。


「……そうか。お主達も、ベイと契約しておるのか。にしては、まだベイの魔力に貢献はしておらんようじゃのう」

「成長期ですから」

「クァ~」


 トマトを半分こして、齧りながら2人は答える。


「お姉さん?は、契約してる?」

「いや、わしはせん」

「なんで?」

「契約なぞ、成立する立場の者とすれば良い。わしわな、そのくくりにおらぬ」

「信用してないってこと?」

「そうじゃな。そうとも言える。それもあるが、わしは誰かに縛られていい力を持っていない。好きに出来る。ならば、契約しなくても同じであろう」

「結婚する必要が、ないってこと?」

「結婚?契約は、結婚ではなかろう」

「そうかなぁ?私は、そうだと思ってる。ずっと一緒。そういう話」

「……なるほどのぅ。そういう考えもあるか」


 レーチェは、じっと畑を見ながら考えている。その横に、ロロとジャルクは、同じようにして畑を見ながら座った。


「面白い?」

「畑か?面白いぞ。わしの目にわな。出てこようとしている新しい芽の動きが見える。それがな、実を結ぶか見ておるのじゃ。楽しいぞ」

「神様みたい」

「そうじゃな。そんな気分かもしれぬ。実るものもあれば、実らぬものもおる。世界の縮図じゃな」


 レーチェは、そう言っていきなり土を掴んだ。


「ベイは、この土のように栄養豊富な土壌じゃろう。良い実が育つ、土壌は出来ておる。さて、ロロはどのように育つかのう」

「全てを、壊す」

「……」

「強い力を持つ。そして、皆を助ける」

「強い力を、欲するか」

「うん。もう、誰も失いたくない。だから、そのための力を持つ」


 ロロは、目に強い光を宿してそういった。その目を、レーチェは見つめた。


「道を誤らなければ、ロロならば登れるじゃろう。わしは、始めに道を違えた。じゃが、畑を見るに連れて、その間違えに気づけた気がする。ベイ達と一緒ならば、迷わず登れるかもしれぬな」

「うん」

「間違えれば、わしが殺してやる。安心しろ」

「大丈夫。間違えない。ジャルクもいる」

「クァ~」

「ふふっ、頼りになるトカゲのようじゃな」


 日が暮れ始めた。レーチェは、その場で立ち上がる。ロロとジャルクも、その場で立ち上がった。


「して、何故ここに来たのじゃ」

「夕食を、一緒に食べに。でも、誰もいない」

「クァ~」

「そういえば、誰も起きてこぬのう。アリーは起きておるはずじゃが、付き添うのに必死か。……あれか、わしのせいか」

「レーチェさんのせい?」

「わしな、生物にトラウマを植え付けるのが不本意ながら得意でな。自身すら気づかぬ内に、周りの生物にストレスを与えることが出来てしまうのじゃ。そのせいで、眠り続けるものもおる。特に、わしの魔力を直に感じた者は、そうなることが多い」

「そうなんだ」

「仕方ない。行くか」


 レーチェは、家に入った。そして、ベイ達が寝ている寝室に入る。そして、寝ているヒイラたちに向かって話しかけた。


「わしは敵ではない。味方じゃぞ~。守ってやるぞ~」


 そう言うと、ヒイラ達が少し反応して動いた。


「よし。時期に目覚めるじゃろう。もう一人おったかのう。そっちにも、いってくるか」

「何よ、いきなり」


 一人起きていたアリーが、不思議そうな顔をした。


「目を覚ますおまじないじゃ」

「疲れて寝てるだけでしょ。たまにあるやつ」

「どうかのう」


 そう言うと、レーチェは部屋から出ていった。


「ただいま」

「あ、ロロ、ジャルク。おかえり」


 ロロは、アリーの近くに移動する。そして、アリーが手を握っているベイの顔を眺めた。


「苦しそう」

「今ね。ベイの体が、急速に成長しているの。だからね、痛いんだよ」

「痛いの?どうすればいい?」

「手を握ってあげて。そうすることしか、私達には出来ない」

「皆、寝てる。ミエル様も」

「そうね。皆、ベイを運んだあと、倒れるように寝ちゃったみたい。気づかないほどの、何かを皆も受けてるみたいね」

「私は……」

「ロロ、貴方は、貴方に出来ることをすればいい。一緒に待ちましょう。皆が起きるのお」

「うん」

「クァ~」


 アリーの言葉に従い、ロロとジャルクは、ベイの手に自分の手を添えた。すると、少しベイの顔から歪みが消えた気がした。


「こんな時に……」

「何かあったの?」

「戦争よ」

「戦争?」

「そう。魔物と、人間の戦争」

「魔物と、人間の?」


 ロロは、首を傾げた。魔物と、人間が戦争する理由が分からないからだ。魔物にとって、人間と戦争する利点はない。迷宮のほうが、魔物は過ごしやすいからだ。人間の領土など、魔力が薄くて過ごしにくい。ベイと契約しているロロ達と、野生の魔物は違う。そして、人間にも魔物と戦争する利点は少ない。迷宮を残しておいたほうが、通算で魔物の素材を多く取れるためである。それに、戦争をすれば、人側の被害も大量にでるためだ。


「そう。最悪の戦争。しかも、神魔級とのね」

「神魔級!?」


 神魔級。それは、超人的な人間ですら勝てるか怪しい魔物につけられるクラスである。クラス的には、創世級に次ぐ実力を持っているとされている。そんなクラスの魔物が攻めてきたら、とてもではないが人間は対処できない。一部の人間は生き残ることが出来るだろう。しかし、それは本当に一握りとなる。


「おかげで、国が一つ滅んじゃったみたい。避難民が増えて、サイフェルムにも受け入れの助力を求める連絡が来たって」

「え、生きてるの。人」

「うん。意外と生きてるみたい。手加減されてるわね、明らかに」


 アリーは、そう言うと遠くを見つめた。





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