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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・六部 ???? ミルク編
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外殻

「ふぅ……」


 体の内側の、自身の魔力に集中する。その魔力を広げて、鎧を作り出すイメージを浮かべる。すると、俺の体の周りに、黄金の鎧が形成された。


「違う」


 レーチェが、俺の鎧に触る。すると、黄金の鎧が消し飛んだ。……恐ろしい。


「違う、と言うのわ?」

「これは、お前の体を強化する魔法じゃ。お前自身ではない」

「うーん、俺の体自身を広げる?」

「そういうことじゃ。見ておれ」


 レーチェは、そう言うと自身の腕に、土の塊を纏わせた。それは、まるでレーチェの腕の延長であるかのようにヌルヌルと動く。


「ま、こういう感じじゃな」

「わ」

「わ?」

「分からん」


 俺は、顔を近づけてレーチェの腕を観察する。しかし、何が違うのか分からない。俺の鎧と、どこが違うというのだ?


「分からんか。この動きの違いが」

「いや、動きの違いは分かるのですが」

「魔力であるという概念を捨てろ。自身の腕であると思え。そうやって作ってみろ」

「自身の、腕」


 俺は、改めて目を閉じる。そして、その教えに従って俺は、腕に魔力を纏わせてみた。すると、自身の腕のように動く、謎の光る物体が出来上がる。まるで腕を、LEDで発光させているかのようだ。


「違う」


 その一言と同時に、その謎の光は消えた。俺の腕、一緒に消えてないよな。良かった。ある。


「それは、お前自身を形作る魔力ではない」

「えっ。と、言うことは……」


 俺は、魔力でリアルな人間の腕を作り上げようとした。しかし、作成途中でレーチェに消された。


「それも違う」

「???」

「自身を感じてみろ。それこそが、お前の魔力じゃ」

「俺、自身を」


 ああ~、分からなくなってきた。ともかく、言われた通りにやってみよう。俺は、自身を見つめる。色々な魔力が、俺の中には渦巻いている。それは、俺自身が周りの魔力の動きに無意識に合わせてしまっているからだ。だが、それは今までのどの作り出した魔力とも同じはず。もし、違うところがあるとすれば……。


「ミルク!!」

「は、はい!!」


 俺は、ミルクを抱き上げて、寝室へと戻った。そして、まだ寝ぼけているフィーを抱き上げる。


「フィー!!」

「んっ、……ま、マスター」

「おはよう」

「おはようございます……」

「力を貸して欲しい」

「むにゃ……。!?わ、分かりました!!!!」

「レム!!」

「は、はい!!」

「ミズキ!!カヤ!!ミエル!!シスラ!!サエラ!!シゼル!!シデン!!カザネ!!」

「おはようございます、ベイさん」

「むにゃ、なんっすか?」

「まさか、創世級が暴れて!?」

「えっ」

「それは、まずいですね」

「いや、ミルクさんを抱えている時点で、それはないだろう」

「そうだ。だが、力を貸してくれ」


 俺がそう言うと、皆は、頷いて立ち上がった。


「じゃあ、こういう感じで輪になってくれ」

「輪に」


 俺の指示に従って、俺とフィーを中心に、皆が輪になって俺を囲む。俺は、その中心でフィーを抱き上げた。


「ほう」

「じゃあ、やるぞ」

「何を、でしょうか?」

「ご主人様が、強くなるための魔法修行ですって」

「それは、必要なことだな。よし、いつでも来てください、殿」

「ああ、いくぞ!!」


 目を閉じて、俺自身と、皆に集中する。俺自身の魔力が広がり、皆へとリンクしていく。全員の魔力が俺と繋がり、その先に、いつもの一体化した鎧の姿が見えた。


「う、うおおおおおお!!!!」


 魔力を、イメージに合わせて構築していく。すると、皆を包み込むほどの大きさの、いつもの鎧の腕先が出現した。それは、家の外の庭の空中に浮いている。家の中に出ていたら、家が破壊されている大きさだ。


「出来たか」

「えっ、あれでいいの?」

「ああ。まさしく、ベイの魔力。あいつの外殻じゃ。じゃが、流石に大きすぎるかのう。朝に出すにしてわ」

「あっ」


 俺は、すぐさま出現させている腕を消した。


「うむ。あれで良い。あとは、あれを通して魔力吸収を行うだけじゃ。なるべく、全身を出したほうが良いぞ」

「あの大きさで、全身を……」

「サイフェルムでやると、国の兵士が走ってくる大きさね」

「迷宮でするか」

「ふふっ。その必要は無い」


 そう言うと、レーチェが魔力を解き放った。すると、どんどんと部屋が大きくなっていく。いや、俺達が縮んでいるのか?


「圧縮。迷宮に使われている魔力じゃが、わしはどこでも使えるでな。この中でなら、家の中でも今の魔力量で外殻を作っても大丈夫じゃぞ」

「おお~」

「というわけで、やってみい」

「は、はい」


 俺は、再び同じようにして鎧を作り出す。すると、いきなり自身の中の魔力が、急速に少なくなっていくのを感じた。


「えっ?」

「巨大な外殻を作るんじゃ。魔力消費も半端では無いぞ。それは、お前の体の大きさ倍の魔力消費をしておる。それを維持するために、魔力吸収をしろ。そうすれば、自ずと、お前自身が強くなる」


 不思議な気分だ。まるで、自分自身が、自分の心臓にでもなったかのようだ。俺が魔力を止めてしまうと、この外殻は消えてしまう。しかも、この外殻は維持し続ける限り、休みなく俺を働かせ続ける。これ、もしかして属性特化一体化より辛いのでわ?


「そうじゃそうじゃ。そのまま続けるが良い。さすれば、少しはマシな強さを得られよう」


 レーチェが、そう言うと圧縮空間から出ていく。圧縮空間に、俺達は残された。この巨大な鎧は、圧縮空間内だと実際の一体化並みの大きさになっているらしい。空間外のアリーが、いつも通りの大きさに見える。可愛い。いや、そんなことを考えている暇わ無い。こうしている間にも、あっという間に魔力が消えていく。俺は、酸素を求めて必死で呼吸するかのように、魔力を吸収していった。


「これ、大丈夫なの?」

「大丈夫じゃよ。じゃが、初めてにしては外殻が大きすぎる気がするのう。恐らく、初日はすぐに倒れるじゃろう。ま、よく見ておいてやることじゃな。わしは、畑を見守る」


 そう言うと、レーチェは窓から飛び降りて、庭に着地した。


「ベイ……」


 動かぬ一体化した鎧。それを、アリーは心配そうに見つめた。





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