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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・六部 ???? ミルク編
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粉砕

 まるで、吹き出している魔力が、ミルクの闘気その物のようだ。鎧を保つために排出している魔力とはいえ、何も力がないわけではない。それは、まさしく魔力のブースター。ミルクの体の動き、一つ一つを補助し、突進する力を高めている。その力の動きをもミルクは制御することで、全身の力と速度を高めていた。故に、吹き出す魔力が上がるほど、ミルクの鎧はより早く、強力な力を発現する。


「穿て、創破滅砕のガントレットォォォォ!!!!」


 ミルクの拳が、魔力の本流を纏って突き出される。それに合わせ、レーチェも拳を放った。2つの拳がぶつかり、大地が揺れる。いや……。


「お?」


 地面が裂けて、大地が割れた。星が、ミルクとレーチェを境にして、真っ二つに裂けた。


「地面に強化魔法をかけておったんじゃが。この負荷では、もたぬか」


 レーチェが、星に魔法をかける。すると、裂けた地面が魔法で引き合い。星を繋げた。


「良い力じゃ。わしの強化した、大地を裂くとわな」

「まだまだ、ですよ」


 排出している魔力量が、限界まで引き上がる。まるで鉱物のようだった鎧の表面が、全て排出されている魔力に隠れ、その鎧自体を魔力の闘気で包みこんだ。


「それが、限界の力か」

「そう。これこそが、今の私の全力の力!!創破滅砕のガントレット・フルパワーモード!!!!」

「その鎧全てが、最高の打撃を出すための、力を生み出す武器というわけじゃな」

「話が早くて、助かります」


 鎧の周囲の地面が、溶けていく。いや、消えていく。大気すら、排出された魔力の熱量に耐えきれず、魔力に流されていく。その中で、ミルクの鎧は力のベクトルを操作することで浮いていた。その姿、周囲の全てをいるだけで破壊する者。まるで創世級のようであった。


「無敵か……。あながち間違いではないかのう」

「そうです。愛は無敵。愛は力。そして……」


 ミルクが、右腕を構える。


「この愛こそが、無敵の魔法なんです!!」

「星をも砕く愛ならば、認めるじゃろうな。生命の全てが、お主の愛の強さを」

「レーチェデカブラ。創世級すらも砕き、私達は平和を手に入れる。この愛に誓って!!」

「ほぅ」

「そのために、今、ここで私が示しましょう。その力が、私達にはあるということお!!」

「この、レーチェデカブラを砕くと来たか。面白い!!!!」


 レーチェの鎧が、その密度を変える。より重く、より硬い姿へと、魔力を高めてレーチェは変化した。


「ならば見せてみよ!!その力を!!!!」

「行きます!!全力のぉぉぉぉ、創破滅砕の、ガントレットおおおおぉぉぉぉ~~!!!!」


 ミルクが、拳を放つ。その瞬間、光が消えた。


「なんじゃと!?」


 レーチェは、慌てた素振りで魔力を操作する。それは防御。ただし、自身を守るためではない。星を守るための防御に、魔力を使っていた。それほど、今のミルクの一撃は強力であり、絶大。星を生命ごと粉砕し、無に返す。その一撃は、それほどの威力を持っていた。その威力を、レーチェは自身の魔力を使って防ぐ。星への被害を、ゼロにするために。それと同時に、レーチェはミルクの拳を自身の拳で受け止めていた。しかし、レーチェの鎧にヒビが入り始める。


「!?」


 ゆっくりと時が流れていく。そのヒビが入り始めてから、レーチェの鎧全体にまで広がるのは、僅かな一瞬の出来事だった。しかし、高い実力を持つレーチェにとっては、一瞬は数分のようにも感じることが出来る。その短い間で、レーチェは自身の鎧に走っているヒビを修復しようとした。しかし、星の防御に魔力操作を向けているせいで鎧の崩壊スピードに修復が間に合わない。本来ならば、彼女の戦闘スタイルは幾重にも高密度の魔力を着込んで、内側から修復する破壊不能の無限装甲を纏うことで無敵と完全破壊を可能にしている。だが、今回は纏っている装甲量を相手に合わせていたために、その防御は薄い。レーチェの鎧は砕け、その残った威力に、レーチェは吹き飛ばされた。


「ぐあああああああ!!!!」


 飛んでいく背後に土の壁を作り、レーチェはそこに着地する。壁を蹴って空中で回転しながらレーチェは地面に着地すると、手の皮が向けて薄っすらと自身の手に血が滲んでいるのを見た。


「どうですか、私の愛わ?」


 ミルクが、一体化を解除してレーチェに近づく。そして、自身が持っていたタオルをレーチェに渡した。レーチェは、それを受け取ると手を拭く。すると、手のひらの傷も消えていた。


「まぁまぁ、じゃな。確かに、今の攻撃ならば、創世級にも傷をつけることが出来る。ただし、非常に油断している場合のみじゃが」

「でも、今ならば十分でしょう?」

「ふっ、そうかもな」


 レーチェは、タオルをミルクに返す。すると、拭いた汚れも消えていた。


「遊びはお前の勝ちじゃ、ミルク。その力、しかと見せてもらった。故に、今までの無礼を水に流そう」

「やれやれ、お高くとまった性格は、そのままなんですね」

「わしは、まだ最強じゃからな」

「……」


 無敵とは言った。しかし、ミルクの一体化にも弱点がある。それは、操作する魔力量に限界があること。それを超えると、操作しきれずに破壊の力を受けてしまう。それを、レーチェは見抜いていた。


「ふむ。しかし、もうお前とは戦わん。相性は悪そうじゃしな」

「……そうですか」

「バクチのような戦闘は嫌いなんでのう。今日は油断しすぎたようじゃ。平和ボケしとったのう」


 レーチェは、そういうと地面に手をかざす。すると、地面から金の牛乳缶が飛び出てきた。


「ほれ、お前にやる」

「うわっと!!い、良いんですか?」

「わしは、衣食住を手に入れたしな。安いもんじゃ」


 レーチェは、パチンと指を弾く。すると、辺りの魔力が消えて、地形が元に戻り始めた。街が周囲に近づき、人の声が聞こえ始める。


「何をしておる。早く、ここから消えるぞ」

「いや、でも、参加者の名簿とかありますし……」

「あれなら、わしが破壊しておいた。そうでなくとも、わしらを、好き好んでおってくるものなどいまい」

「ですかねぇ……」

「サイフェルムとここからでは、距離があるからの。分かるはずもない。では、行くぞ」


 レーチェは、地面にうずくまっていた俺に、肩を貸して立ち上がらせる。俺は、全員の召喚を解除すると、レーチェを連れて、転移魔法でサイフェルムへと飛んだ。



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