牛の暴走
「アッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」
転移して戻ってきたフィーとレムが見たもの、それは、小さな少女に襲われているベイの姿であった。
「ふへへ~~!!いいじゃないですかご主人様~~!!ご主人様!!!!」
*****
風属性中級迷宮につながっていた転移ゲートが崩れる。どうやらフィーとレムが、敵の魔法制御者を倒したようだ。フィーの魔石が光っていたから進化出来たから二人でも行けたのかもしれないな。さて、問題の根本は解決したわけだし、とりあえず残った周りの魔物を片付けなければならないだろう。カヤとミルクに手伝ってもらうか。そう思って召喚を行なったのだが、カヤは俺の近くに現れたものの何故かミルクの姿が見えなかった。
「あれ、ミルクは?」
辺りを見回すが姿はない。おかしい、確実に呼んだはずだ。
「ふふふ、ここです。ご主人様」
俺が顔を左右に振っているとその声は、真下の地面から聞こえてきた。
「……なんでそんなとこにいるんだよ?」
「ふふふ、それは、宇宙より広いわけがあるのですよ。まぁ、まずは周りの雑魚どもをとっちめてからゆっくり感動のご対面をしたいので、今はこんな感じで我慢して下さい」
「あ、ああ……」
嫌な予感がする。だが、今逃げてもどうにもならない気がする。顔に、変な汗が出てきた。
「さっさとやってしまいますかね。というわけで、カモン!!我が牛達!!!!」
周りの地面が盛り上がり、数十頭の土色の牛が出てくる。その姿は、まるで昔のミルクがそこに増えたかのようだった。
「……牛が、増えた!?」
「ふふふ、ミズキ。今の私は、ただの牛では無いですからね。そして、これは私の魔法!!実際に増えたわけではありません!!!!」
「「「「「モ~~!!!!」」」」」
「さぁ~~~~!!やってしまいなさい、我が牛軍団!!敵を、踏み潰すのです!!」
「「「「「モ~~!!!!」」」」」
言うやいなや牛軍団は、敵の大群に向かって突撃し始めた。 なんだあの牛!? 驚く程速い!!!? 信じられないほどの速度で、土色の牛によって目の前の大群が溶けていく。そのスピードと殲滅力に、俺は我が目を疑ったが二度見しても結果は変わらなかった。
「うわぁ……」
ミズキが、完全に引いている。それなりの実力の魔物達が、為す術もなく牛達に踏み潰されていくのだ。そんな感想を抱いてしまうのも、仕方ないことだろう。ミルクには悪いが……。
「いやぁ~、すごいわね。あたしも頑張らないと!!主様、あたしも行ってきます!!」
手を振り、カヤも魔物達に向かって突っ込んでいった。辺りに、火の魔力で出来た火柱が上がり何体もの魔物が消えていく。
「では、私も負けていられませんね」
ミズキが、分身を10体出現させた。分身体が魔物達に大量の水の手裏剣を投げつけ、触手でのなぎ払い攻撃をおこなっていく。ミルク達三人で、完全にここにいる魔物を圧倒し始めていた。なにか、敵が可哀想になってきた。さっきまで、お互いに魔法を射ち合っていた敵だけどもこれは同情するに値する。その後、3人の殲滅によって驚くほどの速さで周りは静かになっていった。
「あ、さて、流石にもう、大丈夫ですかね……」
ズボッと、地面から腕が伸び出てきた。そのままその腕は、俺の足をグッと掴む。
「ヒィッ!?」
「よいしょっと……」
地面から土を吹き飛ばしながらミルクが出てきた。その背はかなり縮み、見た目だけなら幼女に見える。完全な美少女顔で、髪は根本は白、毛先は黒という変わった色の髪になっていた。着ている服はまるで巫女装束のようだが、袴の色は赤ではなく黒色をしている。黒と白のホルスタイン模様の羽織を肩にかけ、背中にはこっちの世界の文字では無く、何故か故郷の漢字で牛の一文字が書かれていた。足には白い足袋と黒い草履。頭には牛の耳と小さい角が生えている。髪は長めで、後ろで結んでいるようだ。色々と凄い容姿だが、一番インパクトが有るのはそのどれでもない。そう、一番目を引くのは、その胸だ!!!! でかい!! あまりにもでかい!!!! その小さな体格からは、かなりかけ離れた大きさをしているがその大きな胸は、決して彼女の魅力を削ぐことはない!! その爆乳は、黒いさらしで押さえつけられているが、それでも尚その存在感を失うことはなかった。
「ふふふ、どうですかご主人様?生まれ変わった、新たな私は!!」
ぶるん!! と、ミルクが胸を張ると、その胸が揺れた。さらしで抑えられているはずなのに!! 抑えられているはずなのに!!!!
「す、すごい可愛くなったな」
元のミルクが、ただの牛とマッチョな牛だけにその差は凄まじい。まさに、今までの予告通りの美少女だ。
「でしょう、でしょう。いやぁ~、長い道のりでした。色々と我慢したこともありました。でも、これで、我慢しなくていいんですよね?と、いうことで……」
身の危険を感じた俺は、後ろに下がろうとした。だがすでに、時は遅くミルクに腕を掴まれている。う、動けない。振りほどけない。なんだこの、外見からは想像出来ないほどの力は。俺は、いったいどれほどの力で掴まれているんだ。嘘だろ。マジで一歩も下がれない。
「そう怖がらなくてもいいですよ、ご主人様。優しくしますから……ね」
「お、女の子がそういうことを言うのは、ど、どうかと思うんだ~~」
「恋する乙女は、直線的なんですよ。回り道はいりません」
ミルクが、羽織を脱いで地面に敷く。そして、その上に怪力で俺は押し倒された。その力に、俺は為す術もない。いや、マジで。衝撃力ハンパないよこれ。多分これでも手加減って分かる。痛くはないからね。恐ろし過ぎるだろ……。
「さて、……いただきま~~~~す!!!!」
「アッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」
ミルクが、俺の上半身の服をまくり上げる。俺は、必死に抵抗するが美味しく頂かれるのは時間の問題だった。
「ふへへ~~!!いいじゃないですかご主人様~~!!ご主人様!!!!」
「まて、待て!!いかにお前が我慢していたとしても、これはいきなり過ぎるぞ!!!!」
「大丈夫です!!大丈夫ですから!!!!レムがやったとこまでぐらいしかしませんから!!!!しませんから!!!!」
「レムは、俺の服を脱がそうとしてねえよ!!!!」
「ストオオオオオオオオオオオオオオオオオオオップ!!!!」
その声に俺とミルクが横を見ると、白いフィーとレムがいた。ミルクが、あっ、という短い声をだす。
「ミルク、駄目でしょう!!マスターに迷惑かけちゃあ!!」
「す、すいません、フィー姉さん!!!!つい、人化した喜びを抑えられませんで……。も、申し訳ございません!!!!」
ミルクが平謝りする。だが、俺の上からは降りない。逃して欲しい……。
「う~ん、確かにミルクは色々我慢してたから、そんな気持ちになっても仕方ないかもしれないけど。……今後は、気をつけてね」
「は、はい、フィー姉さん!!ありがとうございます!!気をつけます!!」
流石フィー、俺の天使は寛大だ。でも今は、ミルクから俺を逃して欲しかった。自力では脱出不可能だ。ちょっと動こうとしたが完全に無理だった。押さえつけられている。
「ほら、マスターにも謝って」
「は、はい!!も、申し訳ございません、ご主人様。抑えが効きませんで……」
「……次は、気をつけてくれよ」
ミルクがしゅんとした顔で謝るからつい許してしまったが、まだ俺の上から降りない。余程、あれやこれやしたかったのだろう。フィーが来てくれなければ、やばかった。
「せ、せめて、せめてキスをさせてください!!それで今は、我慢しますから!!!!」
「マスター、私からもお願いします。させてあげてください!!」
「ふぃ、フィー姉さん!!」
ミルクが、フィーの言葉に感動してフィーを見る。確かに、させないと逃がしてくれそうにない。特に嫌というわけでもないのだが、何故かまだ嫌な予感が引かないんだよな。……だがここは、腹をくくって受けるしかあるまい。
「わ、分かった」
「ありがとうございます!!!!」
ミルクは、俺とフィーにお礼のお辞儀をする。暴走は止まった様子に見えた。だが俺の胸騒ぎは、引くどころか大きくなり始めていた。
「おっとその前に、私の新しい能力をご主人様に説明しないといけませんね」
「新しい能力?」
俺の中の胸騒ぎが、これだ!! という感じで、俺に嫌な汗をもたらし始めた。
「そうです。ご主人様の、例えば腕をこう触ると……」
「ヒイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!な、何をしたんだ!!」
ミルクの指が触れた俺の腕が、まるで電気が走ったかのように跳ねる。なんだこれ、本当に指で撫でられただけなのか!?
「ふふふ、これが私の新たな力、破浸透です!!!!私の力で、ありとあらゆるものを効率的にその防御を無視し、破壊・刺激可能!!これがどういうことか、お分かりですよね?」
つまりミルクは、こう言っているのだ。自分は、俺の性感を直接刺激できるよ、と。俺は、ミルクの瞳が、ギラーンと光ったような錯覚を感じた。