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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・六部 ???? ミルク編
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地の力

 視界一面の空、それを覆い尽くしている大質量の岩が、空を突き破って落ちてくる。それは次第に収束していき、先端を槍のように尖らせると、ミルク目指して、その重量を一点に定めて降ってきた。その落下速度は、とてもゆっくりに感じるが、実際は違うのだろう。ただ、あまりにも降ってきている物体の大きさがでかすぎるために、そう錯覚しているに違いない。空を見ながら、俺達はただただ目の前のあり得ない光景を、口を半開きにして見ていることしか出来なかった。だが、ミルクは違う。自身が作り出した創滅のガントレット。そのガントレットを構えると、一点の迷いもなく空中へと飛んだ。


「勢いが付き切る前に、少しでも砕く!!」

「初めてじゃな。自分から向かっていく奴わ」


 ミルクは、創滅のガントレットで地面を殴り、その力を利用して飛ぶ。そして、その力はミルクを押し上げ、まるでロケットのようにミルクをギャラクシーハンドへと着弾させた。


「砕けろおおおおおおお!!!!」


 創滅のガントレットが、ギャラクシーハンドへと届く。すると、空に衝撃が走り、まるで空が割れたかのような空気の歪みを引き起こした。創滅のガントレットが、ギャラクシーハンドの先端を砕く。だが……。


「ぐぬぬぬぬっ!!!!」

「やりおる。だが、先端を砕いただけでわな」


 創滅のガントレットの威力が、ギャラクシーハンドを砕ききる前に衰えた。しかも、砕いたのは先端部分のみ。ギャラクシーハンドは、その姿の9割以上をまだ留めている。ミルクは、そのままギャラクシーハンドと共に落下し、地面へと叩きつけられた。


「ミルクゥゥゥゥゥウウウウウウ!!!!」

「下がっておれ」


 俺達は、ミルクに駆け寄ろうとした。だが、レーチェが岩の壁を作って俺達の行く手を阻む。岩の壁に、拘束され。いや、守られたという方が良いのだろうか。俺達は、ギャラクシーハンドの落下の被害を少しも受けることはなかった。ただ、その衝撃の中で、ミルクに強化魔法を送ることしか、俺には出来なかった。


 やがて、壁が消えていく。それと同時に、周囲の変わり果てた風景が見えてきた。どうやら、俺達は壁とともにせり上がっていたらしい。辺りは地形を変えて、大きな山のようになっていた。その山の頂上に俺達は立っている。勿論、レーチェも何食わぬ顔でその場に立っていた。あくびすら浮かべながら。


「さて、死んだかのう?」

「……いや」


 地面が、俺の言葉に反応するように盛り上がる。そして、降り積もった幾億もの瓦礫片を吹き飛ばし、そいつは、山の頂上へと着地した。


「はっ、はぁ~はぁ~。し、死ぬかと思いました」

「ミルク!!!!」

「……」


 ミルクは、着地すると同時に大きく空気を吸い込む。どうやら、酸素不足に陥っていたようだ。見たところ、服が少し傷んでいるが、ミルク自体に損傷はない。どうやら、ミルクはあの攻撃の中を、ほぼ無傷で生還したようだ。


「……うっ」


 だが、それは見た目だけの話だった。ミルクは、その場に膝をついてしゃがむ。そして、腕に残っていた創滅のガントレットが消滅した。どうやら、創滅のガントレットは魔力を大量に使う武器のようだ。ギャラクシーハンドを防ぐため、ミルクは創滅のガントレットを維持し続けた。その結果、ミルクの身体には大きな魔力不足が起きようとしていた。胸を押さえ、ミルクは歯を食いしばる。だが、その目は迷いなくレーチェを見ていた。俺は、すぐにミルクに駆け寄って魔力を渡す。すると、ミルクの表情から苦しみが消えて、ミルクはその場に何事もなかったかのように立ち上がった。


「超えましたよ。貴方のギャラクシーハンドお」

「そうじゃのう。凄い凄い。まずは褒めておこう。満身創痍の魔力切れを起こしたとは言え、肉体的損傷はほぼ皆無であった。中々の好成績じゃのう」

「ま、私はスペシャルですからね」

「さて、わしの遊びは次で最後になる。これを乗り越えれば、お主の勝ちでこの遊びは終わりじゃ」

「そう、ですか……」

「一応言っておくが、わしにとって全て手加減の領域でしか作っておらぬ。お遊びじゃしな。お主の作った創滅のガントレット。あれは、高圧縮した地の魔力の塊であろう。あの程度、わしでも出来る。それも、先程よりも大規模でな。じゃが、あれは並の魔物が練り上げられる武器ではない。その点は素晴らしいぞ」

「ふっ。褒めるか、自分のアピールをするのか、どっちかにしてほしいですね」

「さて、最後の遊びじゃ。これも手加減はする。だが、少し大人げない力でのう。じゃから、使う前に相手に力の説明をすることにしておる」


 そう言いながら、レーチェが一歩前に出た。その一歩は、幼き女性が歩くかのように軽い。だが、今の俺達には、どんな巨人の一歩よりも、その一歩がとても重々しく感じた。


「土。いや、地の魔力の本質とは何であるか、お主に分かるか?」

「本質?」

「そう。地の魔力の本質。それは創造じゃ。ありとあらゆる物と溶け合い、形をなし、物を育む。それこそが創造。それこそが地の力。その本質」

「壮大な意見ですね」

「そうか?地とは、わしが生まれる以前からあった力じゃ。それをこのように語ったところで、わしは壮大だとは思わん。むしろ、当たり前だと思っておる。地は、全てを育む。故に、だからこそすべてを知っている」

「知っている……」

「さよう。全ての壊し方をな」


 その言葉と同時に、辺りの瓦礫が消え始めた。それを俺達は、捉えることが出来なかった。ただ、忽然と瓦礫が消えていく。そして、あっという間に降り積もった瓦礫の山が消え、元の地面に俺達は着地した。


「壊し方、ですと」

「そう。わしはな、伊達や酔狂で自分が最強じゃと名乗っておるわけではない。実際に、それほどの力をもっておる。地の力。その最高の真髄。破壊をな」

「破壊。抽象的な表現ですね」

「そうかも知れん。じゃがな、実際にそうなのじゃ。わしに今まで、破壊できなかったものはない。この頭で狙いを定めて撃ち抜くだけで、物、生命は全て消滅する。その形すら残さずにな」

「……」

「有り得ない……。そんなの、勝ちようがないじゃないか……」


 全てを破壊する力。その力を持つ地の創世級。それこそが、レーチェデカブラ。そんな化物を前にして、以下にスペシャルなミルクだろうとも、その勝率は0%。その事実に、ミルクは一瞬目を閉じて見開くと、何かを決意した瞳でレーチェを見つめた。



 

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